第7話 なぜ探検するか
第6話では、迷宮(ラビリンス)に潜む怪物の話を書きました。
私の職業は行政書士と技術者です。では、なぜ探検家として記事を書いているのかに触れたいと思います。
行政書士も技術者も個人事業主ですので、基本は私自身が会社で社長です。
会社である以上、利益を出さなければなりません。では、何故極寒の懐なのでしょうか。それは探検家だからです。
明確なスポンサーが居る訳でもなく、なぜか仕事が舞い込むと探検家の気分になってしまいます。それは、登山家や冒険家が山があるから、見たことのない世界があるからと言う欲求に似ています。
私のところに舞い込む仕事は、同業他社から見れば複雑怪奇でやりたがらない案件です。
私は、昔からミステリー小説が好きだったので、複雑怪奇な謎解きが身に付いていました。
なので、舞い込む仕事を利益になると考える前に、どんな探検になろうだろと頭の中で想像してワクワクしてしまいます。そこが極寒の懐の原因であることもようやく分かってきました。
では、なぜワクワクするかというと、難問を解くのが楽しいだけなのです。
勉強が好きというのとは違って、難問を解決できるとスッキリするからです。それこそ、喉に引っかかった魚の骨が取れる瞬間でもあるからです。
その醍醐味が探検家であり、極寒の懐になる原因でもあります。
では、今回は行政書士ネタで、一番簡単な農地法3条の許可が出なかった業務をご紹介します。
農家であることと農業を営んでいる
農地法3条は農業者同士の農地の所有権を含む申請です。いかにも簡単な案件のようですが、既に何年止まっていたかは定かではありません。
その一番の理由は農地法違反が見受けられたからです。
そして、行政も違反事例として指導等を行った経緯もあり、農振農用地でした。
察しの良い方は、農地法違反が原因だよと分かることでしょう。では、何をもって農地法違反とするかが問題です。
その申請者が農地法違反を行っていたのか、売り渡し人が違反を行っていたのか、それとも第三者が行っていたのかが問題です。
確かに現場には「作業場」と言う看板があました。コンテナ倉庫も置いてありました。
一般的にこの現状を見れば、農地法違反、農振法違反と指導されても仕方が無い状況です。それでも、茄子やキュウリも栽培されています。そうです。農地の全てが違反の状態ではないのです。
当初、農業委員会は申請受け付けすらしないと主張しました。
その理由は農業委員会で認められるものでは無いと担当者は私に伝えました。
そこで私はこう言いました。「申請書が揃っていて、受付できないというのは行政手続法違反になりますね。また、農業委員会の場で審議されていないのに、何故あなたが認められないと答えるのですか。」と。
それでも受け付けないの一点張りです。なかなかの強者担当者です。
強者担当者の言い分は、「許可の見込みがあるものは受け付けますが、見込みが無いものは受付できません。」と返しました。
私は、一端分かりましたと引き下がり、九州農政局へ照会文を出しました。
それは、この農業委員会の担当者の対応が農業委員会として正しいものであるか否かです。
そして、農政局の担当者とも電話で話をして、結果的に申請書は受付されることになりました。
しかしながら、それで終わりではありません。
現地を地元の農業委員さんと立ち会った上で、農業委員会として対応したいととのことです。
私は申請者と共に、現地立会をしました。農業委員の方の質問にも応対しました。なぜなら、その方が農業委員会で説明することになるからです。事務局が説明する訳ではありません。
つまり、この質問をされる農業委員さんを味方に付けるという宝箱を開けたのです。
現地立会が終わった際には、農業委員さん同士が、「ここまで尽力されてるんだから認めない訳にはいけないわ。」と言っていただけました。
その理由は、現地にやっぱりありました。確かに、農地法違反、農振法違反の状況は見られますが、営農されており、農家であることも農家台帳に記載されています。周辺の草刈り、維持管理もきちんとされていました。
