ナフサ2倍到着の嘘。7月に日本の製造業が「窒息」する理由
石油の「ナフサ」という原料は、服を作るための「超基本の材料」です。このナフサから服ができるまでの流れを、料理に例えるとこんな感じです。
1)ナフサを「下ごしらえ」して、ポリエステルやナイロンなどの「生地の素(原料)」を作る
2)その素を「糸」に紡ぐ
3)糸を「編んで生地」にする
4)生地を「裁断・縫製」して服を完成させる
実は、日本の衣料品の約7割は、このナフサをたどって作られています。今、ニュースで問題になっているのは、この「下ごしらえ」の段階(糸や生地の原料)で、すでにナフサが足りなくなってきたということです。
だから産業界が「材料が足りない!ヤバい!」と悲鳴を上げました。経済産業省は「大丈夫!世界中からいつもよりたくさんナフサを買ってきたよ!」と胸を張りました。
通常の2倍にあたる90万トンを確保したそうです。しかし、届いたナフサは「安物の脂身が多い肉」のようなものでした。2倍届いたのに、使えるところを切り出したら結局1.2倍くらいにしかならなかったのです。
本来の良いナフサ(中東産のサラッとしたた上質なオリーブオイルのような油)は、服の生地やプラスチック、洗剤などをたくさん作れるのに、今回手に入れた重いナフサ(ドロッとしたラードやヘビークリームのような油)は、良い部分が半分くらいしか取れません。
結果として、ポリエステルやアクリル、プラスチックなどが思うように作れなくなりました。だから、材料は2倍届いたのに、使えるところを切り出したら、良い肉の半分くらいしか取れず、結局1.2倍程度にしかならなかったので稼働率がガクッと下がってしまいました。
しかも、材料が高騰した分、コストは下請けや服を作る会社にどんどん押しつけられています。
これは服の話だけではありません。ナフサから作られる部品は、先週書いたように自動車、スマホやパソコン、通信設備、注射器や点滴の袋、工場で使う機械など、ありとあらゆるものに使われています。
「今手に入るナフサでは、必要な部品が全然足りない」ということがはっきりしてしまったのです。さらに問題は続きます。世界中でナフサの取り合いが起きているので、価格がどんどん高騰しています。
しかも、遠いところから運ぶ必要が出てきて、船(タンカー)が足りなくなり、運ぶのにも時間がかかるようになりました。
そして一番厄介なのがこれです。脂身やスジを切り落としたら、それを捨てるバケツ(タンク) に入れます。でも、このバケツは決まった大きさしかなく、あっという間に満杯になってしまいます。
満杯になると、それ以上脂身を切り落とせないので、肉を処理する作業そのものを止めなければいけません。つまり、原料の肉がまだ届いていても、『脂身を捨てる場所がない』という理由で、ナフサを作る工程が止まってしまうのです。
そうなると、日本中の多くの工場で「部品が来ないので、稼働率が下がる、最悪は操業停止」という事態が連鎖的に起きる恐れがある、ということです。
