CHIKARA #虹色創作部
波はゆるやかに寄せては返し、砂浜に白い泡を残していく
千佳は、裸足の足で砂を踏むたび「きゅっ」と小さな音がするのが面白くてたまらなかった
4歳の彼女は、こうしてお母さんと外に出て遊べる日は少ない
だから今日は、胸がはずんで、笑いが止まらない
「見て見て、おかあさん! おしろつくる!」
「うん、千佳。上手にできたら写真撮ろうね」
少しだけ母親と離れ、千佳は夢中で砂を積み上げていく
そのときだった。――足音。海辺には似つかわしくない、黒いスーツの男が二人、まっすぐに母へと近づいてきた
「……前からお断りしているじゃないですか」母の声が低くなる
「しかも尾行するなんて、どういうつもりですか」二人の男は冷たく言い返した
声の調子だけで、千佳にはお母さんがいじめられているようにしか見えなかった
胸がぎゅっと苦しくなる。「やめて……」小さな体から、しぼり出すように声が出た
「お母さんを、いじめないでーー!」叫びが空気を震わせた
次の瞬間、海がぐらりと揺らぎ、波が大きく立ち上がる
水しぶきが白い弧を描き、砂浜まで降りかかる
スーツの男たちは思わず後ずさった。「……娘にも、力が」驚きの表情が浮かぶ
千佳は泣きそうになりながら、お母さんの手を探した。「千佳……」母は驚きと戸惑いを隠せない
そのときだった
「やめないか」低く、しかし穏やかな声が響く
振り返ると、70はとうに越えているであろう老人が立っていた
背筋はまっすぐで、ただの老人には見えない
その瞳は、長い年月を生き抜いてきた知恵と優しさを宿していた
「また千佳ちゃんがびっくりしてしまうだろう」彼はスーツの男たちに諭すように言い、母の方へとゆっくり歩み寄る
「私たちは、ある目的であなたたちのような人を探しているのです」
「力は時に人を傷つけます。悪意ある者の手に渡ればなおさら……」
「だからこそ、それを阻止したい。話だけでも、聞いていただけませんか」
母は警戒心を解けずにいたが、老人のまなざしには敵意がなかった。「……話だけなら」小さくうなずく
すると老人はふと千佳に視線を向け、にこりと笑った
「千佳ちゃん、ソフトクリームは好きかい?」
「……すき!」
「よし。じゃあ、行こうか。あそこで私のお店をやっているんだ」
指差した先には、白い木の看板が見えた
波の音と同じリズムで揺れる、小さなカフェ
店の名は――「カフェ波の音」
潮風に混じって甘い香りがただよい、母と娘はその香りに導かれるように歩き出した
波はすっかり落ち着きを取り戻し、浜辺には何事もなかったかのような静けさが戻っていた――
終わり
こちらに参加させていただきました
ありがとうございます♪
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