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彫刻師 堀部ススム #毎週ショートショートnote

(本文520字)

ヴァイオリンの音色が流れ始める。
重厚なフォントのタイトルが、ゆっくりと浮かび上がった。

――『熱情陸地』

世の中の“情熱の人”に密着するドキュメンタリー番組だ。

ナレーションが低く語り出す。

「本日、私たちが密着するのは――
彫刻師、堀部ススム」

一人の男が黙々と木を削っている。

年齢は六十前後だろうか。
無精ひげに、静かな目。
どこにでもいそうで、どこか違う。

画面は、彼の仕事道具へと切り替わる。

大小さまざまなノミ。
年季の入った木槌。
磨き込まれた彫刻刀。

ナレーションが一つ一つ紹介していく。

しかし、ある道具の前で、声の調子が変わった。

カメラがゆっくり寄る。

テーブルの中央に置かれた、奇妙な道具。

ナレーションが少し熱を帯びる。

「そして、これが――
彼しか使いこなすことができないと言われる道具……

「木工用バント」

半年にわたる密着映像。
巨大な木像が完成していく過程。
寡黙に削り続ける堀部ススム。

ナレーションは彼の哲学を語り、
弟子が尊敬を語り、
完成した作品の前で観客が感動して涙する。

ヴァイオリンが高鳴り、番組は静かに終わった。

エンドロール。

私は、テレビを見つめたままつぶやいた。

「……で」

沈黙。

「あの道具、どうやって使うんだ?」

その謎だけが、最後まで残った


今回こちらに参加させていただきました
いつもありがとうございます😊
文字数は、、確認してから少し本文を変えたので
違うかもしれません😅


#毎週ショートショートnote
#木工用バント

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