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一杯の記録|第113話 よこやま SILVER 7 純米吟 火入(長崎・壱岐)

一杯の酒から、その土地をたどる。

白き淵を抜け、風の道へ。
深淵に還った魂を、島の光が呼び戻す。

長崎、壱岐。
神々の宿る島。

潮が引けば、砂浜の参道が静かに現れる。
見上げれば、こぼれ落ちそうな星の数。

重家酒造。
繋いできた蔵の灯に、
日本酒という名の火が、再び分かたれる。

さて、本題。

抜栓。
弾けるように、香りが解き放たれる。

熟した瓜の、芳しき甘み。
あるいは、朝露に濡れた野苺の赤。

口に、含む。

鮮烈。
火入れとは思えぬ、生の躍動。

満ちる。
芳醇な甘み、追う酸の洗練。
島の星空を掬い取った、透明な輝き。

抜ける。
重層的な果実の味を湛えながら、
最後は潮風のように、さらりと、潔く消える。

凪いでいる。
熱情のあとに訪れる、静かな高揚。

伝統の重みを、軽やかな希望へと変える。
そのしなやかな強さに、身を浸す。

——    凪ぐ。

この一杯は、
新しい季節の、扉を叩くための音。
そんな一杯として、ここに記録しておく。

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