捨て活航海日誌|1枚85円の年賀状を手放す。50代シンプリストが実感した「年賀状じまい」後のリアル
「来年から、年賀状をどうしようか……」
2025年の暮れ、私は真っ白な年賀ハガキを前に自問自答していました。 これまでは「新年の挨拶を欠かすのは失礼にあたるのではないか」「一度やめてしまったら、大切な縁が切れてしまうのではないか」という漠然とした不安から、毎年、義務感に背中を押されるようにプリンターを動かしてきました。
しかし、2024年10月の郵便料金改定により、ハガキ1枚の値段は63円から85円へと引き上げられました。 たかが22円の差、と思われるかもしれません。ですが、モノを手放し、暮らしに「余白」を作るシンプリストとして歩み始めていた私にとって、この「85円」という数字は、単なるコスト以上の意味を持って迫ってきました。
惰性で続けてきた「新年の儀式」に、1枚85円という対価と、年末の貴重な時間を投じる価値が本当にあるのだろうか。 2026年の元旦、私はついに、長年抱えてきた「人間関係の慣習」にも区切りをつける決断をしました。
添えたのは、再会を願う「細い糸」
私が最後と決めた2026年の年賀状に書き添えたのは、ごくシンプルな一文でした。
「本年をもちまして、新年のご挨拶を失礼させていただきます。
○○○○@メールアドレス」
「年賀状じまい」と聞くと、どこか冷たく、人間関係を断ち切るようなイメージを持たれるかもしれません。しかし、私にとってこの決断は「絶縁」ではなく、お互いにとって心地よい距離感を探る「関係の最適化」でした。
1枚85円というコスト、そして何より年末の慌ただしい時間を、形式的なやり取りに費やすのをやめる。その代わりに、本当に連絡を取りたいときにはいつでも繋がれるよう、個人のメールアドレスという「細い糸」だけを残しておいたのです。
投函する瞬間は、正直少しだけ緊張しました。 「これで縁が切れてしまう人がいるのではないか」「冷たい人間だと思われないだろうか」……。50代という年齢もあり、これまで築いてきた社会的な繋がりを手放すことへの一抹の寂しさがなかったと言えば嘘になります。私はポストの投函口に、最後の一束を静かに託しました。
届いたのは、意外なほどの「静寂」
年が明け、松の内が過ぎる頃。私の手元には、いくつかの反応が届きました。
学生時代からの親しい友人からは、すぐにメールで返信が来ました。「今までありがとう。これからはこっち(メール)でよろしく!」と。そこには、ハガキの裏面という限られたスペースには書ききれないような、近況報告も添えられていました。
また、数名の方からは、丁寧に「年賀状を終了することを了解しました」という旨を記した年賀状をいただきました。お互いに「やめ時」を探っていたのかもしれません。
しかし、それ以外の大多数からは……驚くほど、何も反応がありませんでした。
それは「無視された」のでも「怒らせた」のでもありません。おそらく、相手も同じように感じていたのでしょう。 「ああ、ダイさんもやめるんだな。じゃあ、うちも次からそうしようかな」 そんな、静かな納得感が漂っているようでした。
「反響がない」という事実。 それは寂しさではなく、むしろ「年賀状という形式が、すでに現代の生活において役目を終えつつある」という時代の空気を、肌で感じる瞬間でした。かつては唯一無二の安否確認手段だった年賀状も、今やスマホ一つで瞬時に繋がれる時代においては、一つの選択肢に過ぎなくなっていたのです。
50代、手放した先に残った「本当の重み」
2026年の年賀状じまいを経て、私の手元には「書かなければ」という義務感も、プリンターのインク汚れも、そして年末の焦燥感も残っていません。
1枚85円。 そのコストを手放した代わりに手に入れたのは、驚くほど静かで穏やかな「お正月の余白」でした。
「反響がなかった」という事実は、私に大きな自由をくれました。 形だけのやり取りに頼らなくても、本当に必要な縁であれば、メール一本、電話一本でいつでも繋がれるという確信。そして、形式を削ぎ落とした後に残ったものこそが、自分にとって「本当に大切にしたい関係」なのだという気づきです。
50代という世代は、人生の折り返し地点を過ぎ、これから「何を持って、何を置いていくか」を選択する大切な時期にあります。人生の後半戦を軽やかに、自分らしく歩んでいくためには、かつて当たり前だと思っていた「慣習」も、一度棚卸ししてみる必要があるのではないでしょうか。
モノを手放すように、形式的なお付き合いも少しずつ手放してみる。 そうして生まれた「空白」にこそ、これからの人生で本当に大切にしたい「深い対話」や「自分自身の時間」が、自然と流れ込んでくるのだと信じています。
来年の年末、私はもうポストに向かうことはありません。 その分、浮いた時間と85円の積み重ねを使って、大切な誰かとゆっくりお茶を飲む時間を、今から楽しみにしています。
皆さんは、次の年末をどんな気持ちで迎えたいですか?
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
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