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星のなかのビューティフル・スケーティングⅡ ―隼の一瞬―

2026年3月9日(月)
宮城セキスイハイムスーパーアリーナは、観客席を夜空に見立て、ファンが満天の星の一つになって輝く空間になっていた。白、水色、青、黄緑、黄、橙、赤、紫、色とりどりに。

無良崇人のジャンプには、いつも一瞬の華やぎが宿っている。
notte stellata 2026で、思い出になっていた姿をあらためて目に焼き付ける。
 
わずかに揺らぎある軸で回るようなジャンプは、その速さから膨らみを帯びて大きくみえる。しかし、回転が最高点に達した瞬間、軸はまっすぐに定まり、矢のように氷に向かって降りていく。それは隼(はやぶさ)のストゥープ※の一瞬が宿ったようなジャンプなのだ。
ジャンプのたびに現れるその一瞬が、観客の視線を捉え、無良崇人=ダイナミックなジャンプという印象をつくってきたと思う。曲線美が求められるフィギュアスケートの中で、その荒々しさはジャンプのなかで説得力をもっていて、降下の技術的洗練さが個性を際立たせてきた。
 
『帰ろう』の曲調の高まりに合わせて滑りを進めると、胸元から差し出す両手には逞しさも乗ってゆき、おおらかな雰囲気が広がっていった。

氷上から語りかけられるような時間。

藤井風『帰ろう』の歌には、現実から離脱しようとするかのような「あなた」と「わたし」がいる。人生を積み重ねてきた分だけ背負うようになった荷物の重さに、どうも疲れているようで、嫌なことを忘れようとしてみたり、吹き飛ばそうとしてみたり、どうでもいいと歌う。終わりを考えているような言葉にどきっとして、この離脱がどんな場面で、どこに帰ろうと歌われているのか、不安になって聞き入るも、日常がふわっと立ち上がる温かみのある聞き心地よいテンポが続いていく。歌われる「わたし」は、わたしなのかとはっとしたり、言葉にいちいち頷いてしまったりする。
『帰ろう』がつくりだす束の間の離脱は、今日に戻り、やっぱり自分は現実のなかで毎日が続いていくのだと確認する。

2018年3月に競技を終えて8年になる。《SHOGUN》(2012年)、《オペラ座の怪人》(2014、2017年)のフリースケーティングが蘇る。notte stellata 2026に、無良崇人の臙脂の色が映えるシンプルな姿と変わらないダイナミックなジャンプがあった。
 
notte stellata 2026   
2026年3月9日(開催は7~9日)
会場:宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
無良崇人
音楽:『帰ろう』作詞・作曲:藤井風『HELP EVER HURT NEVER』、2020年

※ストゥープ:急降下

お読みいただき、うれしいです。ありがとうございました。


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