【日曜コラム☕】法人の痛みを終わらせる日。~真の独立インフラという極太のレール~
紫陽花に雨滴る日曜午後。少しだけ日常の喧騒から離れ、コーヒーを淹れながら思考を巡らせようか。
最近のクリプト界隈を見渡すと、個人の本人確認であるKYCの話ばかりが目につく。もちろんそれも大事なことだが、私たちが本当に見据えるべき、少し先にある法人のオンボーディングの話だ。
既存の金融システムで法人口座を一つ作るための、あの途方もない労力とは何だろうか。一言でいえば、本人確認やマネーロンダリング対策、そして法令遵守のための果てしない審査の連続とも言える。
切りがないが敢えて拾うと、登記簿謄本や定款の提出に始まり、代表者の身分証明書や住所確認書類まで求められる。さらに株主構成や実質的支配者の特定から、事業計画書の提出や資金の流れの説明、そして反社会的勢力との関係がないことの証明まで、これでもかと書類の山を要求され、必要に応じて面談までされることもある。
しかも、口座が開設できたら終わりというわけではない。高額送金をするたびに追加確認が入り、海外送金では送金目的を厳しく問われる。定期的な顧客情報の更新を求められ、不審取引のモニタリングに晒され続け、何かあればすぐに口座利用の制限や再審査が待っている。
もちろん、これらがAMLやテロ資金防止策として必要な仕組みであることは重々承知している。しかし利用者から見れば、口座を一つ作るだけでなぜここまでと、天を仰ぎたくなるほどの手間と時間がかかる。
ブロックチェーンや分散型IDの文脈では、常にこの課題が取り上げられてきた。理想を言えば、一度信頼できる機関で本人確認を済ませ、その認証情報を利用者自身が管理し、必要な相手に必要な情報だけを提示できる仕組みがあればいい。
そうなれば、銀行やサービスごとに同じ書類を何度も提出する不条理な負担を大幅に減らせる。しかし現実は、各国の法規制や金融機関ごとのリスク管理方針が壁となり、完全な共通化には至っていない。
しかし、冷静に考えてみてほしい。顧客情報漏洩リスクにこれほど晒されている一企業が管理して初めて他社とのリレーショナルが実現することなど絶対にない。根底から間違っているのならば、個人情報、秘匿情報は、最高責任者の手元に置くことが安全の極みだ。
Coreがやろうとしていることは、まさにここなのだ。
だからこそ、先日公開されたCorePassのKYB映像を見たときは静かに胸が熱くなった。あれは単なる書類のアップロード機能なんかじゃない。ビジネス専用のウォレットを作り、独自のCore名を直接刻み込む。
そして取締役の権限や組織のガバナンス構造そのものを、ブロックチェーン上で自律的にプログラムしていく。全会一致なのか過半数なのかといったルールまで、組織自らが設定できる。私たちが既存の不透明なシステムで味わってきたあの理不尽な痛みを、分散型の独立インフラが鮮やかに解決しようとしている。
重要なのは、この自律的なガバナンスを根底で支えているエンジンの存在だ。企業が設定した承認ルールを実行するのは、AWSのような単一の中央集権サーバーではない。
Proof of Distributed Efficiency(PoDE)という地球規模で稼働する分散型のコンセンサスが、企業意思決定プロセスをいかなる改ざんや検閲からも守り抜く。
これこそが真の独立インフラの凄みだ。
少しだけ時計の針を戻してみよう。
実はこのCorePassにおける法人のオンボーディング機能は、昨日今日ポッと出た思いつきではない。
私の記憶を辿れば、もう3年以上前にもなるだろうか。
オッキーことオッカート・ローブサーはすでにあるコミュニティで、この構想の熱を帯びて語っていた。
当時、まだKYCすら十分に浸透しきっていなかったあの時代に、彼は日本人でこの話題の深さに乗れそうなメンバーに対して、熱心にアプローチをかけていた。
あの頃はなぜ彼らがそこまでDAOという存在(ちょうどこの頃からCOREと別のCORE DAOとの混同が始まった時期)にこだわるのか、正直ピンとこない部分もあったかもしれない。しかし今になって、法人の観点からその凄みがじわじわと効いてきている。世界がようやくRWA、つまり現物資産のトークン化という大きな波に気づき始めたから解ってきたとも言える。
不動産や金や証券といった現実の資産をブロックチェーンに持ち込む。言葉にするのは簡単だが、そこには法律という巨大な壁が立ちはだかる。どこの誰ともわからない匿名のウォレットが現実のビルを所有するなど、現実社会のルールが許すはずもない。
RWAが本物のビジネスとして成立するためには、その資産を扱う法人が何者であり、誰が意思決定の権限を持っているのかを明確に証明するKYBが絶対に不可欠になる。彼らは3年以上、(いやもっと前だろうが)今のこの世界の潮流を完全に見抜いていた。
なぜ彼らがこれほどまでに厳格な設計にこだわるのか。それはヨーロッパの厳しい法規制であるMiCAやGDPRといった、世界で最も高いハードルを最初から越えるためだ。
