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『2年微能力組!~微妙な能力で下克上!~』第3話 【創作大賞2024・漫画原作部門応募作】

「あれは……本荘聡乃?」
「ええ、公園で何をしているのかしら?」
「ダ、ダメです……」
「ああん? お前の物じゃないだろう?」
「そ、そうですが……」
 聡乃は制服姿の男子たちに囲まれている。
「止める権利はねえだろ」
「そ、そういう訳にはいきません……」
 聡乃は小声でボソボソと呟く。
「だから、さっきからほとんど聞き取れねえんだよ! っていうかちゃんと人の目を見て話せよ!」
「ひっ……」
 大声を上げる男子に聡乃が怯む。照美が顔をしかめる。
「絡まれているみたいね。ちょっと止めてくる」
「待て」
 日光が照美を制する。
「え?」
「少し様子を見てみよう……」
 男子のうちの一人が声を上げる。
「だから! その木の上にいる鷹のヒナは俺らが貰うって言ってんだ! 鷹のヒナは結構高く売れるらしいからな!」
「そ、そういう方に渡すわけには……」
「同じことを言わせんな! お前の物じゃないだろうが!」
「そ、そうですけど……ここまで頑張って成長したんですよ」
「そんなこと知るかよ! そこをどけよ!」
「き、きゃっ!」
 男子が聡乃を押し退ける。聡乃は転びそうになる。
「おっと」
「!」
 聡乃を日光が受け止める。日光が呆れる。
「女に手を上げるとはな……」
「ああん?」
 男子が日光を睨む。日光が苦笑交じりに首を振る。
「中等部の連中か? まだまだガキだな」
「なんだてめえは⁉」
「三下に名乗る名などない」
「なんだと⁉ おい、こいつをやっちまえ!」
 男子たちが日光たちを取り囲む。日光が聡乃に語りかける。
「本荘聡乃……」
「は、はい……!」
「俺と……友達になってくれないか?」
「え、ええ……?」
「駄目か?」
「だ、駄目っていうわけじゃないですけど……わ、私なんかと友達になっても面白くないと思いますよ……」
「面白いか面白くないかは友達付き合いをしてみないと判断出来ん」
「‼」
「……どうだ?」
「わ、分かりました」
「決まりだな」
 日光は眼帯をめくって聡乃を見つめる。
「え、え?」
「俺の左眼は何色だ?」
「え、えっと……赤色です……」
「そうか……」
「何をごちゃごちゃと言ってやがる! お前ら! こいつを始末するぞ!」
「はっ! 面白え! おめえらに出来んのかよ!」
「⁉」
 日光の突然の叫びに男子たちが怯む。
「まあいい! せいぜい楽しませてくれよ!」
「くっ、かかれ!」
「おらおらあ!」
「ぐふっ!」
「うごっ!」
「どわっ!」
「どうしたどうした! そんなもんかよ! もっと俺と踊っちまおうぜ!」
「なるほど、左眼が緑色の場合は邪気眼系の中二病で、赤色の場合はDQN系の中二病になるっていうわけね……」
「あ、東さん……」
「大丈夫? 聡乃さん」
「え、ええ……」
「おらおら!」
 日光が男子たちをボコボコにする。男子が叫ぶ。
「くっ! こい! ジョン!」
「ワン!」
「あん?」
 男子の呼びかけに応え、大型犬が現れる。
「あのイカレた野郎にお仕置きしてやれ!」
「ワンワン!」
 大型犬が日光に飛びかかる。
「うおっ⁉」
 日光が成す術もなく覆いかぶさられる。照美が声を上げる。
「どうしたの⁉」
「ワ、ワン公には手を上げられねえよ……」
「時折見せるヤンキー特有の優しさ!」
「照美! お前の炎上でなんとかしろ!」
「わ、私もワンちゃんにはあまり酷いことはしたくないかな……」
「ふん!」
「なっ⁉」
 いきなり飛んできた鋭い鞭によって、大型犬が怯む。
「犬っころよお! 痛い目遭いたくなかったら、その兄ちゃんから離れな!」
 鞭を振るったのは前髪をかき上げ、両目を出した聡乃であった。日光が驚く。
「なっ⁉」
「おらあっ!」
「! ワンワン!」
「あっ! ジョン!」
「てめえらもだよ!」
「ちっ、に、逃げるぞ!」
 男子たちが慌てて逃げだす。
「はっ、口ほどにもねえな! ……はっ!」
「さ、聡乃さん?」
 照美が聡乃に声をかける。聡乃ががっくりと肩を落とす。
「や、やってしまいました……」
「……それがお前の微能力というわけか」
「あ、日光君、正気に戻ったのね」
「正気って……確かにちょっとイカレていたが……まあいい」
「そうね。今の鞭が聡乃さんの微能力?」
「違うな……」
 日光が顎に手を当てて呟く。照美が首を傾げる。
「違う?」
「人の目を見て話せない、ボソボソとした話し方……そこから判断するに、本荘聡乃、お前の微能力は『陰キャ』だろう?」
「そ、そんな馬鹿な……」
「せ、正解です……」
「正解⁉」
 聡乃の言葉に照美が驚く。
「は、はい……」
「じゃあ、あの鞭は? それに豹変ぶりも……」
「陰キャが間違った方向に弾けてしまった表れだろう」
「そ、それも当たりです……」
 日光の推測に聡乃は頷く。
「当たりなんだ……」
「こ、このような微能力では、やはり副クラス長なんてとてもとても……」
微妙な能力も使いようだ
「!」
 日光の言葉に聡乃はハッと顔を上げる。
「本荘聡乃……俺と友達になったからには、お前にも手伝ってもらう」
「な、何をですか?」
「2年B組をより良いクラスにする為の活動だ」
「⁉ そ、そんなことが……」
「可能だ、お前の助けがあればな、聡乃」
「! わ、分かりました。微力ながらお手伝いさせて頂きます」
 聡乃は差し伸べられた日光の手を取る。翌日……。
「二人から挨拶をお願いします」
 地山が促す。教壇の脇に立った聡乃がおずおずと口を開く。
「ほ、本荘聡乃です……と、戸惑いもありますが、精一杯務めますので、どよ、よろしくお願いします!」
(パチパチパチ……)
 聡乃の挨拶にまばらながらも拍手が起こる。地山が頷く。
「はい……それでは仁子君……」
「仁子日光だ……相変わらず出席率もまばらだが……ここで宣言しておこう」
「?」
「俺はこのクラス……2年B組を“落ちこぼれ”から“最高の連中”にしてみせる!
