カン・ドンウォンの困った顔は、20年前と変わらない ワイルド・シング (2025年製作の映画)
カン・ドンウォンをはじめて見たのは、「彼女を信じないでください」という2004年のコメディ映画だった。
仮出所中の女詐欺師をキム・ハヌルが演じていた。
その後、日本では同名の女子プロゴルファー、キム・ハヌルの名をよく見かけるようになった。
一方、カン・ドンウォンはあの頃から現在まで、ほとんど途切れることなく第一線にいる。
2000年代は、韓国映画がめきめき台頭してきた時期だった。
イ・チャンドン、ポン・ジュノ、パク・チャヌク、キム・ギドク、キム・ジウン、ナ・ホンジン……。
重い韓国映画に魅了されたが、韓国映画の底力を感じたのは、そうした作品とは対照的なコメディや娯楽映画まで充実していたからでもあった。
猟奇的な彼女、子猫をお願い、花嫁はギャングスター、僕の彼女を紹介します、誰にでも秘密はある、まわし蹴り、サッド・ムービー、カンナさん大成功です!、色即是空……。
「彼女を信じないでください」もそんな映画のひとつで、仮出所中の詐欺師ヨンジュと、田舎の純朴な青年ヒチョルが繰り広げるロマンティックコメディだった。
「ミスター唐辛子コンテスト」のヨンジャのコーラスを、いまだに覚えている。
野暮ったくて、いい映画だった。
あれから20年以上経ったが、カン・ドンウォンの印象はさほど変わっていなかった。
「ワイルド・シング」のトライアングルは、45歳のカン・ドンウォン、42歳のオム・テグ、31歳のパク・ジヒョンが演じる、若き日の男女混成ダンスグループである。
オ・ジョンセは49歳にして甘いマスクのバラード歌手、52歳のシン・ハギュンは無責任なプロデューサーを演じている。
ブレイクダンスが流行っていた2001年にはじまり、20年後の再結成をめぐって繰り広げられるドタバタ喜劇になっている。
出演者たちは撮影前に約5か月間、ダンスやラップなどの練習をしたそうで、カン・ドンウォンは難易度の高いヘッドスピンまで練習したという。
45歳で10代のダンサーを演じるのだから、大変な仕事である。
ただし身もふたもない言い方だが、ヘッドスピンというのは、やる側の大変さと見る側の感動があまり比例しない動きだとは思う。
それぞれの若々しさと役作りには感心したが、率直に言って、 映画そのものに笑えるところは少なかった。悪徳プロデューサーのヨング(シン・ハギュン)を追いかけるドタバタに多くの時間が費やされ、「ラブソングができるまで」(2007)のような、昔の人気者ならではの哀愁は感じられなかった。
ひるがえって、「彼女を信じないでください」はいい映画だったと思う。
映画史に残る大傑作というわけではない。
しかし一度好きになった人が、いつまでも妙に好きでいる。
「彼女を信じないでください」は、多くの映画ファンにとって「いとこのビニー」的な作品になっているのではなかろうか。
結局、「ワイルド・シング」をいちばん支えているのも、カン・ドンウォンの困った顔だった。
映画デビュー作「彼女を信じないでください」で純朴な青年を演じていた頃と、驚くほど変わっていない。
笑いをさらっていくのは名バイプレーヤーのオ・ジョンセである。
声はハニーバターのように甘いのに、承認欲と俗臭にまみれたソンゴンは嵌まり役だった。
「韓国バラードの貴公子」という外見だけでもおかしい。
文句なしのシーンスティーラーだった。