CoDeTechがリヒテンシュタインという法的に極めて厳格な地を拠点のひとつにしているのも、決して偶然ではない。既存の金融機関すら対応に苦慮するような法規制の枠組みを、彼らはブロックチェーンのネイティブな仕組みとして最初から内包してしまっている。企業という組織が強固なデジタルのアーマーを纏い、現実世界の法律と完全にリンクする瞬間だ。
他のプロジェクトを見渡してみれば、RWAに力を入れている企業も確かに増えた。Ondo FinanceやCentrifugeなどがそうだ。
しかし彼らのKYBの多くは、外部の身元検証サービス(Sumsubなど)をシステムに繋ぎ合わせただけの後付けの絆創膏に過ぎない。もっと言えば、既存の誰かが敷いたレールの上を、ただ借り物の車両で走ろうとしているだけだ。
Coreは違う。彼らがやっていることは、荒野に自らの手で「レールを敷く」という気の遠くなるような作業だ。CorePassを通じて構築しているのは、KYBを外部に丸投げして安易に走るような妥協ではない。
中には、Coreがなんでもかんでも自社で開発することに疑問を持つ人もいるかもしれない。外部の便利なサービスをアウトソースして使えばもっと早く進むのに、と。
しかし考えてみてほしい。この重要なKYBやアイデンティティの基盤を他社に依存したとして、日々激しく変化する世界情勢や複雑な法規制の山を前にしたとき、その借り物のレールで本気で走り続けられるだろうか。
答えは否だ。外部への依存はいつか必ず致命的な脱線を招く。自分たちの手で根本からレールを敷き、ポイント(分岐点)を管理するからこそ、この不確実な世界で完全にコントロールを握ることができる。
すべてを自社で握ることを指して、「それではブロックチェーンの理念に反する中央集権ではないか」と疑念を抱く声もあるだろう。しかしそれは、インフラ構築というものを少しロマンチックに捉えすぎている。
新大陸へ向かう強固な鉄路をゼロから敷設するフェーズにおいては、ある程度の中央集権的な牽引力と責任が絶対に必要になる。そしてレールが開通した後も、現実世界の法律という規格と接続し、安全に運行し続ける以上、責任を持った管理機能は不可欠だ。
それは理念の放棄や中央集権への後退などではなく、現実世界でインフラを稼働させるための極めて大人の選択なのだ。
なぜ彼らがここまで強固な内製のレールにこだわるのか。それは彼らがWeb3の無法地帯でただ遊んでいるのではなく、Arax Holdingsとして米国SECという世界で最も厳しい規制当局と真正面から向き合っているからだ。
8-Kや10-Kといった厳格な報告義務を背負いながら、コンプライアンスの壁という巨大な山を貫くトンネルを掘ろうとしている。遊びではない、現実のビジネスと法律に耐えうる重量級の貨物列車を走らせるために、この完全な内製のKYBという極太のレールがどうしても必要だったのだ。
これを複数の企業が寄り集まる企業連合や、あるいは責任の所在が曖昧な完全な分散化によって成し遂げようとすること。実は、そちらの方がよほど非現実的な選択なのだ。
世界で最も厳しい規制当局を前にして、「みんなで合議してどちらへレールを敷くか決めます」「分散化されているので誰がポイントを切り替えるかわかりません」などという無責任な理想論が通用するはずもない。
現実の法律とがっぷり四つに組むためには、強烈な責任と牽引力を持った単一の主体が、狂気とも言える執念で自ら岩盤を削り出し、真っ直ぐにレールを敷いていくしかないのだ。
ブロックチェーンといえば、かつてはハイプを消費しデジタルな投機に狂奔するだけの世界だった。しかし時代は今、現実資産への架け橋へと大きくその姿を変貌させつつある。
これは決して一時的なトレンドではない。AIが単なる一過性のブームではなく、蒸気機関やインターネットの誕生がそうであったように、もはやそれ以前の世界には戻れない社会の不可逆な構造転換そのものであるのと同じだ。
世間はメタバースを終わった一時的なハイプだと思っているかもしれない。だがそれは違う。ただ順番が違っていただけだ。
確固たるブロックチェーンによるインフラがあり、そこに現実資産が完全に融合し、そして仮想現実ががっぷり四つを組んで噛み合ったときに、再びメタバースは必然的に立ち上がる次の巨大インフラとなるだろう。
地盤が固まっていなかったから崩れただけで、CorePassのような強固なアイデンティティと法的な正当性、そしてXCBの独立インフラという岩盤の基礎が据えられた今、本当の統合が始まろうとしている。
私が現在連載している「新大陸の系譜」で言葉を尽くして伝えたかったのは、まさにこの瞬間のことかもしれない。
既存の金融システムという痛みに満ちた旧大陸から企業たちがこの強固な列車に乗り込み、彼らが狂気で敷いたレールに乗って、真の独立インフラという新大陸へと移住を開始する。
私たちが目撃しているのは、デジタルとリアルの境界線が溶け合い、新しい大陸のインフラが音を立てて構築されていくその最初の1ページなのだ。
最後の一口を飲み干しながら、この先の景色がどう変わっていくのかゆっくりと見守っていきたい。☕
〈🎧AI音声解説👇〉
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