『あの時上履きを隠したのは僕です』と送ってきた男
癖強男その①です。
マッチングアプリの男性から、ある日突然こんなメッセージが届いたのです。
「あの時、上履きを隠したのは僕です。」
……え?
まず思った。
誰?
そして次に思った。
上履きって何?
私は人生で一度も、上履きを隠されたことなんてありません。
なのに、彼はまるで何年も前の秘密を打ち明けるように、その一文だけを送ってきたのです。
怖い。普通に怖い。
知り合い?ストーカー?え、私、身バレした?
でも同時に、なんかちょっと気になっちゃったんですよね。
その「気になる」が「怖い」に勝っちゃって。
気づいたら、返信してました。
「返信ありがとう!」って来た瞬間、
あ、やられた、と思いました。
完全に、してやられた感。悔しい。
でもちょっと面白い。
そこから、なんでか知らないけどどんどん仲良くなっていって。
連絡先交換して、電話までするようになって。
楽しかったんです、本当に。
あの頃の私、自分に全然自信持てなくて。
そんな時に彼が言うんです。
「そのままの凛が素敵だよ」
「可愛いんだから、もっと自信持ちなよ」
……これ、ズルいです。効きすぎる。
単純な女なので、もう普通に嬉しかったです。
初めて会う日は、緊張と楽しみが半分ずつで。
車に乗って、着いた先はまさかのホテル。
早い。展開、早すぎる。
自分でも笑っちゃいました。
でも。
部屋に入った瞬間、彼の第一声。
「靴、脱がないで」
……え?
本気で「え?」でした。頭真っ白。
理由を聞いて、もっと「え?」ってなりました。
彼、足の匂いが好きらしいんです。
野生の人間の香り。
え、じゃあ、あの上履きの話……
そういうこと!?
繋がった瞬間の衝撃、ちょっと忘れられないです。
しかも、事に及ぶとき、靴を顔に当てるんです。
びっくりしすぎて、逆に冷静になりました。
「あ、これはガチのやつだ」って。
私の足、彼の理想ほど匂わなかったみたいで
「もっと熟成させて」って言われてました。
……チーズか、私。
そんなある夏の日。
一日歩き回った後の靴の香り。
彼、めちゃくちゃ嬉しそうでした。
その顔、忘れられません。
多分あれが彼のハイライトだったと思います。
でも、そんな楽しい時間も長くは続かなくて。
彼が忙しくなって、連絡が減って。
気づいたら、いなくなってました。
寂しいような、でもちょっとホッとしたような。
不思議な気持ちでした。
正直、今思い返しても「なんだったんだあの人」と笑ってしまいます。
でも、一つだけ確かなことがあります。
彼はことあるごとに私を褒めてくれました。
否定されることもなかった。
あの頃の私は、自分にまったく自信がなかった。
だからこそ彼がくれた言葉の数々は、思っていた以上に心に残っています。
変な人でした。
本当に変な人でした。
でも、自分を少しだけ好きになれたきっかけをくれた人でもあります。
さて、次はどんな人が出てくるでしょうか。
お楽しみに。
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