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『Live or Die?』第1話 【創作大賞2024・漫画原作部門応募作】

あらすじ
 人類が本格的に地球から宇宙に進出するようになってから、すっかり星間飛行も宇宙旅行も当たり前になった時代……。地球に住む1人の青年、タスマ=ドラキンが大きな夢を抱いて、宇宙に飛び出そうとしていた!……密航で。
 タスマが潜り込んだ船には何故か三人組の女の子たちの姿が……可愛らしい女の子たちかと思えば、この女の子たち、どうやら一癖も二癖もあるようで……?
 銀河をまたにかけた新感覚一大スペクタクル、ここに開演!

本編

 果てしなく広がる大宇宙……どこまでいっても終わりが見えない暗闇……人によっては恐怖の対象だろうか。あるいは何らかの神秘性を見出すのだろうか。だが、この俺にとっては無限の可能性を感じさせてくれる空間であった。
 この大海に漕ぎ出すことさえ出来れば、俺にも未来が開ける、明るい展望を抱ける、そう信じた俺は生まれ育ったこのどこかくすんだ星を――大昔は青かったらしい、信じられないことだが――後にして、まずは軌道エレベーターに乗り込み、宇宙ステーションに潜り込んだ。首尾は上々。テンションはアゲアゲだ。
 俺は広い宇宙ステーションの構内を迷いなくすいすいと進む。このステーションの地図は――関係者以外立入禁止の区域を含めて――しっかりと頭に入っている。シミュレーションは何度も何度も、脳内やコンピュータで繰り返してきた。完璧だ。
 俺は予備の宇宙服を拝借し、それを身に着けると、ステーションのとある作業区域に出る。そこの区域は“無重力”が広がっていた。幾度も映像で目にし、話で聞いていたのだが、初めて体験するそれについてさすがに戸惑いはあった。だが、かえって浮かれた気分を落ち着かせてくれた。素早く宇宙遊泳のコツを掴むと、俺は目当ての倉庫区域に入った。
 そこには大小様々なコンテナが所狭しと置かれている。再び重力のある空間に戻った俺は床をスタスタと歩き、あるコンテナの前にたどり着いた。このコンテナ群の中ではかなり小さい部類に入るコンテナだ。平均的な身長の人類の男性が一人入れるかどうかという大きさである。コンテナの側面に付いてあるパネルを操作し、あることを確認する。
「……0619、積み込み先は……『ディスカバー6』。よし、これだな……」
 俺は一旦周囲を見回す。辺りには人が少なくはなかったが、皆自分の作業に追われて、誰も俺のことを気にも留めない。俺は再びパネルを操作し、コンテナを開いて、その中にサッと潜り込む。体を折り曲げて横たわり、中からスイッチを押して、コンテナを閉める。元の積荷もあるためにやや、いや、かなり窮屈だが、今の俺には気にならない。
 しばらくすると、コンテナがガっと動き出す。運ばれているのだ、俺が“密航”を目論む、巨大宇宙船に。少しすると、またコンテナがガタっとなった。船への積み込み作業が終わったのであろう。俺は宇宙服の腕にあるボタンを押す。すると、服が体から離れ、一瞬の内に小さなカプセルに収まった。ボタン一つで幅広いサイズに適応出来る優れもののカプセル宇宙服だ。俺はカプセルを胸ポケットに入れ、ため息をひとつつく。
「ふう……ふふっ」
 ため息の後、俺は笑みをこぼす。まさかここまで順調に事が運ぶとは。こんなことならもっと早く実行すれば良かった。なにも十数年もあの星で鬱屈とした生活を送ることはなかったのに……。おっと、こうしてはいられない。担当の者が来る前に、さっさとこのクソ狭いコンテナからおさらばしよう。俺はコンテナを開き、ゆっくりと半身を起こす。
「さてと……って⁉」
 俺は固まった。見知らぬ女の子が三人、三方向から銃口を俺に向けていたからである。


「え、えっと……」
「動かないで」
 緑の髪色をしたポニーテールの女の子が冷静な顔で呟く。
「そ、その……」
「口も閉じてもらわないと撃つよ~♪」
 赤の髪色をしたショートカットの女の子が笑顔で物騒なことを口走る。
「……」
