一杯の記録|第79話 新政 Colors 天鵞絨 -Viridian-(秋田・秋田)
一杯の酒から、その土地をたどる。
秋田・新政酒造。
六号酵母の生誕地であり、
伝統を、再定義し続ける聖域。
ここで醸される天鵞絨は、
古い下絵を、
鮮烈な知性で塗り替えていく。
木桶、生酛、そして自社酵母。
かつての当たり前を、
現代の感性という筆で、
もう一度、激しく描き直す。

さて、本題。
立ち香は、複雑。
深い森の湿り気と、
磨き上げられた硝子のような、硬質な気配。
口に含むと、
伝統の重みではなく、
未来の速度を感じる。
厚みのある旨みの奥に、
酸の線が、
あまりに鋭く、走る。
それは、
過去を保存するための線ではなく、
現在を刻むための、新しい輪郭。
溶けてなくなったはずの場所で、
再び、確かな骨格が立ち上がる。
伝統とは、守るものではなく、
こうして書き換えていくものなのか。
—— 景色が、書き換わる。
これは、書き換えられる輪郭。
そんな一杯として記録しておく。
