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#書評/久保田龍雄著「死闘!激突!東都大学野球」

今年、東京六大学野球は100周年を迎えた。その華やかな歴史と伝統は、大学野球界にとどまらず、プロ野球の発展に大きく貢献してきた。

しかし、それは六大学だけの功績ではない。東都大学野球もまた、独自の精神と情熱で、日本の野球文化を豊かにしてきた存在である。96年にわたる長い歴史の中で、数多くの名選手や名勝負を輩出してきたことは、誰もが認めるところだろう。

そんな中、『死闘!激突!東都大学野球』が刊行された。著者は久保田龍雄氏。

久保田氏は1981年11月に東都大学野球専門誌「東都スポーツ」の創刊を実現させた。中央大学在学中、六大学野球ばかりが注目される現状に疑問を抱いた著者は、自身で東都の魅力を伝える媒体を作ることを決意したという。

伝えたい選手や試合が次々と生まれていく中で、取材の情熱が高まったのだろう。

本書は「東都スポーツ」が積み重ねた渾身の記録を基盤にしている。名勝負や名場面を厳選して描き出した、記念碑的な書といえよう。

野球ファンならきっと、心を打たれるだろう。それほどまでに内容は充実している。

阿部慎之助(中央大)、小久保裕紀(青山学院大)、高津臣吾(亜細亜大)、西口文也(立正大)、新井貴浩(駒澤大)といった現役NPB監督をはじめ、石毛宏典(駒澤大)、阿波野秀幸(亜細亜大)、黒田博樹(専修大)、亀井善行(中央大)など、往年の名選手たちの青春時代が鮮やかに描き出されている。

オールドファンは、彼らの活躍を懐かしむと同時に、尾上旭(中央大)、福原忍(東洋大)、高橋尚成(駒澤大)といった対戦相手の名にも心を揺さぶられる。かつての自分の人生、青春と重ね合わせて涙するかもしれない。

また本書は、入替戦の名勝負にも十分なページを割いている。1958年秋、3校による3度のプレーオフなど、東都大学野球の厳しさと情熱を鮮やかに描き出している。

『勝てば天国、負ければ地獄』の緊張感を象徴する入替戦は、東京六大学野球にはない熾烈な生存競争を選手たちに課す。この試練こそ東都の真髄であり、著者のオマージュとして、名勝負の息づかいが読者に余すことなく伝わる。

その厳しさの中で鍛えられた選手たちは、令和のいまもプロの舞台でまばゆいばかりの輝きを放っている。

昨日、倉敷で行われた阪神対DeNA戦では、牧秀悟(DeNA、中央大)と森下翔太(阪神、中央大)が、それぞれのチームの中軸として堂々たる存在感を示していた。とりわけ牧は、侍ジャパンの常連として、日本野球の未来を担う一人に数えられる存在だ。

牧は、東都の厳しさによって才能を開花させた一人だ。今年、4月4日付日刊スポーツの記事は、牧の成長の軌跡を鮮やかに伝えている。

松本第一高校から中央大学入学時まで、牧は全国的には無名の存在だった。しかし、亜細亜大の頓宮裕真(現オリックス)や立正大の伊藤裕希也、小郷裕哉(両現楽天)の圧倒的な活躍を目の当たりにし、その殻を突き破った。

「こんな人たちがプロに行くんだろうな。それに比べたら(自分は)やばい。このままじゃ人生終わる」と焦った。その焦りこそが、成長の原動力になった。

東都リーグの苛烈な環境は、無名の若者を鍛え上げる「熾烈な生存競争」の舞台でもある。牧の軌跡は、この環境が持つ鍛錬の力を如実に物語る。牧や森下のようなスターたちがNPBで眩い輝きを放つのは、東都の試練を乗り越えた揺るぎない意志が礎となっている。

本書『死闘!激突!東都大学野球』は、こうした選手たちの成長と東都リーグの魂を生き生きと描き出しており、先の牧の成長の記述は、まさに本書の核心と一致している。

本書は、野球の記録を言葉で残すとはどういうことかを考える上でも、得がたい手本となる。スポーツライターを志す人にも一読の価値がある。

その理由は、著者・久保田龍雄氏の真摯で純粋な大学野球への眼差しと、彼が1981年に創刊した『東都スポーツ』その存在に宿る。上述したように六大学野球の注目の中で、久保田氏は東都の現場に足を運び、選手たちの努力や葛藤、競技の厳しさと魅力を丁寧に記録した。

単なる勝敗を超え、人間の姿を静かに描き出したその筆は、名も無き実力者や名勝負を後世に伝え、スポーツライティングの本質を体現している。

今では「名勝負」と語られる試合も、久保田氏と『東都スポーツ』の積み重ねがなければ埋もれていたかもしれない。記録を通して記憶を残し、次世代へと引き継ぐその営みは、本書の核心をなす。紆余曲折を経ながらも続くその歩みに、静かな意義を感じる。