食堂のみや #6 カッコウと田植えとウドの芽
青森の港町に、
小さな居酒屋がある。
火を囲み、
鶏を焼き、
酒を飲みながら、
今日を少しだけ軽くして帰る店。
「食堂のみや」
これは、
そんな小さな店に流れる、
季節と人の物語。
5月3週目。
朝の空気は、もう春から初夏へ変わり始めていた。
港町を流れる風は、まだカラッとしていて、
一年で一番過ごしやすい時期になった。
店へ向かう途中、
マスターは田んぼの前で少し足を止めた。
水が張られた田んぼに、
朝の空が静かに映っている。
そのときだった。
「カッコー カッコー」
山の方から、
今年初めてのカッコウの声が聞こえた。
マスターは小さく笑った。
「お、カッコウだ。……今年も始まるな」
この辺では、
カッコウが鳴くと田植えが始まる。
5月15日。
今年もちゃんと、
季節は遅れずにやって来た。
店に着き、
鍵を回す。
厨房に火を入れると、
鉄板がゆっくり温まり始めた。
寸胴から立ち上る湯気が、
静かに店の朝を作っていく。
さおりんがカウンターを拭きながら言った。
「今日は田植えだっけ?」
「ああ。義治さんとこ、消防団みんなで手伝うらしい」
「ヒデくんたち絶対転ぶじゃーん」
マスターは少し笑った。
夕方。
店の戸が勢いよく開いた。
「マスター!ビール!!」
泥だらけの長靴姿で入ってきたのは、
ヒデと智さんとやすだった。
作業服の裾には泥が跳ね、
腕も顔も日に焼けて赤くなっている。
「おー、どうした。田んぼとケンカしてきたか」
マスターが言うと、
ヒデが大声で笑った。
「やすが見事に転んだんだよ!」
「いや、あれ無理っす!
田んぼってあんな足をとられるんですか!?」
やすのズボンは膝まで泥だらけだった。
智さんが笑いながらビールを受け取る。
「ヒデなんか、
張り切って苗持って走ってたからな」
「消防魂だべ!」
「いや田んぼで消防魂いらねぇから」
店の中に笑い声が広がった。
鉄板に鶏もも肉を置くと、
じゅっと音がして脂が落ちていく。
その匂いだけで、
五人の顔が一気に緩んだ。

「これこれぇ……」
皆でコップにビールを注ぎあい、
ヒデの号令で始まる。
「今日もお疲れさーん。乾杯ー」
皆で瓶ビールを流し込み、
大きく息を吐いた。
「っくぅぅ〜〜〜!
田植え後のビール、世界一だな!」
外では、
夕方の風が田んぼの水面を揺らしている。
その頃、
また店の戸が開いた。
「おーい!春の山持ってきたぞー!」
光男さんだった。
袋から、
ウドの芽がたくさん出てきた。
「今年のウドはいいぞー。
柔らけぇし香りが強ぇ」
さおりんが嬉しそうに声を上げる。
「わぁ、いい匂い!」
マスターは静かにうなずき、
衣をつけ、
油へ落とす。
ジュワァァッ——。
軽やかな音が、
店の空気を明るくした。
揚げたてのウドの芽の天ぷらは、
塩で食べる。
サクッ。
そのあとに、
少し苦く、
少し甘い、
山の香りがプワーっと鼻へ抜けていった。
「……いやーー春だなぁ」

義治さんが、
いつの間にか席についていて、
ぽつりとつぶやいた。
どうやら田植えを終えて、
あとから来たらしい。
「今年も無事植え終わったな」
義治さんは、
静かにビールを飲み干した。
「マスター、昨日預けてたやつ、みんなに出してくれ」と義治さんが促し、マスターが「あいよ、バッチリ冷えてるよ」と言って「五醸」を冷蔵庫から持ってきた。
義治さんが立ち上がり、「やっぱ田植え終わりは「五醸」だべ。みんな、今日はありがとうな。これは俺の気持ちだ。みんなで飲んでくれ」と言って、皆に酒を注いで回った。
ポンッ。
トクトクトクトク。
日本酒の封を切ったばかりのワクワクする音が響く。
「じゃあ みんなありがとう 乾杯!」
「乾杯ー!」
皆で「五醸」をぐいっと流し込む。
「……っくぅ。身体に染みるなぁ」
「この酒は冷たいのが最高だ。」
店の中には、
鶏焼きの煙と、
ウドの香りと、
酒の匂いがゆっくり混ざっていた。
外では、
風に揺れた田んぼが、
夕焼けを静かに映している。
「カッコー カッコー」
遠くから、
またカッコウの声が聞こえた。
マスターは焼き台を磨きながら、
その声を聞いていた。
「田んぼに水が入ると、
里が動き出すなぁ」
さおりんが笑う。
「みんな泥だらけだったけどねぇ」
店の灯りが、
少しずつ夜の色に溶けていく。
火を落とす前に、
マスターは今日の火を一度見つめた。
今年もまた、
忙しい季節が始まった。

▼今日の日本酒🍶
八戸酒類株式会社
「五醸 純米吟醸」地域限定酒
滑らかさと豊かなコクが調和された味わい、格別の香りが楽しめる純米吟醸酒です。
五戸工場近隣の限られたお店でしか手に入らないプレミアムシリーズです。
お買い求めの際は地域限定酒取扱い店一覧へ直接お問い合わせ下さい。
使用米 華吹雪
精米歩合 50%
アルコール度数 15〜16度
日本酒度+2
酸度1.5
内容量・価格
1,800ml 3,291円(税込)
おいしい飲み方
ロック◯ 冷酒◎ 常温◯ 燗×
このお酒は、非常に飲みやすく、とても旨いお酒です。
よく冷やして飲むと最高です。
ぜひ、刺身や鶏焼きやウドの天ぷらと一緒に楽しんでみてください。
食材をを引き立てながらも日本酒の存在感を失いません。
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