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一杯の記録|第73話 大信州 別囲い純米吟醸 番外品 生(長野・松本)

一杯の酒から、その土地をたどる。

長野・松本。
北アルプスの伏流水が、
静かに流れ込む。

大信州酒造は、
その水を軸に、
酒を設計してきた。

香りに頼らない。
水の質を、
酒のかたちへ写し取る。

「別囲い」は、選ばれし一樽。
ブレンドをせず、
そのタンクだけの個性を引き出す。

派手さではない。
緻密な積み重ねが、
やわらかな広がりを生む。

さて、本題。

立ち香は、やわらかい。
もぎたての林檎のような、
瑞々しい香り。

口に含むと、
フレッシュな甘みが、
ふわりと解(ほど)ける。

甘い。
けれど、甘すぎない。

旨みを抱いた甘みが、
細胞のひとつひとつへ、
静かに染み渡る。

華やかさはある。
けれど、過度ではない。

ほどよい密度。
味わいに、
深い奥行きがある。

軽やかだ。
それでいて、
決して薄くはない。

余韻は、どこまでもやさしく続く。
気づけば、盃は空になっている。

——   ひらいている。

輪郭の広がり

この一杯は、
そんな味わいとして、ここに記録しておく。

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