【連載】らむの『今日の1曲』#08:計算し尽くされた技術の先に宿る情熱。
皆さん、こんにちは。星乃らむです。
第1回から紹介してきた、私の「音の履歴書」。これまでチェット・ベイカーやケイト・ブッシュなど、私のルーツを辿るような曲を紹介してきましたが、今日は少し視点を変えて、私の歌のあり方を根本から見つめ直させてくれた、あるアーティストを紹介します。
私の家族はみんな音楽が好きで、家の中にはいつも何かしらの旋律が流れていました。母は声楽家として活動しており、子どもの頃からその歌声や、母が選ぶクラシックや歌曲は、私にとって日常の空気のようなものでした。
そんな母が、ある時ふと「らむ、この人の呼吸を聴いてみなさい」と教えてくれたのが、サラ・オレインさんでした。
【今日の1曲】
The Final Time Traveler / サラ・オレイン(Album: SARAH, 2014)
※初出は1stアルバム『セレステ』(2012年)
2014年盤には羽生結弦選手のエキシビションで使用された「English ver.」が収録されています。
初めて彼女の歌声を聴いたとき、正直に言って、少しだけ怖くなりました。
3オクターブを超える音域、まるで精密な楽器のようにコントロールされたピッチ。専門的なことは分からなくても、聴いた瞬間に「あ、この人は身体の隅々まで楽器として使いこなしているんだ」と確信させる完璧な安定感があるんです。
特にこの『The Final Time Traveler』での、地声からファルセットへ滑らかに切り替わる瞬間は、〜まるで魔法を見ているかのよう。
母は「歌うことは、呼吸を音楽に変えることよ」とよく言います。サラさんの歌声には、身体という楽器の中に作られた音楽の通り道が、驚くほど透明に響いているように感じます。どんなに難しい音の跳躍も、最初からそこにその音があったかのように歌う。歌う対象を心から愛している人にしかできない表現かもしれません。
私自身は、どちらかというと不器用で、感情のままに歌をぶつけてしまうタイプです。それは私の個性だと思っていますが、サラさんの「計算し尽くされた技術の先に宿る情熱」を知るたび、歌うことの深さに背筋が伸びるような気がします。
「誰かの心を癒やすために、自分をどれだけ磨き上げられるか」。
今日、この曲を聴きながら、私は自分自身の「声」と改めて向き合っています。
皆さんは、自分の限界を軽々と超えていくような表現に出会ったとき、どんな風に心が動きますか?
