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INDY WORLD外伝       【銀子覚醒編】 2

【作戦会議】
インデイ
「ところで、わてに相談があるんと違うんか?」
銀子
「インデイに言うと、話がややこしくなるので結構です」
インデイ
「なんや。やっぱり相談するなら、イケメンの方がええんか」
銀子
「違います!」
皆が一斉に笑う。
ミキ
「銀子ちゃん。その笑いのセンス、ACADEMYに貸してくれへん?」
銀子
「えっ。何でですか?」
ミキ
「実はね、このところ、英語以前にね、自分をうまく外へ出せないっていうんかな……。不登校の子どもたちも、ここで預かるようになったのよ」
インデイ
「そや。みんな、わてを慕って集まってきてな」
ミキ
「インデイは黙っとって。もう、アレックスのとこにでも行っとれ!」
インデイ
「おお、こわ……」
インデイはビーフジャーキーをくわえたまま、奥へ引っ込む。
ミキ
「それで、私も病院を辞めて、こっちを本格的に手伝うようになったんやけど……。
とにかく、子どもたちを笑わせたいんよ。
笑っている間だけでも、肩の力を抜いてほしゅうて。
自分は自分でええんだって」
あかり
「銀子ちゃん、やってみたら?」
ハルト
「僕も応援するよ」
ミキ
「どう?
……ところで銀子ちゃん、今、何年生やったっけ?」
銀子
「大学四年です」
ミキ
「そうなん。そしたら、就活で忙しいんやろ?」
銀子
「いえ……違うんです。
私、就活は全然出遅れてて。正直、もう半分諦めてたんです」
銀子はうつむき、それから顔を上げた。

みんな、ありがとう

銀子
「でも、何か一つ、やり遂げたいんです。
さすがに、お笑いだけで食べていくのは難しいし。
だけど最近、思うんです。
お笑いって、面白いことや、おかしなことを言うから笑ってもらえるんやない。
本人は大真面目で、一生懸命で――むしろ一生懸命すぎるから、周りと少しずれてしまう。
その姿を見て、人は笑うんやと思います」
ミキ
「それ、ドラマ・メソッドそのものやね」
奥の方から声が飛んでくる。
インデイ
「今、何ぞ言うたか?」
ミキ
「こっちの話!」
銀子
「だから、私が一方的に子どもたちを笑わせるんやなくて、一緒に舞台に立って、一緒に演じられたらいいなって思うんです」
ハルト
「いいじゃないか。
一つのことを最後までやり遂げた経験は、卒論よりずっと強いよ。
事情が許すなら、チャレンジしてみたら。就職は逃げないよ」
銀子
「……はい」
ハルト
「僕だって、大学四年間では何も形にできなかった。
ずいぶん時間もかかったし、アルバイトもいろいろ経験したよ」
あかり
「そうよ。この人、こう見えて結構苦労人なの」
あかりは、親しげにハルトの腕を取る。
銀子の目が、その腕に一瞬止まった。

銀子
「……そうや。
それなら、私が手伝ってる『横浜お笑い座』の演目に、子どもたちを加えてもらえないかな」
ミキ
「『お笑い座』って、かなり本格的なところやろ? 子どもたちにはレベルが高すぎへん?」
銀子
「そうなんですけど。
でも実は、オーナーが、このところ経営がかなり厳しいって話してて……。
何か新しい話題や、新しいお客さんにつながる企画が欲しいとも言ってました」
そこへ、少し前に帰宅し、話を聞いていたタロウが口を挟む。
タロウ
「経営か……。結局、お金が必要なんだな。
うちにも、そんな余裕はないし……」
少し考えた後、タロウは銀子を見つめる。
タロウ
「そうだ。銀子ちゃん。
その名前のネームバリューを使って、横一銀行にスポンサーになってもらう、というのはどうかな?」
銀子
「ネームバリューって、絶対、意味違いますよ(笑)」
タロウ
「そこは、口のうまい――いや、交渉術に長けたインデイ提督の出番だよ」
アレックス(声)「ほら、あなたお呼びよ。しっかりね」
奥から、インデイがゆっくり顔を出す。
インデイ(もったいぶって)
「なんや。こんな時だけ、わてを頼るんか」
そう言いながらも、尻尾は得意げに揺れていた。

【銀子覚醒】
夕空の下。
縁側には、銀子とインデイが並んで座っている。
銀子
「でも……何から始めたらええんやろ」
インデイ
「…………」
銀子
「何か言ってよ」
インデイ
「…………」
銀子はビーフジャーキーを取り出し、インデイの鼻先をつつく。
銀子
「つん、つんつん……」
インデイ
「やめんか!わてを、ただの食いしん坊な犬やと思うとるんか!」
銀子
「その通りやん」
インデイ
「ハックシュン!……まず、自分が何をしたいかや、クシュン!」
銀子
「そやから、横一銀行にスポンサーになってもらいたいんや」
インデイ
(くしゃみが止まって)「ふー、それは、あちらさんが決めることや」
銀子
「えっ?」
インデイ
「ええか、銀子。
人を動かそうとして、『こうしてください』『ああしてください』と頼むだけでは、相手は動かん」
銀子
「ほな、どうするん?」
インデイ
「向こうが自ら動きたくなる――そのきっかけを作るんや」
銀子
「きっかけ……?」
インデイ
「人は、何をきっかけに動く?」
銀子
「それ、聞いたことある。
※生理的欲求、安全の欲求、社会的欲求……あと、何やったっけ?」
インデイ
「よう覚えとったな。
その上に、承認されたいという欲求と、自己実現がある。
横一銀行さんがよう言う『地域のために』いう言葉も、社会から認められたい、地域と共に何かを成し遂げたい、いう思いからや」
銀子
「もうちょっと、分かりやすく言うて」
インデイ
「感動や」
銀子
「感動?」
インデイ
「人でも企業でも同じや。
ほんまに心を動かされたら、損得を越えて、自分も役に立ちたい、誰かを応援したい。自分もその輪に入りたい、となる」
銀子
「……何となく、分かってきた気がする」
インデイ
「銀子。お前は、今、相当有利な場所に立っとるんやで。
『横浜お笑い座』いう、感動を届けられる舞台が、すでにある。
考えることは、横一銀行に何をしてもらうかやない。
子どもらと一緒に、そこで何を演じたいかや」
銀子
「そやね……!」
インデイ
「小難しい企画書や趣意書は、そのあとでええ。
心を動かす中身がなければ、立派な紙を何枚並べても、ただの紙や」
銀子
「うん、うん……なんか、見えてきた!」
銀子は立ち上がり、庭の向こうに広がる夕空を見つめる。


なんか、わかってきた気がする


銀子
「私な、お笑いではないんやけど……ずっと、やってみたかった芝居があるんや」
インデイ
「ほう」
銀子
「子どもたちとなら、できるかもしれん」
インデイは、ようやくビーフジャーキーに口を伸ばす。
インデイ
「ほな、話はそこからや」
※「マズローの欲求5段階説」より

続く


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
銀子編は、全5回となります。

どうぞ続けてお読みください。
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#ENGLISHACADEMY   

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