ドイツのクリスマス文化①、お菓子や飲み物
今週末の日曜日は、「アドベント」と呼ばれるクリスマス期間の始まり(*ドイツに住んでいます)。
その日からクリスマスに向けての4週間は、街のドイツ人たちはクリスマスムード一色に染まる。例えば、お菓子を作って友達や会社で振舞ったり、街なかでグリューワイン(スパイス入りのホットワイン)を飲みながらおしゃべりに興じたり、クリスマスの飾りを家や会社で飾ってみたり、クリスマス時期に家族が集まる相談をしたり。街が浮足立つ時期。
でも残念ながら、昨年も今年もヨーロッパの多くの都市でクリスマスマーケットが中止になってしまった。特にクリスマスマーケットのメッカであるドイツとオーストリアの感染状況が悪化していて、昨年に続いて今年もクリスマスらしさは薄らいでいる。
ただ、クリスマスマーケットは分かりやすいイベントではあるものの、それはドイツの豊かなクリスマス文化のごく一部。ドイツでは長い年月にわたって、日本人にはまだ十分に知られていないけれども、豊かで奥の深いクリスマス文化が営々と育まれてきた。だから、家庭や友達を中心にいろんなことが行われている。
そこで、今後何回かに分けて、ドイツの豊かなクリスマス文化を整理して投稿してみる。
【クリスマス時期のお菓子など】
まずは、クリスマス時期の典型的なお菓子について。男性にはあまり興味がない話題かも知れないし、僕も全然興味はなかったけど、それでも毎年食べ続けていると、何年も経ってからようやく興味が湧いてきた。
書いてあることをざっくりまとめると、ドイツにはクリスマスの代表的なお菓子が4種類ほどある。南部でメジャーなプレツヒェンとレープクーヘン、東部発祥のシュトレン、西部でメジャーなシュペクラチウス。
いずれも寒い季節に食べるもの。だから、シナモンなどの香辛料や保存食のドライフルーツが入っていて、その香りが特徴的。
プレツヒェン

この時期は、多くのドイツ人女性が大量の小麦粉やら砂糖やら香辛料を買い込んで、家でクッキーを作る。友達に配ったり、会社に持ってきて振舞ったり。
この写真は、同僚による手作りのプレッツヒェン(小さいクッキー)。一見すると、それぞれが適当な形の自己流クッキーのようにみえても、実は形や材料等が決まっていて、一つ一つに固有の名前がついている。
この時期のドイツは日本よりもずっと冷え込むから、体を温めるためにシナモンなどの香辛料が入っている。毎年この季節にシナモンの匂いを嗅ぐと、冬が来たという気持ちになる。このクッキーはドイツ南部とオーストリアで特にメジャー。
レープクーヘン

レープクーヘンは、比較的南部のニュルンベルクという都市が発祥。シナモンなどの香辛料、はちみつ、ナッツ類が小麦粉の生地に練りこまれていて、上にチョコレートがかかっている。
なぜこのお菓子がニュルンベルクで有名かというと、この街は商業の都で、世界各地からあらゆる商品が入り込んでくる。だから世界各地で採れる香辛料やチョコレートが使われるこのお菓子が名物になった。ニュルンベルクは今でも、大規模な見本市やクリスマスマーケットが開かれる商業の街として有名。
シュトレン

左側がシュトレン。ドイツ東部のドレスデン発祥。レーズンなどのドライフルーツや、アーモンド、クルミなどが入ったフルーツケーキのようなもの。通常は上から粉砂糖がまぶされている。正式名称は「クリストシュトレン」(キリストのシュトレン)。
シュペクラチウス

シュペクラチウスは、風車の形をしていることから想像できるように、元々はオランダ発祥。だから、オランダに近いドイツ西部のデュッセルドルフではクリスマス時期のお菓子の定番。やはり、シナモン、白胡椒、生姜などの香辛料が入っている。
レープクーヘンとシュトレンの缶

