ドイツの湖文化
暑い!!
ドイツに住んでいた当時だったら、こんな暑い日には、迷うことなく湖へ行っていた。
なぜ湖か?
そして湖で何をするのか??
ドイツには「湖文化」とも言える湖の楽しみ方がある。ということで、今回はドイツの湖文化について。
「ここは山があるし、湖もあるし」
さて、僕がこれまで住んだことのあるドイツの2ヶ所のうち、1ヶ所はとりわけ自然が豊かな地方だった。
そこに住んでいる人たちは、地元の話になると必ず言う。
「ここは素晴らしいよね~。山はあるし、湖もあるし」
僕が住み始めた最初の頃は、なんでみんな判で押したように同じようなことを言うのかが理解できなかった。
山があるのは分かったけど、なぜそこを特筆するのか?
さらに、湖があることが、なぜ良いことなのか??
で、実際に住んでみて分かった。
山も湖も、とにかく素晴らしい。
「湖文化」
では、湖でどんな楽しみ方をするのか、みていこう。
(1) 湖で泳ぐ
日本でも湖で泳ぐこともあるけれど、やっぱり海に囲まれた島国日本で泳ぐといえば、海の方がメインなのでは。
でもドイツのこの地域は、海がとても遠い。飛行機での旅行がここまで安価に普及する前までは、みなさん泳ぐといえば湖だった。
「湖で泳ぐって汚くないの?」って思われるかもしれない。でも、そこは環境を大事にするドイツ人。充分泳ぐ気になれるような、きれいな水が確保されている。
湖にはビーチがいくつかあって、だいたい芝生が敷き詰められている。あと、桟橋が湖面に張り出していることも多い。


暑い季節になると、みんな街から30分とか1時間くらい車を走らせて、湖のビーチへやってくる。
そこにパラソルを立てて敷物を敷いたり、ビーチベッドを持ち込んだり。準備が整ったら、子どもはガッツリと泳いだり、飛び込んだり。大人はのんびりと山や湖を眺めながらリラックスした時間を過ごしたり、体が熱くなってきたら湖に入って軽く泳いだり。ビアガーデンかオープンカフェに入って、木陰でビールを飲んだり、アイスクリームを食べたり。

安価にとても質の高い時間が過ごせる。
(2) 湖で全裸
僕が知っているビーチ付きの湖のうち半分以上には、あまり人目につかない場所に、FKKと呼ばれる全裸専用エリアがある。
さすがにFKKの写真はありません。
(3) 湖で乗る
カヌーに乗ったり、ボートに乗ったり。



なお、リラックスできる豊かな時間を過ごす場所には、大きな音を出す乗り物は無用とされている。湖ではだいたいエンジン付きの乗り物は禁止されているので、ボートといっても、太陽光発電のバッテリー駆動によって湖面をスルスルと滑るように走る。
または、スタンドアップパドル(SUP)に乗ったり。
【補足】 SUPについて
日本でもSUPはメジャーな様子。サップって発音されているのかな。ドイツで周りの人たちは、ドイツ語読みでズップと呼んでいた。
僕も同僚に強く勧められてSUPを買って、湖でSUP遊びをするようになった。

SUPとは、形はサーフィンとボートの中間のような板状の乗り物。分厚いビニール製で、中に空気をパンパンに入れて、大人1人あたり一艘を使う(子どもは二人で一艘をシェアすることも)。湖や川へ浮かべて、その上に立つか座って、櫓(パドル)で漕いで進む。漕ぎ方は簡単なので、10分も使えば慣れてきて、自由に操縦できるようになる。
SUPを漕ぐこと自体は、まあそんなに特別楽しいわけではない。人気が高い理由は、漕ぐことではなく、ボートよりも遊び方のバリエーションが広い点。
SUPでどうやって遊ぶかといえば、
① 湖面で停泊
湖で沖へ漕いでいって、適当なところでSUPを止める。そこから湖の中に降りて、泳ぐ。泳ぎ疲れたり寒くなったりしたら、またSUPへよじ登って、ボードの上で体を休めたり太陽で温める。そうこうしているうちに、また暑くなったらまた湖の中に入って泳ぐ。(ボートの場合は、湖で泳いでから再び乗り込むことが困難なので、これができない)
もしくは、静かな沖合でボードの上で座ったり寝転んだりして、のんびりしたりヨガをする。静かな湖面の上で過ごす静寂の時間は、格別。

