見出し画像

個人的に多大な影響を受けた/強烈な印象を残したバンド紹介 #60 Meshuggah

メタル/ヘヴィミュージックが革新的なサウンドを重視するようになってどれ位の時が経っただろうか。昔はメロディアスなパワーメタルや様式美が好まれていたが、昨今ではそれ等に代わってヘヴィネスとアグレッション、或いはリズム/グルーヴに多様性/革新性が好まれる。「メタルはトレンドやメインストリームと無縁の音楽!」も今では過去の価値観だ。常に最先端の流れを読みアップデートしていかなければ老害扱いされてしまう(最もこの価値観はメタルコア以降のバンドのみであり、古典メタルやパワーメタル/スラッシュメタル、地下デスメタル/ブラックメタル等は未だにトレンドと無縁のジャンルである)。

とは言え今ではオールドスクール扱いされているバンドもデビューした当時は十分に革新的だった筈だ。Judas PriestもIron Maidenもデビュー当時は最先端バンドという扱いをされていただろう。イングヴェイに至ってはネオクラシカルメタルの開祖として新たなマイクロジャンルを生み出した80年代の超革新派だ。

最も当初は革新的でもそれがスタイルとして確立し時が経てば形骸化されるのが世の常だ。ニューメタルコアもニューコアもあと20年経てば化石だろう。Bring Me the Horizonでさえも30年後にはロートルバンドとなるのは避けられない。その一方で幾ら時が経とうとも未だに最先端として通じる革新的なサウンドを生み出す事に成功したバンドも存在している。時の試練に耐えうるバンドと言うべきか。本日はそんな時代の流れに決して飲まれず今尚未来を行くビッグネームを紹介したい。

1987年にスウェーデン、ウメオで結成された生ける伝説と呼ぶべき超大物バンドMeshuggah。今は専任のリードシンガーとしてマイクのみを握るJens Kidmanだが、当時はシンガー件リズムギターというポジションでバンドを立ち上げたのがMeshuggahとしてのスタートである。

幾つかのデモやEPを制作した後1991年にリリースされた初のフルアルバム『Contradictions Collapse』はまだDjent/テクニカルデスどころかデスメタルですらなく、どちらかと言ったらスラッシュメタルの要素が色濃いサウンドだった。とは言えギターソロにはAllan Holdsworth等の流れを汲んだフュージョン色濃いテクニカルさが既に見られ、後のスタイルの萌芽が確かに存在していた。

加入して間もないドラマーTomas Haakeが兵役により思うように活動出来なかったりとバンドにとって歯がゆい時期が続いたものの(これだから俺は徴兵制に反対だ!)1995年に2作目となる『Destroy Erase Improve』をリリース。Jens Kidmanがヴォーカルのみに専念し新たにもう一人のギタリストとして加入したMårten Hagströmにとって初となる本作はスラッシュメタル要素を減退させ叩きつけるような単音リフを多用。まだスラッシーな疾走感も残ってはいるが後のDjentにかなり接近したサウンドに仕上がっている。

そして1998年にリリースされた3rdアルバム『Chaosphere』、2002年リリースの4th『Nothing』でバンドの方向性が決定付けられる。
Fredrik Thordendal、Mårten Hagströmがついに8弦ギターを導入しMeshuggahのトレードマークと言える独自のDjentサウンドが完成する。最もこの頃はDjentというワードは存在せず、ただ単に「テクニカルデスメタル」と呼ばれていた。

その革新的過ぎるサウンドはシーンに歓迎され、『Nothing』はビルボード200で165位を記録。MeshuggahはNuclear Blast Records史上初めてビルボード200にランクインしたバンドとなり、またNuclear Blastと契約したバンドとして初めてローリングストーン誌でレビューされる事になった。

こうなってくるとバンドの革新性は留まる事を知らなくなる。2004年にリリースされたEP『I』は21分の大作1曲のみという構成となっており、翌年2005年にリリースされた5thアルバム『Catch 33』は13のパートに分かれた45分の大作に加え、全てのドラムパートをプログラムされた打ち込みで再現。『Drumkit From Hell』と称されたそのドラム音源は俺等DTMerが常日頃から世話になりまくっているToontrack『EZdrummer』の拡張音源として市販もされており、これを使えば当時のMeshuggahのドラムサウンドを再現する事が可能である(最も古い音源のため今ではさらに高品質な音源が多々あるのだが…)。

方向性が完全に固まったMeshuggahはDjentの直接的なルーツとしてシーン最重要バンドの地位を欲しいままにする。2008年にリリースされた6thアルバム『obZen』が特に高い売り上げを叩き出し最も知られるカタログと言えるだろう。現状において最新作は2022年にリリースされた通算10作目に当たる『Immutable』だ。変わらず単音ポリリズムリフによる極端極まりないミニマリズムに満ちたストイックなDjent/テクニカルデスメタルを追求している。

