『紅蓮館の殺人』感想|伏線の気持ちよさと、ちょっとした“もやもや”の話
綾辻行人の「館シリーズ」が好きなんです。あの閉ざされた空間と、じわじわ積み上がっていく違和感。
だから『紅蓮館の殺人』を見つけたとき、「これは読まねば」と思いました。
実は、Kindle Unlimitedで『蒼海館の殺人』から読んでしまったんですが(笑)。
逆順で読んでもちゃんと面白かった。というか、むしろ構成の緻密さに感心しました。
「また雷か」と思った瞬間の伏線にゾクッとした
朝、巨大な落下音がして「また雷か」と登場人物たちが言うシーン。
そのときの私は「え、そんな天気の中で山火事って続いてるの?」とちょっと引っかかりました。
でも読み進めるうちにその違和感は消えていく。
──そして解決編で、あのシーンが意味を持って再登場したときの驚き。
「そういうことだったのか!」と、思わず一人でうなってしまいました。
伏線の張り方と回収の丁寧さ、この作品の一番の見どころだと思います。
サブタイトルの「消失まで…」には少し首をかしげた
一方で、サブタイトルの“消失まで……”の部分。
正直、あれはどのくらい必要だったんだろう?と思いました。
時間の経過を感じさせたい意図だったのかもしれませんが、
物語の中ではその流れがあまり装置として機能していない印象。
私は小説の中で「時間が経つ感覚」をつかむのが苦手だからかもしれませんが、
もう少し“その時間が何を意味するのか”が見えてもよかったなと感じました。
登場人物の名前がちょっと読みにくい…
登場人物の名前がどれも凝っていて、ちょっとラノベっぽいというか、
例えば「飛鳥井さん」……読んでて「なんて読むんだっけ?」となる瞬間がありました。
その中で、主人公が“田所くん”という普通の名前なのは少し不思議。
彼や葛城くんだけリアル寄りで、他のキャラとの距離感が微妙にズレてるような気もしました。
飛鳥井さんの行は、ちょっと重たかったかも
飛鳥井さんにまつわる行は、最後に“手を離す”シーンのための伏線だったのかなと思うけれど、
正直少し重たかった。
久我島が飛鳥井に敵意を持っていたようなのに、
それが物語の中でどう発揮されていたのかもやや掴みづらかったです。
とはいえ、脱出のくだりは本当に手に汗握った。
あそこは没入感がすごくて、一気に読んでしまいました。
全体としては大満足。だけどちょっと“コナン感”も(笑)
作品全体としては、とてもよくまとまっていて本当に面白かった。
伏線の回収が丁寧で、嘘や隠しごとにもきちんと意味がある。
ただ……事件が多すぎる(笑)。
「いや、そんな偶然ある?」と思わずツッコミを入れたくなる場面も。
まるで“館シリーズ×コナン”みたいな世界観でした。
でもそれも含めて、この作家さんの“誠実さ”を感じました。
ちゃんと仕掛けて、ちゃんと回収して、読者を裏切らない。
2作目から読んでしまったけど、次は最初から順番に読もうと思います。
まとめ
伏線の回収が美しい
サブタイトルの意味づけには少しもやもや
登場人物の名前やキャラ立ちは好みが分かれそう
でも、全体としては完成度の高い一冊
読後、「やっぱりこういう正統派ミステリっていいな」と思わせてくれる本でした。
同じように読んだ方がいたら、ぜひ“消失まで”の意味、どう感じたか教えてほしいです。