「年貢の納め時ですよ、下着ドロボーさん」
 青の髪色をしたロングヘアの女の子の言葉に俺は驚く。
「なっ!」
「!」
「⁉」
 青い髪の子の言葉に反応して口を開いた俺に向かって、赤い髪の子が躊躇なく発砲してきた。銃弾は俺の前髪を掠め、壁に当たった。
「だから撃つっていったじゃん~今度は外さないよ~?」
「銃弾の無駄遣いはやめなさい。仕留めるなら一発よ……」
 緑の髪の子が銃を構え直すのが視界に入る。
「……!」
 俺はバッと両手を上げて口をパクパクとさせ、目で正面に立つ青い髪の子に訴えかける。
「ん? なにやら弁明したいことでもあるんですか?」
「~~!」
 俺は首をこくこくと頷かせる。青い髪の子は俺に銃口を向けたまま、少し考えた後、俺に向かって告げる。
「……まあ、一応聞いておきましょうか。発言を許可します」
「あ、ありがとう……」
「お礼を言われても……では、さようなら」
「! ちょ、ちょっと待て! 発言はまだ終わっていない!」
「そうなんですか?」
 青い髪の子が首を傾げる。話が通じる子かと思ったら、そうでもなかった! とにかく俺は必死で言葉をつなぐ。
「お、俺は断じて下着ドロボーなどではない!」
「……では、その頭に被っているのは?」
「ん? おわっ⁉」
 片手で頭を触って驚いた。俺の頭に女物のパンティが綺麗に被さっているのだ。
「そんな状態で下着ドロボーではないと言い張るのは無理があると思いますけど」
「い、いや、これは……どういうことだ?」
「そんなことをわたしに聞かれても……」
 青い髪の子が困り顔になる。俺は自分の入っていたコンテナを見てみる。すると……。
「こ、これは……下着の山⁉」
 コンテナの中には色とりどりの下着がいくつかのボックスにぎっしりと詰まっていた。入りきらなかったのか、コンテナが揺れた際にこぼれたのか、ボックスの外にも下着が散乱している。緑の髪の子が怜悧な声で告げてくる。
「ジロジロと見ないで」
「は、はい!」
 俺は正面に向き直る。赤い髪の子が笑顔を浮かべたまま、尋ねてくる。
「それで?」
「え、えっと……」
 俺は頭をフル回転させ、状況の理解を急ぐ。
「……特に無いなら撃つよ~?」
「ま、待ってくれ! お、俺はたまたまこのコンテナに入っただけだ。この下着も起き上がるときに偶然頭に被さったのだろう。ドロボーなどするつもりはなかった!」
「……だけど密航するつもりはあったということね」
「え?」
「そうなんですか?」
 緑の髪の子の発言に、他の二人が驚く。緑の髪の子が呆れ気味に話を続ける。
「……たまたまコンテナに人が入るわけないでしょう? 普通にチケットを買って乗ればいい。そうではないということは、密航以外に考えられないわ」
「あ~」
「そう言われると、確かに……」
「ここまで言われる前に大体察しがつくでしょう……」
 二人のどこか呑気な反応に緑の髪の子がため息交じりで呆れる。
「密航者ならなおのことだね~♪」
 赤い髪の子が銃口を近づけてくる。俺は慌てる。
「ま、待ってくれ!」
「待たないよ~」
「そ、そこをなんとか! せめて話を聞いてくれ!」
「……聞いてあげましょうよ」
 青い髪の子が口を開く。赤い髪の子が苦笑する。
「お人好しだな~」
「……どうぞ」
 青い髪の子が俺に話を促してくる。俺は一呼吸置いてから話し出す。
「お、俺の名前はタスマ=ドラキン! 18歳! 君たちと同じ人類の男だ!」
「それくらい見れば分かるわ。馬鹿にしているの?」
 今度は緑の髪の子が銃口を俺に近づけてくる。
「し、していない! 地球の下層階級の出身だ!」
「へえ~」
「地球の……」
「二人とも感心しないの。地球最寄りの宇宙ステーションで積み込まれたコンテナに入っていたのよ。それも察しがつくでしょう……」
 緑の髪の子が二人をたしなめる。俺は話を続ける。
「お、俺は今までクソみたいな人生を送ってきた!」
「!」
 青い髪の子の目が丸くなる。俺は構わず続ける。
「こ、こんな人生を変えたいと思ったんだ!」
「なんでまた宇宙に~?」
「地球では金かコネが無いとまず這い上がれない! 学力とか特別な才能があるなら別だが、俺にはそれらも無い!」
