最近読んだ本 読書感想メモ(夏帆、楽園のカンヴァス、永遠の0)

永遠の0 百田尚樹

零戦のパイロットのだった祖父の生涯の謎を、孫たちの視点で追う。

「あいつは腰抜けだった」「彼ほど立派な日本兵をみたことはない」「アイツだけは許せない」「命の恩人です」

祖父を知る人々からの評価はあまりにそれぞれ食い違っていて……?

"死にたくないと語っていた祖父がなぜ特攻に志願したのか"

史実を元にした、戦争の現実と男の生き様を描いた令和の若者に読んでほしい歴史小説。

ありえないくらい面白かった。

いや、"あの"百田尚樹だぞ……?

ド右翼保守のオッサンがこんな面白い小説書いて良いわけないだろ。神は二物を与えなかったようだ。

"過激保守炎上爺さん"の姿しか知らずに氏の作品を初めて読んだので、あまりの落差にたまげ散らした。

登場人物はフィクションであるが、大筋は史実通りで、歴史小説として非常に読み応えがあった。

大学生時代にボケっとやっていた『艦これ』の戦艦や空母の知識がとても読書の役に立った。
艦これをやっていた当時、史実に興味はなく完全に萌えゲーとして消費していたが、ここで船の歴史を面白いと思えたのは完全に百田尚樹の筆力によるものだった。

戦争を描いていながら説教臭くはなく、しかしストーリー仕立てでちゃんと考えさせられる内容で、歴史小説として完璧に優れた読み物だった。

政治家としてはアホポンコツ炎上爺だけど作家としては間違いなく天才なので今すぐ政治活動をやめて小説を書くべき。


楽園のカンヴァス 原田マハ

存在しないはずのルソーの絵、その真贋を暴くべく2人の男女が伝説のコレクター宅に招かれ、1週間で鑑定バトルを行う……"より優れた答えを出した方に作品の全権利が譲渡される"負けられない鑑定バトル!

ただし、結果を答える前に出された条件は、ある一冊の本を読むことだった。

めっちゃくちゃ面白かった。

著者本人がキュレーターをしていたこともあり、絵画の知識が他の作家には出せない繊細な表現で描かれている。

ピカソを扱った『暗幕のゲルニカ』も面白かったが、
今作は現代でも評価が分かれる画家、ルソーについての物語で、
"美術作品を見る純粋な楽しさ"について、ルソーの作品を通して素人でも体験することができた。

作中に登場する作品を調べたり、Youtubeでキュレーターの解説を聞きながら読み進めたが、ルソーの絵は本当に見ているだけで面白く、目が楽しくなるものばかりで、没入型の体験型読書が楽しめた。

夏帆-Tale of kaho- 村上春樹

26歳、絵本作家の夏帆は、知人の紹介である日、男とブラインド・デートをする。そこで出会った男と話してから、少しずつ日常に非現実的な出来事が起こるようになる。

果たして夏帆は"普通のことが普通に起こる世界"に帰ることはできるのか!?

いつもの。

あっちの世界とこっちの世界の奴。
夢か現実か私がいるのは元いた世界なのか……?の奴。

使い古された上に脱色された村上春樹だった。
街とその不確かな壁も脱色された世界の終わりとハードボイルドワンダーランドだったけど、さらに漂白されてキモ・オタクから"キモ"と"オタク"を抜いたような作品だ。

ジョン・レノンとリンゴ・スターとポール・マッカートニーとジョージ・ハリスンの居ないビートルズだ。

「ジョン・レノンのいないビートルズ?」

そう、"村上春樹"という枠組みだけが存在している。

「でも、確かに村上春樹はまだこの世界に存在しているのね?」

存在していると思う。

「"存在していると思う?"」

彼、あるいは僕が"この世界に存在している"といったい誰が証明できるだろう?


いやあ、文章は相変わらず上手すぎるし、文体のリズムも素晴らしい。

"普通はそういう書き方はしない"文をあたかも詩のように読ませる能力は相変わらず魔法のよう。

ただ、内容については
「さしもの村上春樹も歳を取ったか……?」という感想だけが、"真"。

変態オナニーを求めて、変態オナニー屋さんに
「ハイブロウな変態オナニーください」って言ったら

「あいにく変態オナニーはもう切らしていてね」
「ハイブロウだけならお出しできるよ」

とお出しされた気分。

短編の心地良さと長編のスペクタクルのどちらもなく、
ストーリーラインは2章の時点でもうほとんど分かりきっていた。

「どうせ夢と現実の間で象徴的な決着つける奴だろ……」

そう思いながらも読んでいる最中は心地良いのは彼の書く文書に含まれる読めるアルコール成分によるもの。

正直に言えば『夏帆』は喉越しがよく、読みやすい村上春樹だった。

しかし、気持ち悪くない村上春樹なんてネバネバしてない納豆だ。
苦手な人も多いけれど、納豆が好きな人は例外なく臭くてネバネバした納豆が食べたいのだ。

納豆以外にあの食感と味の食べ物は存在しないのだから。

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