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人生で一番、白い飲み物を飲んだ話〜バリウム検査〜

【バリウムとの出会い】

胃のバリウム検査。
好きな人、たぶんいない。

「きつい」「まずい」「終わったあとが地獄」
そんな話だけは、やたらと耳に入ってくる。

——まあ、私にはまだ関係ないか。

そう思って開けた会社の健康診断の封筒に、
《バリウム検査のお知らせ》
と書いてあった時、文字通り三度見した。

アラサー。
人生で一番白い飲み物を飲む日が、
思ったより早く来てしまったらしい。

すぐに上司に確認。報連相、大切ですからね。

そしてその返答は、

「バリウム検査のところに星マークついてないかな?
ついてたら対象だよ〜」

バッチリついていた、忌まわしき星マークが。

まあでも、別途料金とかかからないなら別に良いか。
どうせいつかは通る道だし。
そうして私は、バリウム検査を受ける決意をした。

・情報に踊らされながら病院へ

それからというもの、私は情報を集めまくった。

ネットや家族、知人に聞き回り、
出来る限りベストな状態で挑もうとしていた。

そこでめちゃくちゃ怖い記述を見つける。

「バリウムを飲んだ後は下剤で出しきらないと、腸が詰まってやばいよ〜」

なんで??
なんでそんな危険なことするん??
(なんで蛍すぐ死んでしまうん???)

一刻も早く、バリウムを体内から出さなければ…
そう固く決意する。
決意して出せるものなのか分からないが、
固く決意する。

ただここでひとつ問題が。
検査を受ける病院までなんと電車で2時間かかるのだ。
私のお腹は耐えられるのか…??
不安、不安、不安のジェットストリームアタック。

答えが見つからないまま、気がつけば検査当日。
朝7時発の電車に乗り、病院へと向かった。

【バリウムとの邂逅】

バリウム検査室の前に水道があり、検査が終わった人はそこでうがいをするという流れ。
バリウムという大きな壁を乗り越えた人たちだけが使える場所だった。

私が呼ばれるまで何人か検査室から出てきたが、全員が全員満身創痍。

はあはあと息切れしているおじさんもいて、心の中でお疲れ様と呟いた。

そして、いよいよ私の番。

中に入ると紙コップと粉?ラムネ?みたいなものを渡された。

「この液体と一緒に粉を飲んでください」

お姉さんにそう言われた。
コップには3分の1ほど白っぽい液体が入っている。
恐る恐る先に粉を口に含むと、

すっっっっっっぱ!!!!!!!!
すっぱすぎる!!!!!!!

慌ててコップの中の液体を飲む。
ヨーグルトのようなドロっとした感じに、後から来る薬品臭……

個人的には少し苦手な味だった。
形容しがたい味だ。

ただそんなことよりも、
私の口内では酸っぱいがボロ勝ちしすぎて
早く何か飲みたいが先行していた。

・ウィトルウィウス的人体図

少し話は逸れるが、
この画像を見たことがある人は、多いのではないだろうか。
これはかの有名なレオナルド・ダ・ヴィンチの《ウィトルウィウス的人体図》である。

おそらく、この画像の検索ワードトップはこれだろう。

《バリウム検査》

私も検査に挑む前、先駆者の意見を探した時に
ウィトルウィウス的人体図の画像をたくさん見た。

みんな声を揃えて言う。
「バリウム検査はウィトルウィウス的人体図だった」
と。

そしてそのみんなに、
バリウム検査を受けた後の私も元気に加わった。

どんな検査だった?と聞かれたら
まずこの画像を見せるだろう。

・いい年して左右がわからなくなる

——話を戻そう。
私はただただ、ゲップを我慢していた。

「ゲップしないように気をつけてくださいね〜」

お姉さんに言われた5秒後、思いっきり出てしまった。
ダメと言われるとやりたくなる。
それが人間というものです、お姉さん。

「はい!じゃあ台動きますよ〜〜
今から指示するのでその通りに動いてくださいね〜!
まずは右、左。
その次は少し左を向いて肩を浮かせて〜」

ゲップにをしたことに恥ずかしがる暇もないまま
お姉さんから怒涛の指示が飛んでくる。

もう頭の中はパニック。
ゲップに耐えながら言われた通りに
ひたすら身体を動かし続けた。

きっと側から見たらすごく滑稽なんだろうなあと
ぼんやり思った。

ひと通りゴロゴロした後、台は元の位置へ。
お、終わったか…!?
そう顔を挙げると、お姉さんが近づいてきた。
その手に持っているのは紙コップ。
も、もしかして………

「ごめんなさい、もう一回これ飲んでもらえますか?」

予想通り、おかわりバリウムでした。

そうですよね!
さっきゲップしましたもんね!
飲みます!飲みますよもう!!

