ラジオ体操と蝉
夏が来れば思い出す。まだ息子たちが小学生だった頃のエピソードです。
学校が夏休みに入ると、近所の団地の自治会主催でラジオ体操が行われていました。団地の住人に限らず誰でも参加でき、子どもと一緒についてくる保護者やご年配の方など、やや大人の参加が多い朝の会でした。
私も自分が小学生の頃は、夏休みといえばラジオ体操だったので
なんだか懐かしくて、息子たちと一緒に参加していました。
夏の早朝、いつも集まる近所の面々と他愛のない井炉端会議をして帰る。それがこの時期限定の日課になっていました。
ある日、ラジオ体操を終えて帰ろうとした時、息子の同級生ママが何かを見つけて手招きしている。公園広場の隅のコンクリートの壁に蝉の幼虫がとまっていたのです。
しかも背中が割れて白い成虫が半分ほど出ている。まさに羽化の途中のようでした。
蝉の羽化は夕方から夜にかけてのはずが、こんな時間に?
何かの理由で朝までずれ込んでしまったのかわからないけど、こんな瞬間を見れる機会はまれなので、子どもたちは勿論、大人も興味津々で見守っていました。
時間をかけて成虫は完全に外に出てきましたが、全体的にまだ白い。羽が乾くまで時間がかかるので、飛び立つのは数時間は先になるだろうとのこと。
そのうち蝉の周りを囲んでいたギャラリーは次々と帰っていきました。
私達も一旦帰宅しましたが、どうしてもあの蝉のことが気になって仕方がありません。
「無事に蝉になれたのか、カラスに食べられていないだろうか・・・」
朝食を済ませたあと、どうしても見届けたいと再度、現場に向かった私と息子達。
広場に行くと、なんと先着がいました。さっき最後まで私たちと残って見守っていた同級生一家です。
しかもその場にレジャーシートを敷いて、朝食を持参して食べながら観察しているという状況(笑)
一旦帰って簡単なサンドイッチを作って戻ってきたとのこと。
その日はたまたま休日だったのか、父親と一緒にあとから戻ってきた男の子もいました。
朝のラジオ体操から始まり、同級生一家のピクニックにうちも含めた他家族が合流し、即席で蝉の観察会がおこなわれるという展開となりました。
今ほど連日の酷暑もなかったので、朝のうちは木陰ならまだ涼しかったように思います。
観察していた蝉は程なくして、徐々に乾いてきたのか完全に蝉の色(?)に変化していきました。
そして、とうとう飛んだ!と思ったら、なぜか同級生パパの背中にピタッと留まり、しばらく動かない。
人間に見守られて羽化したから、もはや警戒心がないのでは?
なんて話してる私たちの心配をよそに、そのあと無事に木の上の方へと飛び去っていきました。
短い期間だけれど、無事に生き切ってほしい。そこにいる皆でそう願ったことを思い出します。
そして時間外の羽化を最後まで見届けて、一同はなんだかよくわからない達成感に浸りつつ解散したのです。
普段、同じ学校に通っている顔見知りだけど、そこまで仲がよいわけではなく、この時だけたまたま居合わせたメンバーでした。
息子たちが自立した今となっては、こんなちょっとした夏の一コマの思い出が貴重な時間だったと思えます。
あの遠い夏、息子達と地域の友人と共有した時間は、もう二度と戻ってきませんからね。
私の子育ての1ページでもあり、忘れられない夏の思い出です。
