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INDY WORLD外伝       【銀子覚醒編】 5

【縁側2】
夕暮れ
縁側では、銀子が庭を眺めながら、大きなため息をついている。

はあーっ、あかんかった

銀子
「はあーっ……。手応え、あったんやけどなあ」
隣には、丸くなったインデイ。
インデイ
「何回目や。空気が薄なるで」
銀子
「そやかて、何の返事もないし……」
インデイ
「来てくれただけ、ましや…」
その時、門の方で声がする。
郵便局員
「書留です。INDY ENGLISH ACADEMY方、横一銀子様」


私です、銀子です!

銀子が飛び上がる。
銀子
「はい! 私です!」
受け取る。
差出人は、横一銀行 広報室。

インデイ
「なんや。ここを住所にしたんか」
銀子
「家やと、お父さんに先に見られるかもしれんやろ」

銀子は封筒を光に透かしてみる。
銀子
「……えらい薄!
テンション、だだ下がりや。
インデイ、開けてや」
インデイ
「何言うてんねん。自分で開け。
だいたい犬は、そういう細かい作業は苦手なんや」
銀子
「ビーフジャーキーの袋は、器用に開けるくせに」
インデイ
「あれは生命維持活動や」

銀子は覚悟を決め、封を切る。
便箋を広げ、読み始める。

【オファー】
横一銀行 広報室
横一銀子 様

拝啓
先日は、「横浜お笑い座」旗揚げ公演にご招待いただき、誠にありがとうございました。

当行から観劇いたしました者より、舞台と客席が一体となった、大変心あたたまる公演であったとの報告を受けております。

また、今後の事業構想につきましても、熱意あふれるご提案をお寄せいただき、重ねて御礼申し上げます。
行内において慎重に検討を重ねましたが、現時点では前例がなく、事業全体の将来像を十分に見通すことが難しいことから、誠に遺憾ではございますが、本件へのスポンサー協力は見送らせていただくこととなりました。

ご期待に沿えない結果となりましたことを、心よりお詫び申し上げます」

前例がないんやと。厳しなあ

銀子の表情が曇る。

銀子
「……やっぱり、あかんかった」
インデイは何も言わず、手紙の続きを鼻先で示す。

「続きや」
銀子は、2枚目を開こうとする。
するとその時、
小さな紙片が、床に落ちた。
拾い上げるとそれは、
総務部長 岡崎和郎の名刺だった。


岡崎部長?

そこには手書きのメモ。
「横浜お笑い座の件、
個人的にもう少し話を聞かせてください。
前例がないなら、作りましょう」


もう一度手紙へ目を落とす。
「しかしながら――
私どもは、銀子様のお手紙を読み進め、また、公演に込められた思いに触れるうち..に、一つの確信を持つに至りました。

私どもが心を動かされたのは、企画書そのものだけではありません。
その企画を考え、自ら行動に移された、銀子様のお人柄です。
地域の未来を真剣に考え、多くの人々を巻き込みながら、新しい価値を生み出そうとする熱意。

その姿勢は、当行が長年大切にしてきた「地域とともに歩む」という理念にも、深く通じるものでした。

そこで、一つお願いがございます。

えっ!えーっ?

銀子様は現在、大学四年生とのことですが、すでにご就職先はお決まりでしょうか。
もし、まだお決まりでなければ、ぜひ銀子様を、当行広報室へお迎えしたいと考えております。

銀行の仕事は、お金を扱うことだけではありません。
地域の人々と夢をつなぎ、新しい価値を育てていくことも、私たちの大切な使命です。
銀子様の熱意と行動力で、私たちと一緒に、横浜の未来を作っていただけませんか。
一度、正式にお話しする機会をいただけましたら幸いです。

敬具

株式会社 横一銀行
広報室

【明日へ】
銀子は、手紙を持ったまま動かない。
インデイ
「どないした。スポンサーは、あかんかったんか?」
銀子
「……うん」
インデイ
「そら、残念やったな」
銀子
「代わりにな……」
インデイ
「代わりに?」
銀子
「うちを、雇いたいって」
インデイ
「ほう」
銀子
「ほう、やないで!
どうしよ、インデイ」
インデイ
「自分の名前で、真正面からぶつかった
結果や。
あとは、自分で決めなはれ」

銀子は、もう一度名刺を見る。
封筒に書かれた宛名。

横一銀子様。

以前なら、人に見られたくなかった
自分の名前。
銀子は、その文字を指でそっとなぞる。
銀子
「……悪くない名前かもしれんな」
インデイ
「今ごろ気づいたんか」
銀子
「そう……かもね」

縁側に、銀子の笑い声が響く。
夕暮れの横浜。

街に、一つ、また一つと明かりがともっていく。

銀子は、手紙を胸に抱く。

ずっと隠してきた名前が、初めて未来への扉を開いた。


明日へ、行って来ます!


行くんや、銀子。

fin


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

銀子は、自分の名前に向き合い、明日へ、未来へ踏み出しました。

INDYWORLDは、続きます。
また、お目にかかりましょう。

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