決算ラッシュがやってくる——決算を旅する「見るべき場所」の決め方
【エールちゃんがこれまで学んできた決算の解説記事はこちら】
(エールちゃんがスマホを手に、なにやら真剣な表情で画面を見つめている)
エール:「コスモスちゃん、私ね、決算の読み方を一通り教えてもらって、PLで筋肉を見て、BSで骨格を見て、CFで血流を見るって武器も手に入れたじゃない? だからそろそろ、自分で決算ラッシュに飛び込んでみようと思ったんだよね!」
コスモス:「お、いいね。その意欲、すごく大事だよ」
エール:「でも、まずはどんな企業の決算があるのかなって思ってさ。ルーモ、来週あたり、どんな企業が決算を出すのかな?」
ルーモ:「はいはーい! まかせて! 来週はね、4月28日に93社、30日に114社もあるんだよ
えっとね、僕も知ってる有名なところだと……
信越化学工業、TDK、日立製作所、ソシオネクスト、東京エレクトロン……
それから……三菱電機、NEC、三菱重工業……
他にはね……オリエンタルランド、JR東海、日本航空……
で、商社もあったよ——三井物産、三菱商事、伊藤忠商事……
……あれ?NECって言ったっけ?」
エール:「……えっと、93社に114社?ちょっと待って、多すぎて頭がパンクしそう。どうしたらいいんだろう。コスモスちゃん、助けて」
コスモス:「ふふ、そうだね。初めての決算ラッシュでいきなり全部を見ようとしたら、誰だって溺れちゃうよ。ここはまず、大きく“投資テーマごと”に分けて考えてみるのはどうかな? 今、市場でとくに注目されているのは、AI半導体、防衛、インバウンド・観光、それに脱炭素・GX。この4つのテーマに分ければ、景色がずいぶん整理されて見えると思うよ」
エール:「テーマごとに分ける……。それならできそうかも。ルーモ、さっき言ってくれた企業を、もう一度その4つのテーマに分けて教えてくれない?」
ルーモ:「任せて! じゃあ、一気に分けちゃうよー!」
決算ラッシュ注目の4テーマ
ルーモがエールの視点でわかりやすいように、来週の主な発表企業を4つの投資テーマに分けてくれました。
🔶 AI・半導体
アドバンテスト、日立製作所、信越化学工業、TDK、ソシオネクスト、レーザーテック、東京エレクトロン
🔶 防衛
三菱電機、NEC、三菱重工業、川崎重工業
🔶 インバウンド・観光
オリエンタルランド、JR東海、東京メトロ、日本航空、ANAホールディングス
🔶 脱炭素・GX(資源・商社)
三井物産、三菱商事、伊藤忠商事、千代田化工建設
エール:「おお……! なんか、これでだいぶ見やすくなった気がする。ごちゃごちゃしてたのが、4つの引き出しに入った感じ。でも、コスモスちゃん。ここからが問題なんだよね。個別企業のPL・BS・CFっていう筋肉・骨格・血流の見方は、これまで教えてもらったからわかるんだけど、投資テーマごとに“どこ”から見たらいいのかがわからない」
コスモス:「いい質問だね、エールちゃん。決算書の読み方という“武器”を持っているなら、次は“見るべき場所”をテーマごとに決める段階なんだ。下を向いて数字を追うんじゃなくて、『このテーマはいま、相場の何を映し出しているのか』という景色を見るために、会社が出す数字を使うんだよ。じゃあ、AI半導体、防衛、観光、GXの4つについて、どんなところを見ればいいか一緒に考えてみようか」
テーマ別・ここを見ればいい
🔶 AI・半導体——「来期の見通し」がすべて
コスモス:「AI半導体はね、実は“今期の結果”よりも“来期の見通し”に一番注目が集まるんだ。半導体の製造装置やテスト装置をつくっている会社は、顧客である半導体メーカーが将来どれだけ設備投資をするかで業績が決まる。だから、アドバンテストや東京エレクトロンが『来期はこうなります』と示す数字こそが、AI投資がまだ続くのかどうかを占う最大のチェックポイントになるんだよ」
エール:「なるほど。半導体って、シリコンサイクルっていう“季節”があるから、今が暑い夏でも、この先どうなるかが一番気になるんだもんね」
コスモス:「その通り。もう一つ、地政学リスクの影響を見るという意味では、中国向けの売上比率がどう変化しているかも、補足のチェックポイントになる。輸出規制の影響が数字にどう出ているかがわかるからね」
🔶 防衛——「今の売上」より「これから入ってくる仕事」
コスモス:「防衛関連はね、今の売上や利益も大事だけど、“これから入ってくる仕事”のほうがヒントになることが多いんだ。企業は仕事を受注してから、何年もかけて売上を計上していくから、PLの筋肉(売上や利益)は後追いになる。これから筋肉がどう育つかを見るには、BSで見る“受注残高”という数字が参考になるよ」
