個人的に多大な影響を受けた/強烈な印象を残したバンド紹介 #65 Fleshgod Apocalypse
メタルとオーケストラ/クラシックの融合。俺自身かつてはパワーメタルやメロディックメタル、ネオクラシカルメタルを好んでいたタイプのリスナーでもあったため今もリスナーとしては好物である。Rhapsody of Fireなんか改名前に出会い当時大学で知人に「こんなスゲェバンドいるぞ!」と興奮しながら無理矢理聴かせたりしていたのが懐かしい。今はデスメタル/ブラックメタルのコンポーザーとなり基本的にはメロディーの無いメタル/ヘヴィミュージックをプレイしているが、それでもたまにストリングス等を導入しシンフォニックさに色気を出したりする事はある。普段は辛いものやしょっぱいものを好むがたまにチョコ等を味わいたくなるのと同じようなノリだ。
ガチでオーケストレーションをメタルに融合しようと思ったらそれなりに音楽理論が要求されるのだが、実は白玉コードやシーケンスフレーズを適当に放り込むだけでもそれっぽくなったりもする。あくまで味付け程度のストリングス/オーケストラなら映画のサントラのようなアレンジで十分だ。ただやはり堂々と「シンフォニックメタル」を名乗りたいのであればそれなりにガチのオーケストラ知識が必要である。3コードしか出来ない奴が「俺はメタルやプログも出来る!」と豪語するのは余りにも世間知らず過ぎる。
本格的なオーケストレーションをやりたいとは思わないが、リスナーとしてなら影響を受けたシンフォニックなバンドも存在している。本日はそんなガチ中のガチなシンフォニックのデスメタルを紹介したい。
ex-Hour of Penanceのシンガーでありマルチプレイヤーとしても知られるFrancesco Paoliによって2007年にスタートしたFleshgod Apocalypse。デモをリリースした後Neurotic Recordsと契約、ヨーロッパツアーを行いつつ2008年に初のフルアルバム『Oracles』をリリース。その後Neurotic Recordsと決別しWillowtip Recordsから改めて1stアルバムが再発される事になる。
新たに加入したTommaso RiccardiがギターVoを務める事になりマルチプレイヤーFrancesco Paoliはドラムに専念。2010年にEP『Mafia』をリリース。Hour of Penanceの元メンバーによるバンドという事もあり次第にバンドは知名度を伸ばしていく。2011年にNuclear Blast Recordsと契約し同時期にピアニストでありオーケストレーションを担当するFrancesco Ferriniが加入。これによりバンドの方向性は決定的なものとなる。同年にリリースされた通算2作目のフルアルバム『Agony』は本格的なシンフォニックデスメタルに舵を切った作品であり、圧倒的な完成度の高さを見せ付けた本作によりバンドの知名度は一気に拡大される事となる。
2013年に3rdアルバム『Labyrinth』をリリース。前作の勢いそのままに更なる完成度の高さを見せ付け来日公演も果たす事になる。俺もこの時期にライヴを観に行ったのを覚えており、その後のバンドは数回に渡り来日公演を敢行する。2016年に4thアルバムとなる『King』をリリースするが、その後メンバーチェンジが起こりギターVoのTommaso Riccardiが脱退。長年ドラムをプレイしていたFrancesco Paoliがマルチプレイヤーの手腕を発揮してギターVoの座に収まり、新たにライヴ用のドラマーとしてDavid Folchittoが名を連ねる事となる(レコーディングではFrancesco Paoliがドラムもプレイ)。またリードギタリストとしてDeceptionistのFabio Bartolettiが加入する。
