個人的に多大な影響を受けた/強烈な印象を残したバンド紹介 #24 Arkha Sva
複数の一人エクストリームメタルプロジェクトを立ち上げているこの俺だが、その内の一つがブラックメタルをプレイするMankind Must Be Destroyedだ。厭世/厭人及び絶望と破滅をコンセプトにMayhem路線の正統的なブラックメタルをやっているが、同時にデプレッシヴブラック(DSBM)や現代的なポストブラック/アトモスフェリックブラックの要素も取り入れている。今回はそんな俺に多大な影響を与えた国産ブラックメタルバンドを紹介したい。
正体不明の謎のバンドとされているブラックメタルバンドArkha Sva。当初は3ピースバンドであるという事以外の全てが謎に包まれた覆面バンドであり、メンバーの名前すら不明な時期が続いていたが後にシンガーUr Èmdr ŒrvnはAhpdegma、Androalphus、Anguis Dei、Atman Drei、Avsolutized...、I'm Ruins等多数のバンドでマイクを握る事となる。
どうやら1996年から活動を続けているベテランらしく、2005年に初のデモ『Rekonquista』をリリースしたのを皮切りに多数のデモやスプリット、EPをリリース。オーストラリアのDrowning the Light、フランスのWinter Funeral、スウェーデンのWoods of Infinity等正体不明バンドながら他国のバンドと積極的にスプリットを出している辺りにブラックメタルというジャンルのフットワークの軽さ、かつてのパンク/ハードコア同様アティテュードが活動理念の根底にあるという事が伺える。いち早くMayhemのDeadらと交流を持ったSighの功績も相当に大きい。
複数の音源をリリースしている割にフルレンスアルバムは2007年作『Gloria Satanae』のみであるが、本作がシーンに与えた影響はかなりのものだ。当時リスナーの間でもかなり話題になったアルバムで、俺もリアルタイムで触れ衝撃を受けた一人だ。音楽的にはDSBMやプリミティヴブラックの領域に入るものと思われるが、コアな一部マニアのみに愛でられるだけのアンダーグラウンドなブラックメタルとは一線を画す普遍的な魅力/クオリティーの高さを備えた名盤だと断言出来る。
基本的には寒々しいトレモロ、ブラストで爆走する王道路線のブラックメタルであるが、フックあるコールドなメロディーが多々見られセンスそのものがハイレベルであった事が伺える。叙情的なギターフレーズも多数顔を出し楽曲構成そのものもよく練られており極めて完成度が高い。シンセ類に頼らずともドラマティックさや叙情性、それに伴うブラックメタルらしい禍々しさ/ダーティーさがしかと漂っており、コアなブラックメタルマニアとブラックメタル初心者双方にアピール出来るアルバムだ。
プロダクションもブラックメタルらしい軽さと籠り感があるが、そこまで聴き辛い訳ではなくこのサウンドだからこそダークさや寒々しさ、悲壮感がより伝わってくる。恐らくメタルコアやデスコアのようなモダンなサウンドでこの味は出せないだろう。音楽性にマッチしたベストな音作りだ。
そして特筆すべきはUr Èmdr Œrvnの特異な歌唱スタイルだ。ブラックメタルらしい絶叫スクリームに吐き捨てるようなミッドのグロウル、OSDMルーツのディープなロウのグロウル、そこにファルセットやハイトーンのクリーンVoを交えまるで生き物のように多彩な変化を見せる縦横無尽なヴォーカルワークは凄まじいの一語に尽きる。低いグロウルから一気にファルセットに到達する『49 Evil Spirits』は彼等の代名詞的ナンバーだ。表現力という点ではタイプこそ異なるがDIR EN GREYの京やkokeshiの亡無に匹敵すると言える。クリーンVo自体も巧く、そこらのパワーメタルシンガーに引けを取らないハイトーンで見事に歌い上げている辺りにUr Èmdr Œrvnの地力の高さが伺える。
また壮絶な切れ味を見せるハイピッチのスクリームも特筆事項だ。恐らく吸いによる発声と思われるが、僅かにホイッスル成分を混ぜつつもホイッスルに寄せ過ぎずあくまでも歪み成分を前面に押し出したスクリームは音源を聴くだけで空気が震えるような声量の凄まじさが伝わってくる。クリーンのハイトーンは俺には出来ないがこのスクリームには影響を受けており、Mankind Must Be Destroyedでたまにやっている位だ(勿論声量等遠く及ばないが…!)。
バンドは『Gloria Satanae』以降もスプリットやEP、コンピレーションアルバムを多々リリース。活動が止まった2014年までの間に年に2~3枚リリースする事もあり多作なのか寡作なのかよく判らないが、敢えてフルアルバムを出さず小出しにリリースするというスタンスは配信時代となった今の流れにもマッチするだろう。
前述の通りシンガーUr Èmdr Œrvnは複数のバンドで活動、他メンバーは正体不明という事もありその後の消息は分かっていないが(もしかしたら名前を変えて普通に他バンドで活動している可能性も高い)Arkha Svaがブラックメタルシーン及び国内アンダーグラウンドメタルシーンに及ぼした影響は余りにも大きい。隠れた幻の伝説的バンドと呼んでも差し支えない陰の大物だ。
