ユーロビートと解体新書
最近、末っ子がSnow Manにハマったらしく、我が家では彼らの楽曲を耳にする機会が増えた。
その中でも、昨年から流行している「カリスマックス」はよく聴いたが、なぜ今どきのアイドルがユーロビートにパラパラなのだろう、と正直なところ少し疑問に思った。
しかし、若い頃から時代とともにさまざまなジャンルの音楽に触れてきたおじさん世代には、どこか懐かしさがあって、これはこれでなかなかいい。
そして、それが若い世代には目新しく、心に刺さったのであれば、世代を超えて楽しめる名作ということになるのだろう。
Snow Man、なかなかやるではないか。
メンバーは数人しか知らないけれど。
そこで、彼らの最近の楽曲をいくつか聴いてみると、まるで嵐を思わせる王道ポップスや、KinKi Kidsのような歌謡曲的バラード、LDH系のボーカル&ダンスミュージックまで、実に幅が広い。
しかも、それらが彼ら独自の味付けによって、今どきのアイドルが歌う洗練された楽曲として成立しているのだ。
さらに調べてみると、Snow Manの最新アルバムのタイトルは「温故知新」だという。
「温故知新」という言葉は、中国の古典「論語」の「為政篇」に由来する。
孔子が説いた「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る、以って師と為るべし(昔のことを大切にし、そこから新しい知識を得ることができれば、人を教える師となることができる)」という一節から生まれた言葉だ。
書道でもよく書いた、誰もが知る四字熟語である。
Snow Manの「温故知新」を意識して聴いたわけではなかったが、アルバムタイトルを知る前に耳にした数曲から感じた印象は、まさに彼らが楽曲に込めた意図や想いそのものだったのだろう。
それが自然と伝わってきた、ということなのだと思う。
流行の音楽について、常々私が感じていることがある。
最近のヒットチャートに入る楽曲は、どれも昔に比べて圧倒的にかっこいい。
グルーブ感とでも言うのだろうか。
細かく刻まれたビート、自在に変化するテンポ、何の音かわからないような打ち込みの電子音、再現が難しいのではと思うほどの超高速リズム。
裏拍にも歌詞が乗り、英語の発音はまるでネイティブのようだ。
一方で、私のようなおじさん世代にとっては、メロディが美しい昔ながらの歌謡曲や、ドラムとベースでしっかりと8ビートが刻まれ、ギターのキュルルルという間奏が入る、ベタなロックを聴くと本当に心地いい。
きっと、クラシック音楽やブルース、ジャズ、ハードロック、演歌など、私よりもさらに上の世代にとって馴染み深い音楽もあるだろう。
そうした過去から受け継がれてきた音楽に触れ、そこから何かを感じ、考えたうえで新しい音楽を生み出すミュージシャンこそが、あらゆる世代に受け入れられるトップスターになれるのではないだろうか。
やはり、最先端の流行だけをなぞるような取り組み方では、深みは出ないのかもしれない。
「故きを温ねて新しきを知る」。
すでに「故き」に足を踏み入れていると感じ始めている自分自身も、仕事においてこの精神を忘れてはいけないと思う。
平成、昭和、戦時中の医療、明治・大正の医療、そして江戸時代の医療。
振り返れば、どの時代にも医師がいて、その時代における最大限の知識と資源を駆使しながら、無情な自然現象である人体の問題と向き合ってきた。
そこには、時代が変わってもあまり変わらないであろう、人としての人生や、家族・友人への想いが込められていたはずだ。
それを何も知らずして、今の医療は成り立たないのではないかと思う。
最近、江戸時代に杉田玄白と前野良沢がオランダ語の「ターヘル・アナトミア」という解剖書を翻訳して作った「解体新書」の写し版を手に取って見る機会があった。
教科書で見たことのある表紙や解剖図が目の前にあり、強い感動を覚えた。
250年以上前の医師たちは、あの解剖図を見て人体に何を思ったのだろうか。
その当時の想いを少しでも理解できたなら。
そして、江戸から明治、大正、昭和、平成と医療業界に受け継がれてきた想いを知ることができたなら。
きっとこれから先の未来へ、新しい医療をより深みのあるものとして発展させていけるのではないかと思う。
まさしく「温故知新」だ。
自分もすでに古い部類に入るが、それでもなお「温故知新」を心がけ、今の時代に即した最新の医療を施し続けたいと思う。
話は変わるが、実は真ん中の子はSnow ManよりもSixTONESの方が好みらしい。
今度はそちらも聴いてみようと思う。
XのYOSHIKIとコラボした曲があるそうだ。
こちらも、おじさん世代に響きそうである。
