木徳神糧が異例の声明発表!「価格の不当な操作は行っていない」、小泉農水相の発言受け
コメ卸最大手の木徳神糧は2025年6月11日、異例の社長声明を発表し、「価格の不当な操作や流通の阻害は一切ない」と断言しました。背景には、小泉進次郎農水相による「卸業者の営業利益は前年比500%」という国会での発言があり、卸業者に対する批判が過熱していました。今回の声明は、事実に基づく反論とともに、透明性ある業務の説明責任を果たそうとするものです。一方で、政策立案の責任を問われるべきは誰なのかという論点も浮かび上がっています。
小泉進次郎農水相発言が巻き起こした波紋
2025年6月5日、小泉農林水産相は国会質疑で、コメ価格の高騰に関連して「ある卸業者の営業利益が前年比500%増」と指摘しました。具体的な企業名には言及しませんでしたが、流通過程で利益を得ている業者が価格上昇の一因だというニュアンスが強くにじみ出ていました。
この発言は瞬く間にメディアやSNSで拡散され、「卸業者が買い占めや出し惜しみをしているのではないか」といった世論の疑念に火をつけました。とくに消費者の視点からすれば、物価高騰による生活負担と“業者の暴利”という構図は、格好の批判対象になりがちです。
こうした中で名指しこそ避けられていたものの、2025年12月期第一四半期の決算短信を出していた業界最大手の木徳神糧が強い疑念を向けられる形となり、社長名での異例の声明発表へと踏み切るに至りました。
「価格操作は一切ない」と明言する木徳神糧
木徳神糧の鎌田慶彦社長は、声明の中で「市場価格を意図的に釣り上げたことや、買い占め・出し惜しみによって流通を妨げた事実は一切ない」と断固として否定しました。
また同社は、コメ流通においては「原料精米および安定供給を担う立場」であることを強調し、販売価格の形成に直接関与していないことも明らかにしています。実際、仕入や在庫、販売実績などの詳細は毎月農林水産省に報告しており、監視下での運営を続けていると説明しました。
このように、声明は政治的パフォーマンスや風評によって矛先が向けられる現状に対し、丁寧かつ根拠ある反論を展開しています。
市場シェアわずか4%、価格決定力はない
木徳神糧が取り扱う主食用国産米は年間約26万5,000トン。これは全国需要約700万トンのうちわずか4%にすぎず、「市場全体を左右しうる影響力を持つ立場にはない」としています。
加えて、店頭での販売価格は最終的に小売店側が決定するものであり、卸業者が消費者価格を直接コントロールすることはできません。したがって、コメの価格高騰を卸業者の“操作”と決めつけるのは事実に反すると訴えています。
木徳神糧の姿勢には、消費者との信頼関係を維持するためにも、業務の透明化と説明責任を重視する企業倫理がにじみ出ています。
「500%増益」は構造変化の一時的現象
声明ではさらに、2025年1〜3月期における同社の営業利益が19億円(前年同期比487.4%増)となった点についても言及しました。
この増益の要因として、①仕入価格の上昇に伴い販売価格を適切に反映できたこと、②値引き販売の減少で利幅が改善したこと、③本牧工場の閉鎖と桶川工場への統合によって製造コストが削減されたこと、など複数の実務的背景を挙げています。
ただし同社は、この収益拡大は「長年の薄利多売体質の中で起きた一時的な反動に過ぎない」と冷静に分析。恒常的な利益構造の転換ではなく、特殊要因に基づく限定的な結果だという見解を明確に示しています。
今後の対応について、木徳神糧は「消費者負担の軽減に努める」と明言し、供給体制の効率化やコスト削減、品質管理の強化を通じて、少しでもコメ価格の安定に寄与したいとの姿勢を示しました。
とくに、政府備蓄米を適正価格で迅速に流通させるため、小売業者との連携を密にして対応することを重点的に進める方針です。
また、精米後の異物混入防止や衛生管理の徹底など、品質面でも信頼確保に向けた取り組みを続けるとしています。
問われるべきは「農水相の政策責任」
声明によって業者側の立場や背景事情が明らかになった今、改めて問われるのは、小泉農水相の政策的な対応力ではないでしょうか。
「安いコメを届ける」とのスローガンのもと、備蓄米の放出や小売支援策が打たれたことは評価できます。しかし、価格高騰の原因分析や、根本的な課題に踏み込んだ政策立案がなければ、一時的な“演出”にとどまってしまいます。
たとえば、来期以降の減反政策の見直し、生産コストの削減、生産性の向上、新米供給前の市場安定策など、本来打つべき手は多くあります。国会で卸業者の数字を引き合いに出すよりも、業者から直接話を聞くことで、より実効性のある対策が見えてくるはずです。
信頼に足る説明と本質的な対策を
木徳神糧の声明は、誤解を払拭するために事実に基づいた説明を尽くしたものであり、流通業者としての責任を全うしようとする姿勢が明確です。
一方で、政治家による発言が世論や市場に与える影響の大きさを考えれば、政策責任者である農水相自身の説明責任や検証能力が問われる局面でもあります。
トランプ米大統領のように“敵”を作るパフォーマンスではなく、本質的な政策によって価格安定を導くべき時期に来ています。信頼される農政とは何か。今、改めてその原点が問われています。
文=夏樹真生(経済ジャーナリスト)
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