② 湖探索
湖の周囲をぐるっと漕いで一周するとか。とにかく湖の美しい景色と静かな雰囲気を堪能する。リラックス & アドベンチャーな感じ。


③島へ上陸
湖の中にある島へSUPで上陸して、人のいない島でのんびりする。

文章ではなかなか良さが伝わりにくいけれど・・・、まあ要は、自然と一体化した感じで湖を満喫できるのが特徴。↓ SUPに乗りながら撮影した動画。
公共財としての自然
こういった湖は、社会の公共財として位置づけられている。何度か書いているように、ドイツ人たちは自分たちの国をお金で幸せを買う国にしたくないと思っている。だから、人にとっての幸せを感じる基本的で重要な要素、たとえば豊かな自然とか、こころ安らぐ穏やかな時間は、だれであっても等しく享受できる社会にしたいと思っている。
もし、それ以上の何かを求めたい人がいれば・・・たとえば速い車でブンブン走りまわりたいだとか、高級なレストランで食べ歩きをしたい、といった人については、それは高給を稼ぐことができる職業に就いて、自分でお金を稼いで手に入れればよい。
でもそういったお金のかかる活動は、人間というものの性質からして、必ずしもベーシックな幸せ要素には入らない、と彼ら/彼女らは思っている。それよりも豊かな自然とか、人とのつながりとか、穏やかな時間を過ごすことの方が、人間の性質(ヒューマンネイチャー)にとっては大事だよね、と。
という思想があるから、自然あふれる湖についても、誰でも非常に安価に経験することができる。ビーチは無料で入れるか、せいぜい数百円。前も書いたように、例えば僕の気に入っている湖は、むかし貴族だったドイツ人ファミリーが所有しているけれども、公共財産と位置付けて、人々がタダ同然で遊べるように多くのエリアを開放している。
僕の週末の過ごし方
今のような夏の時期、僕のお決まりだった週末の過ごし方は、土曜日の朝起きて、家族で朝ごはんを食べて、ゆっくりとコーヒーを飲んで。そこから家族と一緒に車で40分くらいのところにある、上記のむかし貴族だったドイツ人ファミリーが所有している湖へ行く。
お昼前くらいから、持参したSUPに乗ったり、泳いだり、ビーチでのんびりしたり。16時くらいに「さあボチボチ帰るか」と支度をはじめると、まだまだ明るい17時過ぎくらいには家に帰っている。
そこから近所のビアガーデンへ行くか、家のベランダでドイツビールを飲みながら、カラッとした空気の中で21時くらいまで明るい夕方を楽しむ。(そして翌日の日曜日には一人で登山へ・・・)
特別な労力をかけることなく、大金も払うことなく、こういう豊かな時間を過ごすことができるというのは、どれだけ豊かな社会なんだろうと、こういう社会を築きあげてくれているドイツ人たちに、いつも心から感謝していた。
ただ、こういった社会を支えるために、税金は日本と比較にならないほど高いけど。

ひとことコメント
如何だったでしょうか、知っているようで知らない、ドイツの文化。今回は湖文化。
僕はこの地方に住んでいた時に、山や湖も含めてこういった自然の中へ何回くらい行ったのだろうか、とフト思い立って、数えてみたことがあった。
数えてみたら、合計で170回。家族だけで行くときもあれば、友人家族と一緒に行ったり。登山については、どちらかといえば一人で登ることが多かった。
ちなみに「自然の中へ170回」の内訳は、
登山を90回
湖や川でSUPを40回
川沿いのサイクリングへ30回
山へそり滑りに10回
これだけたくさん自然の中へ行ったにも関わらず、アジアの人に会ったことは殆ど皆無。一度、日本人の登山会のグループと山の中で出くわしたくらいかなぁ。
それだけに、アジア人の僕が山や湖で遊んでいると、ドイツ人たちが嬉しそうに満面の笑顔で話しかけてくれる。「お!アジア人のお前も、この素晴らしい自然を楽しむ心を持っているのか!本当に素晴らしい自然だよな!!」と。
僕はこの豊かな自然を前に、「人と同じものをみて感動し、その感動を人と共有する」ことって、人の心を満たす素晴らしい経験なんだ、と学んだ。たとえそれが通りがかりの知らない人であっても。
ちなみに、ドイツに住んでいる日本人であっても、意外とこういった文化があることを知らずに、自分には関係のないことだと思って経験しない人も多い様子。
実際、ドイツに3年間駐在して日本へ帰っていった知り合いの日本人が言っていた。
「なんか聞くところによると、ドイツ人って沼で泳ぐらしいんですよね。海が遠いからって。僕ですか?僕は沼なんかで泳がないですよ。病気になりたくないですから。僕は日本人だから、衛生観念のないドイツ人たちとはメンタリティーが違います」
でも、そんな彼が見たこともない「沼」で遊ぶことも、そんなに悪くないと思うんだけどなぁ・・・。

by 世界の人に聞いてみた