上がニュルンベルクで有名なお店のレープクーヘンの缶。
下がドレスデンシュトレンの缶。ドレスデンの中心部広場の絵が描かれているものが多い。
クルミなどナッツ類

クリスマス時期にはよく食卓に置かれている。クルミはドイツでも取れることに加え、マカダミアナッツやカシューナッツなどのナッツ類は、昔は「外国のエキゾチックで高価な食べ物」というイメージがあったために、クリスマス時期の「特別な雰囲気」を醸し出すのに使われたらしい。
実際、会社で開催されたクリスマスパーティーへ行ったら、食後はみんなでワインやビールを飲みつつ、クルミを割りながら延々とつまんで食べていた。
あとクリスマスの時期には、バレエ定番演目の「くるみ割り人形」が上演され、クリスマスマーケットでもくるみ割り人形が売られている。
【クリスマス時期の飲み物】
次は飲み物について。
この時期の定番は、大人はグリューワイン(Glühwein)。基本は赤ワインに香辛料(シナモン、オレンジの皮、クローブ等)や砂糖を加えて、温めたもの。
子どもはキンダープンシュ(Kinderpunsch)。ブドウなど果実ジュースをベースに、グリューワインと同様に香辛料や砂糖を加えて温めたもの。プンシュとは、いわゆる「パンチ」や「ポンチ」のこと。
他にも、アイアープンシュ(Eierpunsch)というカスタードのような味の卵酒などもある。
グリューワインは、家で自家製のものを作って飲む人もいるし、友達や家族とクリスマスマーケットへ行って飲むケースも多い。例えば、クリスマスマーケットへ行ってお店を見ていると、だんだん体が冷えてくる。そうなるとグリューワイン屋さんに行って、マグカップに入ったものを買う。
通常、お店の周りにはスタンドみたいな立ち飲み場所があるから、そこでみんなでお喋りしながら飲んで温まる。アルコール・香辛料など体が温まるものを飲まないと、寒くて外に長時間いられない。
味については、香辛料の調合次第で味が変わるから、お店によってかなり違っている。そして結構クセがあって、僕は普通のワインをそのまま飲む方がおいしいと思う。
でもドイツ人にとっては、あの香辛料の独特の匂いや風味が、クリスマスマーケットの楽しい思い出とセットになって心に埋め込まれているはず。だから味の良し悪しの問題ではなく、自分の人生の大事な一部なんだと思う。
グリューワイン屋さん
クリスマスマーケットに出店しているグリューワイン屋さん

スーパーの飲み物
スーパーに並んでいる市販のグリューワインとキンダープンシュ

キンダープンシュ
会社で振舞われたキンダープンシュ。この鍋は会社の備品で、グリューワインやキンダープンシュをつくる、またはミュンヘン名物の白ソーセージを茹でる、といった用途で使われる。

マグカップ
グリューワインやキンダープンシュのマグカップ。お店によってカップのテイストが全然違う。デポジット制なので、500円程度を払えば持って帰ることもできる。

クリスマスマーケットでグリューワインを飲む人たち

【ひと言コメント】
この時期のドイツは、空気が冷たくて湿気が多い。その独特の空気感の中で、香辛料の匂いが漂う中で楽しむクリスマスマーケット。
または、オイルヒーターのよく効いた温かい屋内で、家族や友人たちと食べるシナモンたっぷりのクッキー。
ドイツへ来た当初は、そういった感覚が分かったような分からないような、どこかピンとこなかった。
でも毎年毎年そうやって同じようなことを繰り返し経験していくと、冬になるとそれらの経験が恋しくなってくる。特に、匂いや空気感は、人の記憶と密接に絡み合っている。ドイツ人たちは、子どもの頃から毎年繰り返し何回も何回もそういった経験を経ているから、やっぱりクリスマスは特別に心に埋め込まれている「幸せの象徴」の一つになっていると思う。
by 世界の人に聞いてみた