エール:「なるほど。“未来の筋肉のタネ”みたいなものか。でも、本当にそれがお金になるまでは、途中で計画が変わったりしないのかな?」
コスモス:「いい視点だね。その途中経過を追いかけるなら、“進捗率”という数字もチェックしてみるといいかもしれない。長期契約が予定通りに消化されているかどうかを見ることで、受注残高がちゃんと売上に変わっていくスピードがわかってくる」
エール:「受注残高で“未来の筋肉”を見て、進捗率で“それが本当に動いてるか”を見るんだね。じゃあ、三菱重工や川崎重工を見るときは、PLよりも先にBSを見て、それから会社の説明を読めばいいんだね」
コスモス:「その通り。筋肉・骨格・血流の見方がちゃんと染みついている証拠だね」
🔶 インバウンド・観光——「数」よりも「質」を見る
コスモス:「次にインバウンド。ここは回復フェーズから、質の成長フェーズに変わる時期だよ。飛行機でも新幹線でもテーマパークでも、もう単純に“乗客・入園者が増えました”だけでは見えにくくなっている。一人あたりの単価、つまり“旅客単価”や“1人当たり売上高”といった数字のほうが、手がかりになることが多いんだ」
エール:「インバウンドって、これまでは“ドバッと来た!”ってニュースになりがちだったけど、これからは“どんな人が、どうお金を使ってるか”が大事になってくるんだね。観光の質を見るには、数よりも“単価”かあ。PLはトップラインだけじゃなくて、中身を分解して“筋肉の質”を見るのが大事だったもんね。たとえばオリエンタルランドなら入園者数×1人当たり売上、JR東海や航空会社なら旅客数×1人当たりの運輸収入ってことか」
コスモス:「すごいね、エールちゃん。もう自分で分解できるようになってる。そうやって分解するクセをつけると、ただの“好調です”というニュースの裏側が、ちゃんと数字で見えてくるようになるよ」
🔶 脱炭素・GX——「資源」と「非資源」を分けて見る
コスモス:「最後に、5月1日に並ぶ総合商社。資源高や円安の影響も大きいけれど、市場が長く注目しているのは、実は“非資源セグメントの利益率”の持続性なんだ。資源価格はいずれ変動するから、長く安心して投資できる会社かどうかは、食料や情報・金融といった非資源分野でどれだけ安定的に稼げているかが手がかりになることが多いんだ」
エール:「資源は“そのときの値段次第”だけど、非資源は“会社の本当の実力”ってことか。じゃあ、商社を見るときは、まず全体の利益を資源と非資源に分けて、非資源がちゃんと成長してるかを見るのが大事なんだね」
コスモス:「そう。そして、もう一つ。商社はとにかくキャッシュフローが豊かな業種だ。CF計算書の“血流”を見て、投資と株主還元のバランスがどうなっているかをチェックするのも、とてもいい見るべき場所になるよ」
エール:「筋肉(PL)だけじゃなくて、血流(CF)まで見るんだね。伊藤忠商事の非資源利益率と、三菱商事の株主還元。この2つ、私も来週ちゃんと数字を追いかけてみるね」
エールちゃんの「来週のチェックポイント」
エール:「なんか、わかってきたかも。私、持ってる武器(PL・BS・CF)を、ちゃんとこの見るべき場所に当てはめて考えられそうだよ」
AI半導体は、“来期の見通し”。
防衛は、“受注残高”と“進捗率”。
観光は、“単価”。
GX・商社は、“非資源利益率”と“血流”。
コスモス:「よく整理できてるね。その調子だよ」
ルーモ:「エールちゃん、すごい! じゃあさ、来週はその見るべき場所で決算を見てみようよ!」
エール:「うん! やってみる! 全部は無理でも、自分の決めた見るべき場所で見れば、ニュースの見え方も変わってきそうだよ」
コスモス:「そうだね。誰かが全部をわかっているわけじゃない。でも、“自分で決めた見るべき場所”を持っていると、同じ決算でも見える景色が変わってくる。じゃあ、来週はその視点を持って、実際に決算を見てきてごらん。そして、結果が出たらまた一緒に答え合わせをしよう」
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これからも一緒に、一歩ずつ学んでいきましょう。

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※本記事は投資の基礎知識を解説するものです。特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
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