捨て活航海日誌|モノから体験へ。私が今回のコンサートで「グッズを買わずに帰った」理由
先日、長年応援している大好きなタレントさんのコンサートに行ってきました。昨年から全国を巡っていたツアーの、いよいよファイナル公演。私にとってこのツアーへの参戦は2回目でしたが、千秋楽ならではの特別な熱気に包まれ、前回以上に盛り上がった素晴らしい夜でした。
興奮冷めやらぬ帰り道、ふと自分の両手を見て、あることに気がつきました。 「あれ? 今日、私、何も手に持っていないな」と。
かつての私は、会場に足を運べば「右から左まで買い占める」勢いでグッズを買い集めるファンでした。大好きな人を応援したい、その証を形にして手元に残したい。その気持ちは今でもよく分かります。しかし、暮らしを見つめ直し、心身の余白を大切にするライフスタイルを目指す今の自分にとって、今回のコンサートは「モノを増やす応援」から「体験を全力で受け止める応援」へとシフトする、大きな転換点となりました。
幕が上がる瞬間の、あの胸の高鳴り
コンサート会場に到着し、受付でスタッフの方にチケットを差し出して、入場部分を切り取ってもらう。この瞬間が、まず最初のドキドキです。推しのタレントさんに一歩、ぐっと歩み寄ったような、嬉しくも特別な感覚が込み上げます。
無事に入場を済ませると、目の前にはグッズの物販コーナーが広がっています。 以前の私なら迷わず列に並んでいましたが、ここ最近は実生活でも使えるモノや、場所を取らない小物に限って購入するよう、自分なりの基準が変わってきました。
たくさん購入して売上に貢献することがタレントさんへの応援になるのも重々承知しています。けれど、買えば買った分だけ自宅のスペースを占領してしまうのも現実です。応援したい気持ちと、すっきりとした暮らしとの間で折り合いをつけ、慎重にモノを選ぶようになっていました。
そんな葛藤を抱えつつ客席へ足を踏み入れると、今回は前回以上に素晴らしいお席で、目の前にステージが広がっていました。着座して待っていると、会場の照明がふっと落ち、いよいよ幕が上がります。イントロの演奏と共に、待ち焦がれたタレントさんが「皆さん、こんばんわ~!」と笑顔で現れた瞬間、会場の歓声とともに気分は一気に最高潮へ。そこからは、日常のすべてを忘れてしまう夢のような時間が繰り広げられました。
チケット代が上がっても、私たちが「ライブ」を求める理由
ふと冷静になると、昔に比べてコンサートのチケット金額は上がった気がします。会場やタレントさんの知名度にもよるでしょうが、人件費を含めた物価上昇も影響しているはずです。それはグッズの価格を見ても同じことが言えます。
そんな中で、あるひとつの言葉が頭をよぎりました。ーー「モノを買ったとき、一番喜びを感じるのはレジでお金を払った直後である」と言われています。手に入れた瞬間の全能感は素晴らしくても、いざ家に持ち帰ると、その「モノ」自体への思い入れは意外なほど早く薄れてしまうことがあります。
今回のファイナル公演でも、魅力的なグッズはたくさんありました。決して欲しいものがなかったわけではありません。けれど、きらびやかな「推し活グッズ」を前にして、それを一つのモノとして自宅に迎え入れたときのことを想像したとき、やはり持つことへの小さな抵抗感が生まれてしまいました。大好きな人を応援したい気持ちは溢れているけれど、今の自分が大切にしたい暮らしの平穏を守るために、私はあえて何もグッズを買わずに会場を後にするという選択をしました。
「モノ」にはない、一生モノの「体験」という価値
グッズは何も買わなかった。けれど、私の心の中はこれまでにないほどの幸福感で満ち溢れていました。あの夢のような時間は、形を変えて、今も色鮮やかな思い出として残り続けているからです。
現代は、CDやサブスクリプションで大好きな楽曲をいつでも同じクオリティで聴くことができます。しかし、コンサートはまったく違います。同じ公演は二度となく、途中でちょっとしたハプニングが起きたり、その日限りのアドリブが見られたりする。それらはすべて、CDという「モノ」にはない、その場所にいた人だけが共有できる貴重な「体験」です。何より、ステージの上のタレントさんと、客席を埋め尽くすファンが一体になるあの興奮と感動は、高いお金を払う価値が十分にあると思えるものです。
この「モノから体験へ」という価値観のシフトは、旅行の土産話にも似ています。 旅から帰ったとき、私たちは「展望台から見た湖が綺麗でね」とか「小さな食堂の魚の鮮度が最高でね」と、現地での体験を熱っぽく語ります。好き好んで「お土産センターで買ったこのキーホルダーが可愛くてね」と話し続ける人は少ないはずです。体験で得た感動だからこそ、それだけ鮮明に残っているのです。
形ある「モノ」は、いずれ壊れたり、手放す時が来るかもしれません。しかし、「体験」によって得た感動や心の記憶は、一生、自身の胸の中に残り続けるものです。
グッズを買わずに帰ってきた私の両手は空っぽです。けれど私の心の中には、あの素晴らしい歌声と会場の一体感、そして「これからもこの人を応援していこう」という温かいエネルギーが満ち溢れています。これこそが、推しが私にくれた、一生消えない最高のお土産です。
これからも私は、すっきりとした心地よい暮らしの余白を大切にしながら、ここぞという「体験」には全力で情熱を注いで生きていきたい。形のない、けれど決して消えることのない思い出を、これからも自分の胸の中に大切に仕舞いながら。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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