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映画『フラッシュダンス』の主人公は黒人女性である

ダンサーを夢見る若者の青春映画

80年代に大ヒットしたアメリカ映画に『フラッシュダンス』という作品がある。
公開当時は、ダンサーという夢に向かって努力する爽やかな青春ストーリーにのせた心に残る主題歌と、水を使った斬新なダンスシーンが非常に話題となった。
実はこの映画は、黒人女性が主役の人種問題を絡めない映画ともいえる。 

黒人女優? ジェニファー・ビールズ

まず主人公アレックスを演じたジェニファー・ビールズ自身が、実は黒人女性なのである。
 確かに彼女は一見、特に日本人からすると白人に見える。
しかし黒い瞳に黒いカーリーヘア、照明によっては黒くも、白くも見える肌。
実際、彼女は父親が黒人とネイティブアメリカンのハーフ、母親が白人であることから、4分の1が黒人のクォーターなのだ。昔のワンドロップ・ルール(かつて一滴でも黒人の血が混じっていたら黒人というルールがあった)でいうと、紛れもなく黒人である。
しかしこのことをジェニファーは映画がヒットしてから公開したため、アメリカでは黒人であることを隠したかのように思われて、バッシングを受けている。

黒を強調する演出

さて映画の中では、ジェニファー演じるアレックスを中心に、黒と白を対比させる演出が目立つ。
 
例えば、アレックスの親友や恋敵役に金髪に青い瞳の女優が並ぶため、ジェニファーの浅黒い肌や黒い瞳が非常に印象に残り、彼女が黒人の血を引くことを強調しているかのような演出である。
しかも友人はフィギュアスケートに取り組んでいるという設定。近年では日本人が大活躍しているこのスポーツであるが、当時はメダルの常連は常に白人だったものである。お金のかかるスポーツであるためか、当時も現在も黒人のスケーターは少ないままである。
 
またバレエ団付属のスクールへ願書をもらいに行くシーンでは、白いレオタードやポワント(トゥーシューズ)のダンサーたちが集まるクラシックバレエの世界の中に、昼間は溶接工のアルバイトをして生計を立てるアレックスの汚れた靴と対比させる演出。白人たちがアレックスを見て、ひそひそ話をするシーンなどは、裕福な白人社会に迷い込んだ貧しい黒人女性の心地悪さを表現しているかのようである。

黒と白の狭間で

ほかにもアレックスが友人たちとジムでエクササイズのシーンに、ひときわ黒い肌の一目で黒人とわかる女性が一人だけ、ちらりと出てくる。
「彼から電話が来ないの」と嘆く白人の女性に対して、「きっとで電話してくるわ」(字幕では「待つのよ」と訳されている)と慰めるアレックスに対して、黒人女性は「さっさと電話しなさいよ」と叫ぶ。
対照的な白人と黒人の間で、どちらにも属するジェニファーがなだめるようなシーンとなっており、黒人ハーフの立ち位置を示しているようにも見える。
 
さらにアレックスの恋人ニックの設定が、労働者階級からのたたき上げの社長さんであり、おそらくアラブ系と思われる男優が演じている。
決して金髪に青い瞳のお坊ちゃまではないところが、今でも現実的であるといえよう。

ダンスシーンに込められたメッセージ

有名なクライマックスのバレエ団のオーディションでは、スクールで正式に学んだことのないアレックスはストリートで出会った黒人のダンス、当時は珍しかったブレイクダンスを取り入れたダンスを踊る。そしてクライマックスではあまりにも有名なヘッドスピンを披露し、審査員たちを驚かせるのだ。
 
つまりこの映画は、黒いダンスが白いダンスの殿堂に挑むというストーリーなのである。
 
他にも非常にメッセージを感じる演出として、アレックスがショーパブで顔を白塗りにして踊るシーンがある。これはかつて白人男性が顔を黒塗りにして、黒人のモノマネショーをしたミンストルの逆パターンとも考えられる。
さらに獅子舞を思わせる衣装といい、テレビを使った演出など(当時の日本のイメージは電化製品だったのだ)歌舞伎のオマージュに感じられて、非常に興味深い。
 
ちなみにダンスシーンのほとんどはジェニファーではなく、プロのダンサーによる吹き替えである。
このことを初めて知ったとき、なぜか非常にショックを受けたものだった。
 
もしかしたら人種というものも、勝手に我々がこだわっているだけで、すべてはこの映画のように虚構なのかもしれない。

#黒人女性 #フラッシュダンス
(イラスト:等々力ハナ)

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