見出し画像

【突発速攻企画小説】ラストキス

今回の企画は、こちら。

30分でお題を書くというものでした。
お題は、『ラストキス』。
そのままのお題で書かせてもらいました。


 これでもうお別れ。
 出会ったばかりで、まだ名前さえも知らない中、ただ誰かを求めるためだけに登録した出会い系アプリで初めてマッチングした相手は、僕好みの男の人だった。
 初めましてと軽く挨拶をして、そのままお互いに流れのまま向かったホテルでキスのないSEXをすると、ベッドの上で彼に腕枕をされながら天井を見上げている。
 特に会話をするわけでもなく、お互いの鼓動だけが伝わってくる距離でじっと時間が過ぎるのを待つ。
 会う前に言われていた。
 一時間だけしか一緒にいられない。
 理由はわかっている。プロフィール欄に既婚者と書いてあったから。
 仕事帰りの疲れた体で、家族のもとへ帰る前のスキマ時間。その間だけの貴重な時間を今、僕はこうして彼と過ごしている。

「あの、もう会えませんか?」
「そうだね。同じ人とは関係を持たないことにしているから」
「今まで本気で好きになった人は?」
「いるよ。今でもその人だけを想ってる」
「僕は、その人の変わりにはなれない?」
「ごめんね。でも、とても素敵な夜だった」

 そう言って、頭を優しく撫でてくる。
 その優しくて大きな手が、すごく心地よくて、離れたくないと思ってしまう。
 初めて会ったばかりなのに、たった一度関係を持っただけなのに、名前さえも知らないのに、この温もりを感じていたいと思ってしまう。

「そろそろ時間だね。着替えよう」
「わかりました」

 聞き分けのいい子でいたいから、彼の言う通りベッドから出ると、お互いに身支度を整えていく。
 少しずつ終わりが近づいて、胸がちくりと痛むのに、それをどうにかする術はどこにもない。
 体には触れられた手の感触がまだ残っていて、手を伸ばせば届く距離にあなたはいるのに、その背中に抱きつくことも許されない関係。
 ねえ、どうすればこの関係を続けられるの?
 着替えをする筋肉質な素肌を見つめながらその背中に心の中で投げ掛けてみても、答えなんて返ってこないってわかっていた。

「じゃあ、ここでお別れだね」
「本当に、素敵な夜でした。今日はありがとうございます」
「こちらこそ、ありがとう」
「さようなら」
「さようなら」

 お互いに、背を向けて別々の方向へ向かって歩き出す。
 振り返りたいという気持ちをきつく押さえ込みながら、一歩一歩足を踏み出していると、突然腕を捕まれた。
 体を引き寄せられ、唇が重なる。
 一瞬の出来事だったけれど、唇にはまだ感触が残ったまま、僕はそこにそっと触れた。

 別れのキスは、きっと忘れることのない優しいキスだった。


こんな感じの仕上がりでも、大丈夫なのかな?
帰りの電車で書き始め、さきほど書き終わりました。
久々にストップウォッチ使って小説を書いたな。
こういうの意外と好きです。
いつも、ありがとうございます。

 

いいなと思ったら応援しよう!