Djentの開祖としてデスメタル及びメタルコアといった壁を越えて名実共に現代エクストリームメタル/ヘヴィミュージック最重要バンドとして名高いMeshuggah。厳密にはMeshuggahのサウンドを研究し模倣しようとしたPeripheryのMisha Mansoorこそが「Djent」というワードを生み出した事も含めて開祖とされる声も高いが、やはりルーツを辿ればMeshuggahこそがオリジネイターであると言えるだろう。

ギター/ベースとドラムで異なるリズムを執拗に反復させる事で生み出される変態的ポリリズムの波は今でこそDjentの一語で片付けられるだろうが、当時は相当に真新しく新鮮なサウンドだったと容易に想像出来る。開放弦による単音リフ(俗に0を刻むと称される)にベースとキック(バスドラ)をユニゾンさせ、その上で波形を細かく切り刻む事で成り立つあの独特の機械的ヘヴィサウンド。一聴すると変拍子だらけに聴こえるが実際には4拍子のフォーマットの中で奇妙なフレーズを奇妙なタイミングで放り込んでいるというのは有名だ。実際にカウントしながら聴くとちゃんと4拍子に収まっているのを確認出来る。

そのヘヴィサウンドは前述したよう後にMisha MansoorがDjentとして体系化する事に成功する。ハイを持ち上げローカットを徹底しギター、ベース、ドラム(バスドラ)の周波数帯域を徹底して振り分けたその極端な音作りはメタルコア以降の現代メタル/ヘヴィミュージックサウンドの基盤となる。数多くのバンドがこのサウンドを志し、そして俺等アマチュアDTMerもこのサウンドを再現しようとSNSで調べ、マニュアル通りのEQを設定するのだがまったくもってMeshuggahやPeripheryのようなサウンドにならずガッカリする…までがワンセットだ。実際ローカットはあまりし過ぎない方がいい。ローカット絶対禁止を掲げるローカット警察(笑)まで現れる位だからこの手の音作りが如何に難しいかが分かるだろう。

リズム面の印象が強いMeshuggahだが同時にAllan Holdsworth等に代表されるフュージョンテイスト漂うギターソロも大きな特徴である。クリーントーンに限りなく近い音色でアタックの弱い流麗なシュレッドを披露するソロは硬質かつ無機質なリフ/リズムと対比するかのように浮遊感を演出している。メロディアスなスタイルと言うよりはポストメタルに通じるインテリジェンスさに満ちている。

Jens Kidmanによる生々しくパワフルなスクリームもMeshuggahの持ち味だ。かなり地声強めな声質はスラッシュメタルルーツである事を伺わせるが、ハードコア的な吐き捨てとも若干異なる独特の怒号がこれまた無機質なMeshuggahサウンドにおいて生々しさ、肉体性の演出に繋がっておりバンドの味として機能している。

俺自身現代エクストリームメタル/ヘヴィミュージックを志すDTMerの端くれとしてMeshuggahからは多大な影響を受けている。というか現代メタルをプレイするDTMerでMeshuggahの影響がない人間は恐らくいないのではないだろうか?上記したよう誰もが一度はMeshuggah及びDjentサウンドを志しそして失敗する。作曲面でも自分で演奏せず打ち込みで済ますなら難解なポリリズムも余裕だ。俺も様々なプロジェクトでこういったDjent的チャグやリズムをアクセント的に取り入れ、或いは敢えてDjentじゃないポリリズムを導入したりと直接的、或いは間接的にMeshuggahからの影響をアウトプットしている。

ただ独自のDjent/ポリリズムメタルを生み出してしまった弊害によりそこから脱却する事が出来ず、またメロディーよりもリズムに全振りしたサウンド故か楽曲毎の区別化が難しくどの曲、どのアルバムも似たり寄ったりな印象になってしまうのが最大の欠点として挙げられるだろう…。偉大なるマンネリズムと言うべきか。イングヴェイがそうであるようにMeshuggahもまた己の生み出した独特極まりないサウンドから逃れる事は出来ない。逃れてしまったらMeshuggahではなくなってしまう。アイデンティティーと向き合い続けるしかないのは実に過酷だ。

とは言え後にDjentという一つのジャンルを生み出すオリジネイターであるMeshuggahの凄み、偉大さは時が流れようとも普遍である。同じくオリジネイターであってもイングヴェイの生み出したネオクラシカルメタルは現代メタル/ヘヴィミュージックにおいてすっかり過去のものとなってしまった感があるが(テクデスに吸収合併されてしぶとく生き残っている説もある)、現代メタルがメロディーやスピードよりもヘヴィネスやリズム、革新性を重視するようになったからこそMeshuggahのサウンドはより輝きを増す。時の試練を余裕で受け流す革新派メタルの頂点。幾らマンネリになろうともMeshuggahの功績が陰る事はない。


いいなと思ったら応援しよう!