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INDYWORLD 外伝       【真美子編】  4 取材報告その2          

ACT 1 【願掛け】
真美子「……あっ、おみくじ!」
言う出すなり、私はおみくじに駆け寄ってしまった。インデイ先生には話していないが、今、私には大きな悩みがある。そう、祐介のことだ。とにかく彼にはがんばって、今年こそは合格してもらいたい。そうでなければ、結婚に進めない気がする。
仕事を理由に、今日もこんなに楽しい思いをさせてもらえるなんて、私は運が良い。この幸運が祐介にも届いて欲しい。」

インデイ「真美子さん、ちよっと待って!浅草寺のおみくじは「凶」
が多いので有名……。あー行っちゃった。(あのテンションの高さは……。)これは、相当フォローが要りそうだな。」

真美子「フー、良し。私は運がいいんだ。」おみくじの箱を勢い良く振る真美子。
「南無!」出てきた棒にはくっきりと『一番』の文字。
「やったー!
これで、番号の引出しを開けるのね」
恐る々、手に取る。目が開けられない、「えい!」

何これ!うそっ!!

……『き、凶!』

「……待ち人来たらず。…失せ物見つからず。学業成り難し………。」

真美子「何これ?何これ?いやいやいや、見てない、見てない。そんな!違う、違う。そうだ。私は仕事で来てるんだった。」(インデイの方をそっと振り返る。インデイは、何やら近くの外国人と談笑している。
良かった…。見てないよね。)

真美子「お待たせしました、そろそろ、お昼ですね。」
インデイ「そうだね」
真美子「ランチは、経費OKです(笑)特別美味しいものがいいですね。」
インデイ「そう。じゃあ、思い切って『今膳』に行こう。この時間なら、限定のランチセットに、間に合うと思うよ。」

ACT 2 【I'm  here.】
真美子(「今膳」の前、動けない。インデイの背中を見つめて)「おみくじのこと、聞かないんですね。」
インデイ(背中のまま)「うん、」


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真美子「1分だけ、わがまま聞いてもらっていいですか?」
(振り向いたインデイの胸に飛び込む、小さく嗚咽)

インデイ「I'm here, OK I'm here with you.」

真美子「ごめんなさい、もう大丈夫です。私、全然記者失格ですね。」
インデイ「何で?」
真美子「こんな風に気持ちが、ぐらぐらしてたら、何も書けない…祐介のことだって…」

インデイ「そう思うんだ。でも人は食べなきゃね。食べながら、話そう。」

「浅草今膳」の暖簾をくぐる。

​​暖簾をくぐると、そこは外の喧騒が嘘のような静寂が広がっていた。

仲居さんに案内された席で、湯気を立てる「すき焼き昼膳」を前にしても、真美子の箸は重いままだ。
​インデイ 「……一番を引いたのは、ある意味すごいことだよ。浅草寺の凶は、今の自分に足りないものを教えてくれる『仏様からの宿題』だって言われてるんだ。」
​真美子「宿題……。私、祐介に『がんばって』って、そればかり言ってました。合格してくれないと、私たちの未来が始まらない気がして。でも、そう言えば言うほど、彼、私を避けるようになったんです。」
​インデイ(静かに) 「君も辛かったね。でも、祐介君も同じくらい君のことを大切に思ってる。だからこそ、君の重荷にはならないと決めてるんじゃないかな。そして、自分一人の力で、約束を守ろうとしてる。」
真美子「私は何をすれば良かったんですか?」
インデイ「僕の作品で、ミキとあかりちゃんの最初のところ、覚えてる?」
真美子「……確か、元気出してとか、かわいい絵を描いて、とか励ましてたところですね」
インデイ「そう、相手を主語にして励ますのが、you message, これだと、どうしても相手はプレッシャーを強く感じてしまう。」
真美子「反対に私の気持ちをそっと伝えるのが、I message 。」
インデイ「その通り、例えば、I'm  here. そばにいるよという安心感を与え続ける。その結果、相手は自分の内側から、前向きな気持ちが沸いてくる。」
​真美子(思わず箸を止めて)「……私、ずっと彼を励ますつもりで、逆にプレッシャーを与えていたんですね。私の『幸運』を押し付けようとしていた……。」

インデイ「冷めちゃうよ。」

真美子「『早く食べなさい』、じゃなくて、私自身に、
『早く食べなきゃ』と気付かせるんですね(笑)。」
インデイ「そう、真美子さんには、食べ物ネタが効果的だね。」
真美子「私、そんなに食いしん坊じゃありません(笑)!」
インデイ「その調子」

ACT 3【ちいさいおうち】
インデイ「そろそろ、いい時間だね。」
浅草の街並みに沿って駐車場に戻る。
真美子「あっ、人力車。」
インデイ「タクシーもいいけど、ゆっくり観光するにはもってこいだよ。」
真美子「今度ぜひ…」
インデイ「それは、祐介君に取っておこうよ。僕もたまには奥様サービスしないと。」
真美子「もー!」

インデイ「時間まだ、大丈夫だね。もう一ヶ所だけ寄りたいところがあるんだ。」
真美子「どこですか?」
インデイ「それは、着いてからのお楽しみ。」
出発する。
田丸町交差点。
真美子「ここ、今朝の田丸町ですよね。さすがの私もペンギンのパンまだ残ってますよ。」
インデイ「いや、今度は違うところ。それにこの時間だとペンギンのパンはもう、買えないよ。
国際通りを渡ればすぐだから、歩こう。」
一本裏の道を歩く二人。

!!!

