【AIマンガ(一部手描き)】深夜の略奪者 〜妻のプリンを盗んだ男の末路〜
深夜の台所は戦場である。
これはもう断言していい。異論は認めない。
午前2時。家中が寝静まった頃に、男は動き出す。足音を消し、息を殺し、まるで特殊部隊のように台所へ向かうのであった。目的はただひとつ。冷蔵庫の2段目に鎮座している「あれ」である。プリンかもしれない。シュークリームかもしれない。とにかく甘くて、冷たくて、深夜に食べると犯罪的にうまいやつだ。
冷蔵庫の扉を開ける。
この音が問題なのであった。
どんなに静かに開けても、冷蔵庫というやつは必ず「ボフッ」という音を出す。あれはいったいなんなのか。冷蔵庫メーカーの人間にいつかとことん問い詰めたいと思っているのだが、たぶん永遠に問い詰める機会は来ないのであった。
男の名はケンジ。
そしてその冷蔵庫に罠を仕掛けている女の名はユキコ。
この二人の果てしなき深夜の攻防戦を描いたのが本作『深夜の略奪者』というわけなのである。
勘の良い読者は気づいているかもしれないが、ユキコのモデルはうちの妻だ。あの恐ろしいトラップの数々は、おれが長年にわたって実際に食らってきたものがベースになっている。冷蔵庫の2段目にセロハンテープで封印された「食べたら殺す」の張り紙。あれを深夜2時に発見したときの恐怖は、どんなホラー映画よりもリアルなのであった。
それでもオレにとって、プリンの魅力はそれをまさるのであった。
日々の生活の中で起きるちょっとした事件。夫婦のやりとり。牛丼のタレがシャツに飛んだとか、リモコンの電池を勝手に抜いたとか、そういうどうでもいい出来事のひとつひとつが、マンガにすると極上のスパイスになるということを、おれは40年以上かけて学んだのであった。まったく高い授業料である。
さて、今回のマンガで特にこだわったことがある。
顔だ。
人間の顔というものは左右対称ではない。笑っているときも、怒っているときも、恐怖に引きつっているときも、必ずどこかが歪んでいる。ところが生成AIというやつは放っておくと「マスターピース顔」とでも呼ぶべき整いすぎた顔を量産してくるのであった。美しいが、つまらない。人間味がない。吉野家の牛丼を深夜に食べて血糖値が爆発した男の顔ではない。
だからおれはそこにこだわった。
恐怖に引きつるケンジの顔は、左の口角だけが上がって、右の眉だけが吊り上がって、額に汗が浮いている。勝利を確信するユキコの笑みは、目が三日月になっているのに口元だけが冷たい。感情が爆発してコマの枠さえぶち破る、生々しい表情のうねり。手塚治虫の線の美しさ、横山光輝の構図の力強さ、荒木飛呂彦の肉体の迫力、鳥山明のデフォルメの天才。その全部を生成AIという現代の魔法で融合させたのが「宇佐美式AIマンガメソッド」というやつなのである。
偉大な巨匠たちの魂を借りて、フルカラーのエンターテインメントに仕上げた。
これはおれにしかできない仕事だと思っている。たぶん。40年以上マンガを描いてきた人間が、AIを道具として使い倒す。筆がペンタブに変わり、ペンタブがプロンプトに変わった。道具は変わっても、物語を作るのは人間の仕事なのであった。
さあ、刮目して読んでいただきたい。
そして最後に警告しておく。
もし今夜、あなたの家の冷蔵庫の2段目に見慣れぬ張り紙があったなら。
決して触れてはならない。
触れた者がどうなるかは、この物語を読めばわかる。おれは知っている。知っているが、それでも手を伸ばしてしまうのだ。なぜなら深夜のプリンというものは、どうしようもなく、うまいからである。
まったくひどい話なのであった。
いやはや、いやはや。







