小樽へ行くだけのはずだった。函館本線を途中下車する、行き当たりばったりの旅
関東が台風通過で大雨のこの日は札幌から小樽方面へ向かうことにしました。
とはいえ、細かな旅程はまったく決めていません。決まっていたのは「たぶん小樽方面へ行く」ということくらいです。
そんな、計画性があるのかないのかよく分からない状態のままホテルを出発し、とりあえず地下鉄に乗りました。

札幌駅から快速エアポートに乗り、小樽へ向かいます。
この日のいちばんの目的は、小樽運河の夜景を撮ること。ところが、まだ朝です。夜景を撮るには、いくらなんでも出発が早すぎます。
とはいえ、前日は札幌市内をひと通り観光してしまい、この日は特に予定もありません。そこで、「とりあえず小樽方面へ行けば、何かあるだろう」という、旅先でしか発揮されない楽観的な判断により、ひとまず小樽へ向かうことにしました。

札幌からは快速エアポート号に乗り、順調に小樽へ向かいます。
札幌駅では、車内にかなり多くの人が乗り込んできました。ところが、列車が進むにつれて、乗客は途中の駅で次々と降りていきます。
小樽まで行く人は意外と少ないようで、にぎやかだった車内も、気づけば少しずつ落ち着いてきました。どうやら皆さん、小樽を目指していたわけではなかったようです。

途中で少し寄り道をしてみたくなり、「銭函」という駅で降りてみることにしました。
特に何か目的があったわけではありません。駅名がなんとなく気になった。ただ、それだけです。気になりますよね…
ホームに降り立ってみると、実にローカルな雰囲気の駅でした。「本当にここで降りてよかったのだろうか」と、少しだけ不安になるくらいです。

特に目的もなく銭函駅で降りましたが、ひとつだけ分かっていることがあります。
この駅は石狩湾のすぐ近くにあり、駅から歩いて海まで行けるらしいのです。もちろん、Googleマップで確認済みです。
行き当たりばったりの旅とはいえ、海があることくらいは調べています!(ドヤ)

「銭函」という地名には、かつて石狩湾のニシン漁で栄えた時代、漁師の家に銭の入った箱が積まれていたことに由来する、という説があります。
駅のホームには、その名のとおり銭函のオブジェが置かれていました。
駅名を見ただけでは少し縁起がよさそうですが、ホームに降りると、本当に銭函があります。なかなか律儀な駅です。

銭函駅の前には、きちんとロータリーが整備されていました。周囲は住宅街になっているのでしょう。
ただ、駅の近くを見渡しても、お店らしいものはほとんど見当たりません。ロータリーは立派なのに、立ち寄る場所はない。なかなか潔い駅前です。

銭函駅を出て、住宅街の中を歩いてみました。
本当は海へ行きたかったのですが、どうやら途中に私有地があるらしく、海へ抜けられる道がなかなか見つかりません。
Googleマップではすぐ近くに見えるのに、現実の海は意外と遠いものです。

ようやく海に出ることができました。目の前に広がるのは石狩湾です。
ただ、この日はあいにくの曇り空。天気がよければ、ここからの景色はきっと素晴らしいのでしょう。
苦労してたどり着いただけに、少し惜しい気もします。

海から銭函駅へ戻る途中、函館本線の踏切を渡り、今度は山側へ歩いてみました。
すると、どこからともなくお祭りらしいにぎわいが聞こえてきます。人の流れについて歩いていくと、その先にあった神社でお祭りが開かれていました。
海を見に来たはずが、気づけば神社のお祭りに参加しています。予定のない旅は、なかなか忙しいものです。

豊足神社の境内には、なぜか機雷が置かれていました。
説明によると、日露戦争の際にロシア軍が投下したものなのだそうです。大きく壊れているのは、長い年月で腐食したからではなく、実際に爆発したためとのこと。
神社のお祭りを見に来たはずが、突然、日露戦争の歴史に出会いました。銭函の寄り道は、なかなか情報量が多いです。

銭函で思いがけず海とお祭り、さらには日露戦争の歴史にまで触れたあと、再び函館本線に乗り、小樽方面へ向かいました。
ほんの少し途中下車するつもりが、なかなか内容の濃い寄り道になりました。
朝里駅へ
銭函駅から小樽方面へ向かう区間は、列車が海岸沿いを走ることで知られています。Googleマップであらかじめ確認していたため、車窓をしっかり楽しもうと、先頭車両のいちばん前に陣取りました。
列車が走り出すと、本当に海のすぐそばを進んでいきます。線路と海との距離は、思っていた以上に近く、少し驚くほどです。
「台風が来たら大丈夫なのだろうか」と一瞬心配になりましたが、よく考えれば、この辺りには台風はめったに来ません。余計な心配でした。

銭函駅を出た列車は、海岸線に沿うように函館本線を走り、次の朝里駅に到着しました。
ホームのすぐ向こうには海が見えます。その景色に引かれ、思わずここで降りてしまいました。
とはいえ、朝里に何があるのかはまったく知りません。さて、何があるのでしょうか。

