借金300万円と引き換えに得たもの
私が社会人1年目の時の話をしたい。
学生時代に何気なく取った簿記の資格。その知識を少しは活かせるだろうと思って運よく入社できた大手事業会社で経理の仕事を任されていた。
数カ月が経ち、ようやく業務の流れにも慣れ始めた頃だった。
ある週次ミーティングが終わった直後、部長から呼び止められた。
「経理システムの導入が決まった。業務の可視化と改善策の立案を、コンサルティング会社と一緒に進めてほしい。」
理由としては、新人ながら経理業務を一通り経験していることに加え、新鮮な視点で課題を見つけられるだろうと見込まれたらしい。
正直、何をどうすればよいかまったく分からなかった。それでも、この場で首を縦に振らなければ、自分の居場所がなくなる——そんな直感もあり、「はい、やります」と答えた。
まさかそれが、後の人生を決定づける瞬間になるとは思いもしなかった。
プロジェクトのキックオフで紹介されたのは、コンサルティング会社の5人。マネージャー1人、シニアコンサルタント1人、そして若手コンサルタント3人。
私はこの時まで「コンサルティング会社」という存在を知らなかった。
だが、彼らの立ち居振る舞いを見た瞬間、自分たちの会社の人には纏えない、ただならぬ空気を感じた。
そして、プロジェクトが動き出すと、その印象は確信に変わった。
彼らは想像を超えて優秀で、そして真摯だった。
気がつけば、私は強く惹かれていた。「自分も、いつか彼らのようになりたい」と。
ただなんとなく職業を選んだ自分と違い、彼らは仕事に向き合う姿勢がまるで違った。
そこからの日々は、怒涛だった。どうすれば彼らに近づけるのか分からない。
ただ、知識を広げ、視点を増やすしかないと思い立ち、毎日のように本を買って読み漁った。
土日も祝日も関係なく、活字に取り憑かれたかのように読み続けた。クレジットカードの請求は毎月のように限度額を突破し、そのたびに枠を上げてもらった。(大手企業の安定収入と与信の強さに、当時は甘えていたのだ。)
やがて返済に追われるようになり、ついには消費者金融に手を伸ばした。
借入があまりにも容易だったため、勢いのまま三社から借り入れ、総額は300万円ほどに膨れ上がった。
そこで初めて危機感を覚え、本を買うペースは落としたものの、今度は返済に苦しむ日々が始まった。——その顛末はまた別の話としよう。
それでも振り返れば、この苦い経験の果てに私は今、コンサルタントとして働いている。
本をむさぼるように読み続けたことが直接の理由だったのか、借金という無謀な選択も含めた「過程」が自分をここまで連れてきたのかは分からない。だが、一つだけ確信していることがある。
——人生は、たった一度の出会いで変わる。あの日、あの場で出会ったコンサルタントたちへの憧れが、私にとっての決定的な分岐点だったのだ。