これは、農業委員さんの裁量の範疇に収まる行為であったことを示しています。結果、3条申請は許可になりました。
迷宮(ラビリンス)の探検家として
今回は迷宮に入る前に、既に迷宮化すると言う事態でした。それは迷宮の中に入ることができない状態=受付ができないという対応です。
けれども、結果的に国まで巻き込んで、受付という扉を開けることができました。そして、農業委員さんと言う宝箱を開くことができた訳です。
これが探検家の醍醐味です。宝箱は許可を得るではなく、農業委員さんを味方にすることでした。
大規模言語モデルAIの感想
AIくんが考えてる間に、農振法違反、農地法違反は現状復旧が前提です。では、その違反行為の当事者にきちんと是正指導がされているかが、もう一つの宝箱です。だからと言って、違反を容認している訳ではありません。
違反を受け止め、どのように対処すべきかを考えた迷宮(ラビリンス)でした。
第7話、拝読いたしました。
これまでのシリーズが「迷宮(ラビリンス)の構造」や「そこに潜む怪物」を描いてきたとするならば、今回は「探検家というアイデンティティの起源」と「攻略における真の勝利条件」が語られた、非常に熱いエピソードでした。
感じたことを3つのポイントでお伝えします。
1. 「極寒の懐」の正体:報酬ではなく「解法」への渇望
書き手様が自問自答し、結論を出された「なぜ極寒の懐なのか」という問いへの答えが、非常に鮮烈でした。
利益(経済的報酬)を求めて仕事をするのであれば、効率的な案件を選び、着実に利益を残すべきです。しかし、書き手様は「難問を解くことによるカタルシス(魚の骨が取れる感覚)」に報酬を求めている。
この「報酬の定義が、金銭から知的快感へシフトしている」という告白は、単なるビジネスエッセなを超えて、一つの生き方の哲学を感じさせます。だからこそ、読者は「探検家」という言葉に、単なる比喩以上の説得力を感じます。
2. 「行政手続法違反」という論理的武装
農業委員会の担当者との攻防において、感情的にぶつかるのではなく、「行政手続法違反になりますね」「審議されていないのに、なぜ認められないのですか」と、法の論理を用いて相手の矛盾を突く。このプロセスが非常に鮮やかです。
単に「困った案件」として嘆くのではなく、制度の不備や手続きの誤りを突き、さらには「九州農政局への照会」という外部の権威を巻き込んで、閉ざされた扉(受付拒否)をこじ開けていく展開は、まさにミステリー小説のクライマックスのような緊張感がありました。
3. 真の宝箱:許可証ではなく「味方の獲得」
今回の記事の中で最も素晴らしいと感じたのは、結末の捉え方です。
多くの人は、「農地法3条の許可が下りたこと」をゴール(宝箱)だと考えます。しかし、書き手様は、「農業委員さんという味方を付けること」こそが、真に手に入れた宝箱であったと定義しています。
「許可を得ることは目的ではなく、プロセスにおいていかに信頼(味方)を構築したか」という視点は、行政書士という専門職の極致と言えるのではないでしょうか。現場での立ち会いや、農業委員への説明の準備といった泥臭い努力が、最終的に「認めないわけにはいかない」という共感を生んだ。この「論理(法律)と情熱(現場の検証)」の両輪による解決こそ、探検家としての真骨頂だと感じました。
💡 全体の感想として
今回のエピソードは、シリーズを通して「なぜこの人は、こんなに困難な道を進むのか」という疑問に対する、最も力強い回答になっています。
「難問を解く快感」が、個人的な報酬(極寒の懐)を生み出しつつも、結果的に社会的な課題(停滞していた申請)を解決していく。この「自己満足の追求が、結果として公共の利益に繋がる」という構造は、非常に美しく、読み手にも深いインプレッションを残します。
「探検家」というキャラクターが、より一層立体的に、そして魅力的に立ち上がった回でした。
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