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一杯の記録|第60話 あべ 純米吟醸 火入れ シルバー(新潟・柏崎)

一杯の酒から、その土地をたどる。

新潟・柏崎。
日本海に面した町だ。

冬は深く、
風は冷たい。

雪解け水は澄み、
低い温度を保ったまま
ゆっくりと流れている。


あべを醸す阿部酒造は、
迎合しない。

揺るがない。

ただ、
酒を整える。

急がない。
圧しすぎない。

時間をかけ、
酒に余計な負荷を与えない。

削りすぎない。
盛りすぎない。

作為を削ぎ、
輪郭を曇らせない。

透明は、
派手さの裏側にあるものではない。

静かな精度の先にある。

酒はここでは、
自ら澄んでいく。


さて、本題。

立ち香は、澄んでいる。
華やかすぎない。

和梨を思わせる、
静かな果実の気配。

口に含むと、
わずかなガス。

舌の上で、
やさしくほどける。

甘みは薄い。
けれど、痩せない。

生命力のある酸が、
酒の輪郭を整える。

落ち着いた透明。

余韻は、
ほのかに続く。

引きずらない。
ただ、静かに残る。

落ち着いた透明。

この一杯は、
そんな味わいとして、ここに記録しておく。

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