「!」
 日光の宣言にクラスメイトたちが一様に驚いた表情になる。
「微能力……微妙な能力……それがどうした? 微妙かどうかを決めるのはその能力の使いようだ……俺と諸君らの微能力を駆使して、この能力研究学園に革命を……下克上を起こしてやろうではないか!
「‼」
「……とまあ、少々大げさだが、要は良いクラスにしたいということだ。その為にも諸君らの力を貸して欲しい……以上」
「……」
 日光の挨拶に対し、皆あっけにとられたのか、拍手は起きなかった。地山が口を開く。
「いやいや、なんとも頼もしい……それではお二人にお願いします。頑張って下さい」
 放課後、席に座る日光に照美が話しかける。
「皆ノーリアクションだったわね」
「まあ、転校早々にあんな大それた宣言をするやつとわざわざ接点を持とうとする物好きはいないだろうな……」
「自覚あったのね。大それたっていうか、痛々しいって感じだと思うけど……」
 照美が小声で呟く。日光が首を傾げながら腕を組む。
「波紋を起こそうと石を投げてみたのだがな……」
「前途多難ね……」
「あ、あの……」
 日光たちが振り返ると、そこには聡乃が立っていた。
「聡乃……」
「わ、私は大変感銘を受けました。き、昨日も言いましたが、より良いクラスづくりの為にお手伝いさせていただければと思っています」
「助かるぞ」
「い、いえ……」
 日光の真っすぐな眼差しに聡乃は目を逸らす。照美がややムッとする。
「……クラス長は私なのだけど?」
「あ、い、いえ、決して東さんをないがしろにしているわけではなくて……」
「冗談よ、よろしくね、聡乃さん」
 慌てて弁明しようとする聡乃に対し、照美は笑いながら手を左右に振る。日光は席を立つ。
「今日のところは大人しく帰るとするか……」
「……それで今後はどうするの?」
 下校中、照美が尋ねる。
「改めての現状把握だが……俺の『中二病』……」
「眼の色によって、発現する能力の特性が微妙に異なるということが分かったわ」
「ふむ、よく理解しているな」
「眼の色は自分で決められないの?」
「その日によってランダムだ。自分がどんなことが出来るのかは、その日になってみないと分からん……」
「それはまた微妙な能力ですこと……」
「ンゴ連呼女には負ける」
「人を妖怪みたいに言わないで」
「ンゴ……?」
 聡乃が首を傾げる。照美が苦笑交じりに手を振る。
「気にしないでいいから」
「照美は『プチ炎上』……そして聡乃は『陰キャ』か……」
「は、はあ……」
 聡乃が俯く。照美がジト目で日光を見つめる。
「ねえ、もっとまともな能力の呼び名は無いわけ?」
「あ、東さん、私は大丈夫ですから……」
「そういえば、昨日の鷹のヒナはどうしたんだ?」
「あ、引き取り手が見つかって、その方の管理する土地に移りました」
 日光の問いに聡乃が答える。
「それは良かったわね」
「は、はい……」
 照美の言葉に聡乃が頷く。日光が立ち止まって腕を組む。
「まあ、それはともかく……」
「自分で話を振っといてなによ」
「うちのクラスにリーダー格は何人いる?」
「え?」
「リーダー格と言うと語弊があるかもしれんが……言い換えれば他の生徒たちに影響を与えることの出来る存在だ」
「う、う~ん……」
 日光の問いかけに照美は首を捻る。日光が重ねて問う。
「なぜはぐらかす? 昨日もそんな感じだったな」
「い、いや、なんというか……」
「聡乃」
「え、えっと、『四天王』と呼ばれる方たちがいます……」
「さ、聡乃さん⁉」
「ふむ……」
「れ、例外的に他のクラスの方々からも一目置かれているような存在です」
「そうか……四天王とはちょっとダサいな……」
「高二で中二病の奴には言われたくないわよ」
 日光の呟きに照美が突っ込みを入れる。
「……決めた。その四天王の連中を味方に引き入れる」
「ええっ⁉」
 照美が驚く。聡乃が口を開く。
「で、でも、あまり登校されない方々ですよ?」
「問題ない、波紋は起こした、というか餌は撒いたつもりだからな……」
「! 今朝のホームルームでの宣言……」
 照美がハッとなる。日光が笑みを浮かべながら呟く。
「興味を抱いてくれれば良いのだが……」

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