もう半ばヤケクソ。

「あと口の中に発泡剤が残ると爆発するので、しっかり飲み切ってくださいね〜」

お姉さんにそう言われて、ようやく気づいた。

——酸っぱすぎる物体の正体は、発泡剤だった。
発泡剤、発泡剤。酸っぱすぎる、発泡剤。
頭に強くその名前を刻む。二度と忘れないだろう。

……ん?
今、お姉さん物騒なこと言わなかった?
※あとで調べたら、実際に爆発するわけではないらしい。当たり前。

そして2回目のウィトルウィウス的人体図が始まった。

「頭下がりますよ〜。
逆手でバーをしっかり握って右でお願いします〜」

その声がかかると同時に、頭側が思いっきり下がっていく。
え、左右だけじゃなくて上下も動くの?

下がっていく身体。
何か重たい液体が胃の中でぐるぐる動く感覚。
口を開けた瞬間に出そうなゲップ。
お姉さんの指示……

「あっそっちじゃないですね、右を向いてください笑」

必死になっていた私は
右左の判別がつかなくなり
お姉さんに笑われましたとさ。ハハハ。

・バリウム前線、離脱。

「お疲れ様でした。
とりあえずお水はたくさん飲んでくださいね。
あと、お昼ご飯は早めに召し上がってください」

「は゛、は゛い゛」

検査室前の水道で、水をがぶ飲みしながら
私は返事をした。

息切れおじさんの気持ち、今ならとてもわかる。
わかるわかるよ、君の気持ち。(by 小池徹平)

口の中は、まだ発泡剤の酸っぱさが残っていた。

発泡剤を分かりやすく言うと
味はクエン酸をめっちゃ酸っぱくしたやつで
コーラを一気飲みした時の感覚にとても似ている。

あれをひたすら我慢しながら
ゴロゴロ〜ゴロゴロ〜とズン飯尾になる。

あとから調べると、
発泡剤って実際に炭酸飲料に使われてるらしい。
それはすごく勉強になった。

【バリウムとの別れ】

帰る際、カウンターで下剤と
病院近くにあるレストランのランチサービス券をもらった。

胃がモヤモヤしてご飯どころではないッ!

そう思いながらありがたくいただいた。

先述したように、病院から自宅まで片道2時間かかる。
そのため、下剤は自宅に着いてから飲むようにした。

1時間ほどしてから
ちょうど電車の乗り換えがあったのでお手洗いに行くことに。


…………………………
もうバリウム出てませんか!!??


個人差はあると思いますが
私の場合、下剤を飲む前にバリウムの排出が始まっていた。
なんだかとても嬉しい気持ちになった。
へへ、私の身体、頑張ってんじゃん。

嬉しさと不安を抱えながらなんとか無事に帰宅。
それからゆっくり下剤を飲んだ。

それ以降、ネットで見たようなしんどさは全くなかった。

・ひとつ大人になった気がした日。

というわけで、無事バリウム検査を終えることができた。

「バリウム検査は終わってからが本番」
と聞いていたので、その点に関しては一安心。

やっぱりゲップを我慢しながら
ウィトルウィウスしたのが1番しんどかったですかね…

それと同時に、現代の医学と自分の身体ってすごいなあと思いました。(小並感)
知識がなさすぎてすごいとしか言えませんが…

なんやかんやありましたが、
私にとってバリウム検査はちょっとした人生のステータスになったような気がする。

【終わりに】

世界には、
バリウム検査を受けた者と
まだ受けていない者がいる。

そして私は、バリウム検査を受けた者。
人生で一番白い飲み物を飲んだ側になったのであった。

……なお、
採血で倒れた話は、また別の機会に。

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