【簡易版記事】「海なし県」の挑戦が水産革命を牽引、陸上養殖市場2030年に1700億円の巨大産業へ
岐阜県の「飛驒とらふぐ」が切り開いた陸上養殖は、いまや日本全国の海なし県で革命的な変化を生み出している。
2025年の市場規模455億円から2030年には1700億円まで急拡大する見込みで、水産業の常識を覆す新産業として確立されつつある。
技術移転の連鎖が地域経済を活性化
飛驒海洋科学研究所の深田哲司社長が約5年かけて確立したトラフグ養殖技術は、その後全国の内陸地域に広がっている。
岐阜県下呂市では温泉水を活用したウナギ養殖が本格化し、奈良県天川村では廃校を活用したトラフグ養殖が地域観光の新資源となった。この技術移転の連鎖により、各地で独自の地域ブランドが誕生している。
埼玉県では温泉施設運営会社が「温泉サバ」の陸上養殖に成功し、北海道では温根湯温泉で寒冷地でもトラフグ養殖を実現した。
一関高専発のウニ養殖技術は国家プロジェクトとして認定され、海なし県でも海産物の高品質生産を可能にしている。
異業種参入が技術革新を加速
NTTグループは循環式陸上養殖システムを開発し、子会社「NTTアクア」を設立してICTを活用した誰でも参加できる陸上養殖の実現を目指している。
JR西日本は地域活性化を目的に沿線各地で養殖事業を展開し、三井物産は年間3500トン規模のサーモン養殖施設建設を計画している。
エア・ウォーター、日本特殊陶業、リックスなど製造業からの参入も相次ぎ、産業ガスや水質センシング技術など各社の本業技術を活用した新たな養殖システムが開発されている。
これらの技術革新により、従来の課題だった初期投資の高さや運営ノウハウの不足が解消されつつある。
地域ブランド化が付加価値を創出
僕が注目するのは、単なる技術普及を超えて地域固有の特産品としてブランド化が進んでいることだ。
栃木県「うつのみやストロベリーサーモン」、愛知県「美浜アクアファームのトラフグ」、福島県「好適環境水ベニザケ」など、各地の資源や技術を活用した独自ブランドが消費者に評価されている。
特に温泉水を活用した養殖は、エネルギーコスト削減と地域資源の有効活用を両立する画期的な手法として注目される。水産庁の届出制導入により2025年時点で740カ所に達した陸上養殖施設は、今後も大幅な増加が見込まれる。
僕は陸上養殖が単なる代替産業ではなく、地域の遊休資源を活用した新たな価値創造システムとして機能していると考える。
海なし県だからこそ生まれた発想と技術が、日本の水産業全体を変革する力を持っているのは間違いないだろう。
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