「ははっ、無い無い尽くしだね~」
 赤い髪の子が笑う。青い髪の子が真面目な顔で注意する。
「茶化すのはよくないですよ……それで?」
「船の中に街があるような大型宇宙船なら航行期間も長く、仕事が沢山ある! 乗客も多い! まぎれ込んでしまえばこっちのものだ!」
「……だからと言って、密航とは思い切ったわね。船によっては結構な罪になるわよ……何が貴方をそこまでさせるの?」
「……お、俺は地球なんかで収まる器じゃねえ!」
「は?」
 思わず叫びながら立ち上がった俺に対し、緑の髪の子が首を傾げる。
「俺はいつかビッグな男になるんだ! そう思って、勇んで飛び出してきたのに……!」
「スタート早々下着ドロボー扱いとはね~」
「ううっ! だ、だから、これは濡れ衣というか……!」
 俺は思わず両手で顔を覆う。情けなさに涙が出てくる。赤い髪の子が笑う。
「ははっ、ウケる~」
「笑っちゃ悪いですよ……」
 青い髪の子がまた赤い髪の女の子を注意する。緑の髪の子が言い辛そうに口を開く。
「……貴方の立場や思いは分かったわ。でもね……乗る船を間違えているわよ?」
「ええっ⁉」
 驚いた俺は顔を上げる。
「ここは私たちの船よ、貴方の目当ての巨大宇宙船ではないわ」
「そ、そんなはずは……」
 俺は落ち着いて周囲を見回してみる。なるほど、確かに巨大宇宙船の積荷搭載スペースにしては、あまりにも狭い。大型のコンテナが1個か2個入るかどうかだろう。
「……分かったかしら?」
「あ、ああ、まさか……」
「そのまさかよ、貴方、密航先の船を間違えたの」
「そ、そんな! この船は『ディスカバー6』じゃないのか⁉」
「『ディスカバリー9』よ、見間違えたのね」
「ば、馬鹿な……」
 俺は愕然としながら膝をつく。緑の女の子はため息をつく。
「……悲劇の主人公ぶるのは勝手だけど、下着の山に膝をついているさまは滑稽よ」
「あ、ああ……」
 我に返った俺は中腰になる。青い髪の子が緑の髪の子に話しかける。
「どうしますか? こちらの下着ドロボー(仮)さん?」
 いや、(仮)って。一応名前名乗ったよね?
「どうするもなにも、さっさとステーションの関係者にでも引き渡して……」
「……いいんですか?」
 青い髪の子が緑の髪の子に近寄り、そっと耳打ちする。
「密航者なんて大した額にならないでしょう……⁉」
 緑の髪の子がなにやら小声で答えたその時、船が大きく揺れる。俺は驚く。
「な、なんだ⁉」
「こ、これは……!」
 緑の髪の子が赤い髪の子を睨む。
「うん~? オートで発艦するようにさせといたよ?」
「な、なにをしているのよ⁉ この男を突き出さないといけないのに!」
「でも~時間がないんでしょう?」
「それは貴女たちが余計な道草を食っていたからでしょう! ……ああ、よりにもよって、こんな高速で……」
 緑の髪の子が端末を取り出し、船の状況を確認する。赤い髪の子が笑う。
「近場だけど、急がないと間に合わなそうだしね~」
「ど、どうします?」
 青い髪の子が緑の髪の子に尋ねる。緑の髪の子がため息交じりに答える。
「ここまで進んでしまっては、引き返すのも時間のロスね……仕方がない、このまま目的地に向かいましょう……操縦室に戻るわよ」
「この(仮)くんはどうする~?」
「向こうで引き渡せば良いでしょう。操縦室に連れてきて」
 緑の髪の子がそう言って、部屋を出る。赤い髪の子が笑いながら俺の背中を押す。
「だってさ~」
「……」
「えっと、(仮)さん、わたしたちについてきて下さい」
 青い髪の子が俺に指示を出す。その優し気な声色に俺はどこかホッとする。銃口を突きつけられたままではあるが。
「どわっ⁉」
 部屋から廊下に出た俺は戸惑う。廊下が無重力空間になっていたからである。俺は体を二回ほど回転させて、なんとか廊下の手すりを掴む。俺の後方にいる赤い髪の子がまた笑う。
「ははっ、もしかして宇宙は初めて~?」
「ああ……」
「そんなんでよく密航しようと思ったね~」
「慣れの問題だろう、こんなのは」
「慣れるまでいられるかな~?」
