食べてみたい江戸の味/吉原名物・竹村の上餡
江戸の本を読んでいると、これはぜひ食べてみたいな~と思うグルメに出会うことがあります。
そのうちの一つが、江戸の遊郭・吉原で人気だったスイーツ、竹村伊勢というお店の「竹村の上餡(じょうあん)」という銘菓。
いわゆるあんころもちですが、そこは江戸一の遊郭の名物ですから、当時貴重だったお砂糖や高価な製菓材料、そして鍛え抜かれた職人の技により、別格のおいしさであったに違いありません。
山東京伝の黄表紙を読んでいるとお座敷で頼んでいるシーンなどが出て来るので、吉原の定番スイーツであると同時に、京伝も好んでいたのだろうと思われます。

山東京伝作画の「人間一生胸算用」は、作家である京伝自身が不思議な力で小さくなって隣の若旦那の体内へ入り、そこで生真面目で倹約家の「心」が、「気」や「手」「足」「口」「目」「鼻」たちのクーデターによって追い出されるところを目撃してしまうという物語。
画像は、クーデターを起こした「気」や「目鼻口」たちが、さっそく前からやってみたかった遊女屋での大宴会を楽しんでいるところ。
画像の下、真ん中で両手を広げて話している男は幇間(ほうかん/場を盛り上げる役目)と見えますが、「おまえさまは上餡ばっかりあがりますね」と、ぱくぱく食べている「口」(上部左)に向かってあきれたように囃しています。
「口」の手前にあるのが、入れ物(おそらく専用の塗りものなのでしょうか?)に入っているあんころもち、「竹村の上餡」です。

ほか、山東京伝作、鳥居清長画の「九界十年色地獄」にも、遊女たちが食べたいものを囁き合うシーンで出てきます。

一番右の遊女は、「私はやっぱり葱鮪!」、真ん中の遊女は「下品だけど(食べ方のこと?)とうもろこしがいい」、そして左の遊女(新造)が「竹村の上餡もまんざらじゃないでしょ」と言ってます。
なんだかちょっとかわいいおしゃべりシーン。
やはり竹村の上餡はおいしくて人気だったんですね~。
(あ、葱鮪も食べてみたくなってきた……)
江戸後期、西村藐庵の随筆「花街漫録」によれば、竹村伊勢は吉原の江戸町二丁目にあったとのこと。ほかに「最中の月」や「巻煎餅」といったお菓子も有名でした。

吉原随一の名菓子店だったという竹村伊勢の「竹村の上餡」。
形はただのあんころもちでも。
現在でもあんころもちなら様々なお店で食べられるとしても。
やはり京伝や遊女たちが楽しんだその「竹村の上餡」の味はどんなものだったか、一度味わってみたいなあと思ってしまうのでした。
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