2~3分も歩くと、目の前に黄色い屋根のケーキショップ。『洋菓子ちいさいおうち』
真美子「ここって………… 
(息を飲む真美子)!!」
黄色のかわいい屋根、大きな窓、
清潔で、少し古びた佇まい。絵本から飛び出してきたような外観。
インデイ「さあ、入って。テイクアウト専門だけど、中もすてきだよ。」
店主(かわいいおばあちゃん)「いらっしゃいませ」
インデイ「ご無沙汰してます。」
店主「あら、今日はかわいい方をお連れですね。」
インデイ「そうですよね、ハハハ(汗)」
真美子「インデイ先生、色々お忙しいんですね。でも、こんなにすてきなところ、本当にありがとうございます。」
インデイ「まあ、いいから、いいから。何にする?お薦めは、レモンパイだけど。レモンの酸味と甘いメレンゲが最高だよ。」
店主「ごめんなさい、レモンパイは、あと一つなの。」
インデイ「さすがに、人気ですね。それならアールグレイとレモンパイで。」
店主「ありがとうございます。近くのカフェに持ち込みもできますよ。」
インデイ「今回は、テイクアウトで。」
スタッフ「お持ち帰り時間は、どのくらいですか?」
インデイ「2時間くらいかな」
スタッフ「ありがとうございます」
(丁寧につつむ)
真美子(あわてて名刺を出しながら)「私、横浜の「Hamakaze」という雑誌の記者なんです。写真を撮っても構いませんか?」
店主「横浜からわざわざ。外見だけでしたら構いませんよ」
真美子「何だか絵本に出て来るおうちに、招かれたみたいです。」
店主「まあ、そう言ってもらえるなんて、うれしいですねえ。」
インデイ「彼女若いけど優秀なんです。すてきな記事を書いてくれますよ。」
店主「それは、楽しみなこと。」

LAST ACT  【再会】
「ちいさいおうち」を後にして、帰途に着くインデイと真美子。
真美子「先生、今日はありがとうございました。」
インデイ(運転しながら)「僕も楽しかったよ。」
真美子「でも、私まだ、ちゃんとお話ししてなくて、聞いてもらえますか?」
インデイ「インタビュアーが、逆だなあ、でも構わないよ。」
真美子「お昼に『今膳』で教えてもらった
「I message 」のこと。実は先生の作品を読んで、知ってるつもりだったんです。」
インデイ「うん、そうなんだ」
真美子「でも、私いつも、突っ走っちゃって、失敗するんです。一言多いって。」
インデイ「それ、職業病じゃないかな。興味のあること、面白いと思えることに食らいついていく。そして、言葉として発信する力。祐介君もわかってるよ。」
真美子「そうなんですけど、もう少し、自分を客観視したいんです。」
インデイ「どうして?」
真美子「今までは、自分の思うままに、記事を書いたり、言葉を発信してきましたが、先生、言ってくれたじゃないですか、相手を思う気持ちが大切だって。」
インデイ「そうだったね。でも、相手を思うということは、自分を出さない、ということではないんだよ。」
真美子「少し難しいです。何か分かりやすい例えとかありませんか?」
インデイ「それじゃあ、水泳の教え方の例で説明するね。」
真美子「水泳…YECAですね。そう言えば、先生はどこで教えてたんですか?」
インデイ「横浜YECAといって市内のいくつかのセンターだったけど…」
真美子「横浜YECAって、あの横浜公園の近くの?」
インデイ「うん、そこにも何年かいたな。」
真美子「……私、今思い出したんですけど。」
インデイ「何を?」
真美子「小学生の時、何回かサマープログラムで、水泳習いに行ったことがあるんです。確か3年生の時、「トビウオ」というワッペンをもらいました。」
インデイ「小3でトビウオなら優秀だよ。」
真美子「その時のリーダーが優しくて、でもちょっとドジな人で、確か……『インデイリーダー』って呼んでました!」
インデイ「それって……」(声がつまる)
真美子「先生はYECAで、インデイというニックネームだったんですよね。」
インデイ「インデイは僕だけだよ」
真美子「じゃあ、やっぱりインデイリーダーなんですね。」
インデイ「どうもそのようだね。」

真美子「うれしい!私、ずっと会いたかったんです……。(そっと呼んでみる)……インデイリーダー。
……さっきの水泳の例で教えてくれますか?」
インデイ「そこは、忘れていないんだね。」
真美子「はい、優秀な記者ですから(笑)」
インデイ「何かプライベートな話題だったはずだけど、まあいいか(笑)」
真美子「お願いします、リーダー。」
インデイ「じゃあ、簡単にね。水泳の呼吸の仕方で、「ブクブク、パー」って覚えてる?」
真美子「何だか赤ちゃんみたい」
インデイ「これ、実はすごく大切で、ブクブクはわかるよね、息を出すこと、パーは、これがちょっと誤解しやすい。」
真美子「どういうことですか?」
インデイ「パーって、声を出すことではないんだ。ブクブクと息を吐ききった後、口をパッと空けると、吸おうとしなくても、空気が肺に自然に入る。これがパーの本当の意味。」
真美子「なるほど」
インデイ「潜る前は、空気をたくさん吸っておこうと思うよね。」
真美子「はい、そうです。」
インデイ「人間関係の法則に"give  & take"って、あるよね。」
真美子「なんだか、わかってきました。吸う、つまりtakeよりも……。」
インデイ「そう、大学でも習ったんじゃないかな?」
真美子「与うるは受くるより幸いなり」
インデイ「そうだよ、祐介君にも、読者の皆さんにもね。」


真美子「決めました。私、インデイ先生と、バージンロード歩きます!
いいよね、天国のお父さん。」

fin.

YOKOHAMA

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