「どういう意味だ?」
 俺は後ろを振り返って赤い髪の子に尋ねる。赤い髪の子は答えず肩をすくめるのみだ。
「あの……こちらです」
「あ、ああ……」
 青い髪の子が声をかけてくるので、俺はそれに従う。我ながら少し落ち着いてきたのか、女の子たちを観察する余裕が出てきた。女の子たちは三人とも俺と同い年くらい、あるいはちょっと年下、いずれにせよ同世代の女の子たちだ。体格は俺よりも小さい。平均的な人類の女性の身長くらいだろう。ルックスは三者三様で可愛い。いや、今はそれはどうでもいい。
 女の子たちの服装に注目する。船内ということで、宇宙服を脱いでいるのだが、揃いの黒いブレザーのような上着に、白いミニスカートを穿いている。どうしても、前をいく青い髪の子のヒラヒラとするそれに目線がいってしまう。赤い髪の子が俺の耳元で囁く。
「別に見ても良いよ~? 見せパンだし♪」
「な、何を言っている!」
「だってガン見していたからさ~」
「たまたまだ!」
 嘘です。釘付けでした。若い女の子の健康的な太ももとほどよい大きさのお尻が目の前を漂っているのだもの、見ない方が失礼だね。い、いや、そんなことよりも……この船はどうやらこの娘たちだけで運行しているようだ。不用心……いや、俺にとってはチャンスか?
「着きました。どうぞ」
 青い髪の子が俺に部屋に入るよう促す。そこには操縦席があった。俺はゆっくりと見回して確認する。このタイプはよく知っている……極めてオーソドックスな宇宙船の操縦席だ。これなら何度もシミュレーションで操ったことがある。俺は念の為、既に真ん中の操縦席に座っている緑の髪の子に尋ねる。
「……大方察しはついているが、目的地に着いたら俺はどうなるんだい?」
「……聞こえていたでしょう? 密航者として引き渡すわ」
「そうか、それは困る……な!」
「!」
 俺は青い髪の子を取り押さえようとするが、慣れない無重力での動き、あっさりとかわされてしまう――いや、もちろん女の子を抑え込むことに慣れているわけではないが――。
「おっと!」
「うおっ⁉」
 赤い髪の子が発砲してきたが、俺は奇跡的にそれを飛んでかわし、部屋の天井に右手をつける。赤い髪の子が口笛を鳴らす。
「やるね~♪」
「ふ、ふん、そんなの当たらねえよ! はっ⁉」
「……ちょっと大人しくしてくれる?」
 緑の髪の子が俺の眼前に迫ってきていた。無重力での動きに慣れているとはいえ、ちょっと異常な速さじゃないか? そんなことが頭によぎった瞬間……。
「どおっ!」
 緑の髪の子の鋭いビンタが俺の右頬を打つ。強烈なビンタだ。それだけで意識が飛びそうになったが、なんとか体勢を立て直した俺は、部屋の床に転がっている銃に注目し、それを拾おうとする。赤い髪の子が銃を構える。
「させないよ~」
「ここで発砲はやめなさい!」
「え~仕方がないな~」
 緑の髪の子の言葉に従った赤い髪の子は渋々と銃をしまう。チャンスだ。発砲する気はないが、銃さえ持てば、少なくとも対等だ。俺は銃を掴み取り、床に立つ。
「よしっ!」
「それっ!」
「ぐおっ⁉」
 赤い髪の子の強烈なパンチが俺の腹にめり込む。え? ちょっと距離離れていたよな? その距離を一瞬で詰めたのか? 無重力に慣れているとそんな動きが出来るの? 俺はまたしても飛びそうになった意識を繋ぎとめ、空中で何回転かしながらも体勢を立て直す。
「へ~結構タフだね~」
「そいつは……どうも!」
「きゃっ⁉」
 俺は座席を蹴り、その反動で青い髪の子の後方にサッと回る。左腕を首に回して抱え込むような体勢になり、右腕でその子の頭に向けて銃を突きつける。
「手荒な真似は出来ればしたくない! この船を俺に寄越……ぬおっ⁉」
 俺は脅し文句を言い終える前に悶絶する。青い髪の子のかかとが俺の股間にジャストミートしたからだ。予想だにしない一撃を喰らい、俺は力なくその場に崩れ落ちる。
「よっと」
「ぬう!」
 赤い髪の子がすかさず俺の身柄を抑え込む。う、動けない……。なんて力だ……。
「ああ、ごめんなさい()さん……」
 いや、()さんって、仮はどこ行った、仮は。