2019年に通算5作目となる『Veleno』をリリース。翌年2020年には新たにVital RemainsのEugene Ryabchenkoがライヴ用ドラマーとして名を連ねるが、コロナ禍によりツアーがキャンセルされる等勢いは陰りを見せ始める。ベーシストであり見事なハイトーンでクリーンVoを響かせていたPaolo Rossiがバンドを脱退。これまでグロウル、クリーンVo、ソプラノというトリプルVo編成だったがクリーンVoパートを全てソプラノシンガーVeronica Bordacchiniが担当する事となり、グロウルとソプラノのツインVo体制となる。
2023年には5度目の来日公演を果たす事となるが、来日ビザのトラブルで名古屋&大阪公演が中止となり東京公演も中止になりかけるが、バンド側の希望により完全フリーライヴとして敢行される事になる。今現在の最新アルバムは2024年にリリースされた通算6作目に当たる『Opera』だ。
テクニカルデスメタルバンドHour of Penanceの元メンバーによる新たなバンドという事で当初はかなりオーソドックスなデスメタル要素が強かったFleshgod Apocalypse。Hour of Penance同様テクデスやブルデスの範疇で語られる事も多かったが、1stアルバム『Oracles』の時点で僅かではあるが既にオーケストレーションを導入しておりバンドとしては当初からシンフォニックなサウンドを目指していたものと思われる。それが開花したのが2ndアルバム『Agony』だ。
壮麗さと劇的さを演出する壮大なオーケストレーションに凄まじいまでの爆速ブラスト、アグレッションとドラマ性を両立させるトリプルVo編成による圧倒的サウンドは当時メタルシーンでかなりの話題となっていたのを覚えている。ブルデスやテクデスを好まないメロディー派リスナーにも強烈にアピールした本作でFleshgod Apocalypseの名はメタルファンの間で確実に知られるものとなった。
来日公演も2回程足を運んでおり、1回目は音こそ悪かったものの激烈なサウンドに喰らったのを記憶している。2回目に観に行った時は何故かスローチューンばかりプレイしておりダレを覚えてしまい、悪い意味で記憶に残ってしまったのだが音響は改善されており演奏のレベルは高かった。
昨今のアルバムでもその激烈なデスメタルサウンドにオーケストレーションを載せたサウンドは健在だ。とは言えアンダーグラウンド臭が薄れていき洗練されたシンフォニックメタルに寄りつつあるのは好みが分かれる部分だろう。ex-DIMMU BORGIRのVortexを思わせるハイトーンVoを操るPaolo Rossiが抜けたのも痛い。クリーンVoパートがソプラノオンリーになった事で一本調子になってしまった感があるのは否めない。ユーモアな描写の無いゴルゴ13や北斗の拳のようなものだ。
俺自身最初に触れたのは『Agony』であり、リスナーとしてはシンフォニックで壮大なFleshgod Apocalypseサウンドを好んでいるがデスメタルのプレイヤーとしてはやはりシンフォニックさが薄かった最初期のほうが刺さるのは間違いない。ある意味Carcassのようなものだ。『Agony』のボーナストラックで『Heartwork』をカヴァーした経歴もあり共通点も見られると言えなくもない。
部分的にストリングス/オーケストレーションを取り入れつつも基本的にはブルデス/テクデスの範疇に収まった凶悪なデスメタルサウンド。ブラスト主体で勢い良く爆走しつつリフやフレーズ等ブルデスとしては破格に聴き易く判り易い。ギターソロにも意外なまでにメロディーが存在している。フックとして最小限のオーケストレーションを導入したアーティスティックかつ洗練されたモダンなデスメタルをプレイするFleshgod Apocalypseにも抗い難い魅力があるのは確かだ。最もそういう欲求はHour of Penanceが満たしてくれるんで非シンフォニックなテクニカルデスを求めるならHour of Penanceをお薦めする。俺自身Hour of Penanceにも影響を受けているが、昨今はよりアンダーグラウンドな地下ブルデスを好んでいるのでこういったモダンなデスメタルをプレイする予定は今の所は無い。やるとしてもブルデスのDeath Zombie From HellではなくOSDMプロジェクトEmbedment Congenitalだろう。
