ゼンマイを心待ちにする母とヤマガラ
母が、庭に植えたゼンマイをせっせと収穫してきた。春になってからもう3回くらい収穫しているらしい。山にいかなくても、家で採れるのはいいね。
「ヤマガラがきて、ゼンマイをつついていたんだけど、食べるのかね?」
と首をかしげる母。
さっきからヤマガラがひっきりなしにやって来ては、ヒマワリの種を咥えて持っていく。
「さっきヤマガラがやって来て、こっちを見て首をかしげるから、ヒマワリいれといた」
と母が言う。
ヤマガラは、ヒマワリの種が欲しい時は、家の中を覗き込んでくる。
風で飛ばないように石をおいたプラスチックのお皿に、ヒマワリの種がたくさん入っていた。
収穫したゼンマイをウッドデッキにおいて、ヤマガラの飛行を見ながら外でカフェオレを飲んでいた。
ヤマガラの飛行はカッコいい。
迷いなくさあーっとやって来ては、ヒマワリの種をひとつだけ咥えて、またさあーっと飛び去って行く。
こんなにしょっちゅうくるなら、動画に撮れるな、とスマホで撮影を始めた。
ヤマガラがやって来てヒマワリを咥えたところをズーム撮影していると、母が
「あ!ゼンマイをつついてるよ!ああ、わかった、巣材にするんだね」と、謎が解けた、という明るい声で言った。
それで、すかさずスマホをゼンマイの方に向けた。
ヤマガラは口いっぱいにゼンマイのフワフワの部分だけを咥えていた。
もう口いっぱいに咥えているのに、まだゼンマイのフワフワの部分をさらって行く。


ゼンマイのフワフワした部分は、新芽を保護する部分だ。ちょうどツガイの相手を見つけて巣作りを始めたヤマガラにとっては格好のお布団になるのだろう。
木ノ上で孵る小鳥たちは、生まれたては赤裸の身体をしている。生まれたての雛が痛くないように、フカフカの素材を巣のなかに敷くのだろう。
春の香りのするいいおうちに違いない。

さて、乾燥ゼンマイの作り方である。


完全に乾く前に、優しく手で揉む。何回か揉む。

乾燥させると軽く一年は持つ。
次のゼンマイが出てくるまで、ちょっとずつ戻して食べるのだ。
戻すときは一晩水にさらして、そのあと新しい水で茹でる。
ざるに開けて、油炒め、味付けはめんつゆだけ。
これが実に美味しい。
先祖代々、こうやってゼンマイを食べてきた家は多いのではないかな?
子供の頃から毎年食べていると、春が来ると身体が欲しがるごちそうのひとつとなる。

乾燥した状態ならずっと持つので、保存食としても優秀である。
昔の人の知恵はすごいと感心する。
この季節になると、農業をやっている叔母が、庭に植えたたらの芽をたくさん収穫して持ってきてくれる。
それで、母は姉妹達と毎年たらの芽の天ぷらを作って、みんなで「タラボパーテイ」をするのだ。

今回はラッキーなことにご相伴にあずかることができた。
いやあ、揚げたてのたらの芽の天ぷら、サクサクモチモチで美味しかった!
初めて山椒の葉の天ぷらも食べた。香りがして、甘くて美味しかった。
母とおばさま方のタラボパーテイ、野菜ばかりのお品書きだったが、全部実に美味しかった。お肉がなくても、野菜だけでこんなにごちそうができるんだ、と目から鱗が落ちる思いだった。
母のゼンマイは好評で、あっという間にお皿が空っぽになった。
叔母が持ってきたゼンマイのおひたしも美味しかった。
炭酸で一晩アクを抜いてから茹でると、おひたしとしても食べられるらしい。
この方法ならフワフワに守られた新芽の部分も余すところなくたべられるね。

春のごちそうをたっぷり食べて、心も身体も元気になった気がした。