朝里駅は、いかにもローカル線の駅らしい、静かな佇まいでした。
駅の周辺を見渡しても、これといって何かがありそうには見えません。そして予想どおり、列車を降りたのは私ひとりだけでした。
普通なら少し不安になるところですが、こうなると逆にワクワクしてきます。「何もないかもしれない」という状況ほど、寄り道好きの好奇心を刺激するものはありません。

朝里駅は、海がすぐ近くにある、とてもきれいな駅でした。
ホームから海を眺められる駅というのは、やはりいいものです。列車を待つ時間さえ、ちょっとした観光になります。
ただ、この日の空は少しだけ曇り気味。もう少し晴れていれば、さらに素晴らしい景色だったのでしょう。どうやら今回は、北海道の青空に少し焦らされているようです。

ホームを歩いていると、少し不思議な改札を見つけました。
改札の向こうに、もうひとつ改札があります。ところが、そちらへは通り抜けることができません。
いったい、これは何のための改札なのでしょうか。改札を通った先に、通れない改札がある。朝里駅は、なかなか簡単には答えを教えてくれません。

駅の外に出てみると、そこにあったのは、ほぼ海だけでした。
念のためGoogleマップでも周辺を確認してみましたが、やはり特に何もありません。現地で見ても、地図で見ても、何もない。なかなか信頼できる情報です。
仕方がないので、再び駅に戻り、次の列車が来るのを待つことにしました。

余市へ
その後、いったん小樽駅で列車を降りました。
ところが、まだ時間はかなり早めです。このまま小樽観光を始めるには少し早い気がしたので、再び列車に乗り、さらに先の余市を目指すことにしました。小樽に着いたのに、すぐ小樽を離れます。今回の旅は、なかなか目的地に落ち着きません。
余市といえば、ニッカウヰスキーの蒸溜所見学です。ただし、見学には事前予約が必要とのこと。もちろん、予定を決めずに旅をしている私が予約しているはずもありません。
小樽から余市へ向かう函館本線は、なんと1両編成。しかもSuicaは使えません。ここで改めて切符を購入し、いよいよ余市へ向かいます。

余市へ向かう途中の景色も写真に収めておきたかったのですが、すっかり撮り忘れてしまいました。
記憶に残っているのは、列車が山の中をずいぶん奥へ進んでいったことくらいです。写真はありませんが、かなり山深かったような気がします。
そして、余市駅に到着しました。
駅に降り立った瞬間から、「おそらく、この周辺にもあまり何もないのだろう」という予感がします。ただ、銭函や朝里を経験してきたので、もうそれほど驚きません。私もだいぶ、北海道のローカル駅に慣れてきました。

余市駅には、ニッカウヰスキーの樽がずらりと並んでいました。
駅に着いたばかりですが、すでに町全体から「ここはニッカウヰスキーの町です」という雰囲気が漂っています。
まだ蒸溜所を見てもいないのに、期待だけはしっかり高まってきました。

それにしても、余市駅前はずいぶん広々としています。
かつて余市駅では、ニシンなどの水産物やリンゴを中心に、多くの貨物を扱っていたそうです。駅前の広い空間も、当時は荷物の積み下ろしに使われていたのでしょう。
今では静かな駅前ですが、その広さだけは、かつてのにぎわいをしっかりと残しています。

駅から少し歩くと、ニッカウヰスキー余市蒸溜所が見えてきました。
ただ、この時点ですでに午後5時を過ぎています。当然ながら、中に入ることはできませんでした。事前予約の問題以前に、そもそも営業時間が終わっています。
仕方がないので、蒸溜所の周囲を少し散歩してから、余市駅へ戻ることにしました。結局、今回は外から眺めただけでしたが、ニッカウヰスキーの町に来た雰囲気だけは十分に味わえました。

さて、余市駅まで戻ってきました。
ホームに立って列車を待っていると、周囲の景色がなんともいい雰囲気です。緑が多く、空も広い。うまく言葉にはできませんが、いかにも北海道らしい景色でした。
東京では、なかなかこうした駅の風景には出会えません。列車を待つ時間そのものが、ちょっとした観光のように感じられます。
ちなみに、余市から小樽へ向かう列車は、およそ1時間に1本です。景色を楽しむには十分すぎるほど、たっぷりと待ち時間がありました。

余市から30分ほど函館本線に揺られ、再び小樽へ戻ってきました。
振り返ってみると、この日は銭函で降り、朝里で降り、いったん小樽を通り過ぎて余市まで行き、また小樽へ戻ってきただけです。結局のところ、かなり本格的な電車旅になりました。
そして日が暮れてから、ようやくこの日の目的だった小樽運河へ。無事に夜の写真を撮ることができました。
ずいぶん遠回りをしましたが、最後はきちんと目的を果たしています。

旅行日:2026年7月