「謝る必要なんてないわよ。それより大丈夫?」
 緑の髪の子が首をコキコキとさせながら、青い髪の子を気遣う。
「だ、大丈夫です。それより()さんが……」
「どんなにタフな男でも鍛えられない場所だからね~♪」
 赤い髪の子が楽しそうに笑う。青い髪の子が申し訳なさそうに頭を下げる。
「す、すみません、()さん……」
「で、どうする?」
「だから向こうで引き渡すわよ」
「宇宙船強奪未遂も加えたら、結構な額になるんじゃない?」
「……それでも貴女が銃弾で破損した箇所の修繕費用くらいにしかならないわ」
「そっか~面倒だから、捨てちゃう?」
 赤い髪の子が俺の頭に銃を突きつけてくる。緑の髪の子が呆れ気味に答える。
「そんなことがバレたら、それこそスキャンダルだわ……拘束しておきなさい」
「ちょ、ちょっと、可哀そうじゃないですか、()さん……」
 青い髪の子の言葉に俺はちょっとキレる。
「()さん、()さんって……俺はタスマ=ドラキンだ! さっきも名乗っただろう⁉」
「まだキレる元気はあるようね……やっぱり少し黙らせようかしら」
 緑の髪の子が俺に銃を向けてくる。俺は慌てて適当なことを口走る。
「キ、キレてないですよ? い、いや~! どこの誰かは存じ上げませんが、皆さんお強い! それにルックスも美しい! ぜ、是非お名前と端末コードをお伺いしたい!」
「かわいいじゃなくて美しい……分かっているじゃない。私はケイ=ハイジャよ」
 緑の髪の子が前髪をかき上げながら答える。
「ははっ、変わったナンパだね~? アタシはコウ=マクルビだよ」
 赤い髪の子が笑いながら答える。
「え、えっと……アユミ=センリです……」
 青い髪の子が戸惑いながら答える。ケイにコウにアユミか、皆良い名前だな……って、それを聞いてどうする俺? どうすんのよ?
「端末コードまでは教えられないわね……」
「だ、だよね……」
「と、というか、ケイさん、名前を教えちゃって良かったんですか?」
「まあ、問題ないでしょう、なんだか間の抜けた顔をしているし」
 失礼だな、ケイちゃん。
「それは……多少否めませんが」
 いや、そこは否定してよ、アユミちゃん。
「そお? 結構カワイイ顔していると思うけど」
 優しいね、コウちゃん。後頭部に銃を突き付けられたままだけど。しかし、顔と言えば、この娘たちの顔、どっかで見たことあるんだよな……ルックスが良いからか? しかし、ルックスもそうだけど、スタイルも三者三様で良いな。ケイちゃんはスレンダー、アユミちゃんは細身だけど、出るところはちゃんと出ている。コウちゃんはなかなかボリューミーだな……体が密着しているからよく分かるぜ。
「……なんだかニヤケているわね」
 はっ、しまった! そんな場合じゃないのに、俺としたことが……。
「お、女の子三人の宇宙旅は何かと危ない! ボディーガードなんかどうかな⁉」
「必要ないわ。私たち強いから」
「そ、そうだね……」
 ビンタ、腹パン、股間蹴り……嫌というほど味わいました。確かにこの三人、相当強い。俺が弱いだけなんじゃないかという話はこの際置いておく。
「じゃあ、拘束しておいて……」
「ま、待ってくれ! このまま引き渡すのだけは勘弁してくれ!」
「キュイ?」
 その時、うつ伏せになった俺の鼻先にリスのような小さな動物が現れる。
「え? 緑のリス?」
「リスじゃないわ、テュロンよ」
「テュロン? うん⁉」
 テュロンが俺の鼻の頭をペロっと舐める。アユミちゃんが声を上げる。
「テュロンが! ケイさん、この人、悪い人じゃありませんよ」
「アユミ、人質にされそうになったじゃないの……」
「テュロンが初対面の相手にこんな風に接するのは珍しいね~」
「ふむ……」
 ケイちゃんが考え込む。他の二人の発言からヒントを得た俺は口を開く。
「そうだ、俺は悪人じゃない! 君たちの役に立ってみせる! 頼む! なんでもする!」
「……なんでも?」
 ケイちゃんが小首を傾げて悪そうな笑みを浮かべる。あ、俺、間違ったかな?


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