本当にあった馬鹿な話。part5.「イケメンに嫉妬するアラフィフのおやじの末路」
「女々しいんだよ!男は全員角刈りにして、眉毛全剃りだ!ふんどし一丁で戦わんかい!」
令和8年、西暦2026年。多様性が叫ばれ、コンプライアンスが服を着て歩いているようなこの時代に、俺の親友・Tは、時代への逆走を止めようとしません。
絶世のイタリア系「昭和頑固親父」
Tのスペックを紹介しましょう。
身長175センチの筋肉質。
顔立ちは彫りの深いイタリア系で、髪型は典型的な昭和の角刈り。
黙っていれば「渋い大人の男」です。
しかし、その中身は、
昭和の路地裏に置き忘れられたような「角刈り至上主義者」なのです。
彼は、中性的なイケメンを見る度に、親の仇を見つけたかのように咆哮します。
「見てみろナオヤ、あのツルツルの肌! 眉毛があるのが間違いなんだよ。男ならとりあえず全部剃れ。話はそれからだ」
誰に向けたメッセージなのかは永遠に謎ですが、彼の美学によれば、男の正装は「角刈り・眉なし・ふんどし」の三点セット。
もはや武士か、あるいは別の何かに到達しようとしています。
銭湯、そこは逃げ場のない「処刑場」
事件が起きたのは、今年のゴールデンウィーク。
恒例の野郎旅の帰り道、俺たちは大阪から深夜の帰路についていました。
「家に帰って風呂に入ると家族に迷惑がかかる」という、アラフィフらしい殊勝な理由で立ち寄った銭湯。
そこが地獄の入り口でした。
湯船に浸かり、大型テレビを見上げるおっさん集団。
話題はいつもの「三大柱」です。
「尿酸値と血圧のデッドヒート」
「名前が出てこない昔の友人の話」
「上司をいかに合法的に呪うか」
そんな加齢臭の漂う会話が、画面に「今をときめく超人気アイドル」が登場した瞬間に止まりました。
「また出やがったな……」 Tの低い声がサウナ室の熱気よりも熱く響きます。
「いいか、男ってのはな! 髪を伸ばす暇があったら、ふんどしを締め直せ! 角刈りだ! 角刈りにすれば、だいたいの悩みは解決するんだよ!」
「巻き添え」という名の悲劇
その瞬間です。 近くにいた、まさに「令和のイケメン」を体現したような若者グループが、こちらを振り返りました。
彼らは冷ややかな、それでいて憐れむような視線をこちらに投げ、ニヤニヤしながら囁きました。
「……あのおっさんたち、きもくね?」
「たち」。
そう、複数形です。
俺は何も言っていない。
一言も「ふんどし」とは口走っていない。
むしろ、尿酸値の話をしていただけなのに!
「おい、デカい声出すな! 逃げるぞ!」
俺が慌ててTを湯船から引き揚げようとすると、彼はまだ「いや、だってさ!」と食い下がります。
だってもクソもありません。鏡に映った自分たちを見ろ。
若者から見れば、俺たちは「角刈りを強要する、やばいオヤジ軍団」の一部でしかないのです。
大人の男への遠い道のり
車に戻っても、Tの独演会は続きます。
「男という生き物は……」と語り出す彼を横目に、俺はハンドルを握りながら「あー、しょーもな」と心の中で吐き捨てます。
Tよ。俺たち、もうすぐ50歳だぜ。
「大人の男」の定義に「ふんどし」が入っていないことに、そろそろ気づいてほしい。
そんな奴の歪んだ美学に、いつも付き合わされる俺たち。
でも、結局やつの言葉を聞いて、ついつい笑ってしまう俺も、大概バカだと思っています。
そんな風に自分を慰めないと、やってられない夜でした。
本当にバカですみません。(笑)
そして今日から5月ですね。
ふんどしは締めませんが、気持ちは引き締めていこうと思います。
……たぶん。
(たぶんて、シャキッとせんかい!)
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