GMOフィナンシャルゲート法務部に学ぶ生成AIによる法務業務の効率化
こんにちは、株式会社コーポレートGPT代表取締役の照山浩由です。
「法務部門のAI・DX化は難しい」
そんな声をよく耳にします。たしかに、営業部門や開発部門と比べて、企業のコーポレート部門、特に法務部門では業務効率化やAI化、DX化は遅れがちと言われます。しかし、そのような中で組織的な生成AI利活用に向けて果敢に挑戦し、目覚ましい成果を上げた「GMOフィナンシャルゲート株式会社(以下GMOFG)法務部」の取り組みについて、ご紹介いたします。
生成AIが切り拓く法務の未来 - 課題と可能性
従来の法務業務は、契約書審査、法令調査、コンプライアンス対応など、複雑かつ高度な専門知識を必要とする業務が多く、担当者は常に膨大な業務量と時間的制約に追われています。 しかも一つ一つの業務に慎重な判断が求められます。その一方で、業務の専門性ゆえに業務プロセスが属人化し、担当者の経験や知識に依存する部分が大きいため、業務品質のばらつきや、担当者交代時の引継ぎの難しさも課題となっています。
膨大な業務量と慢性的な時間不足
業務の属人化による品質のばらつき
ナレッジ継承の困難さ

GMOFG法務部の挑戦:生成AI導入の詳細 - 3つの段階で成功へ
このような課題を解決するため、GMOFG法務部は、生成AI導入にあたって非常に戦略的なアプローチを採用しました。そのアプローチとは、以下の3つの段階で構成されています。
⑴ 契約審査業務の全工程可視化と標準化
「生成AIに何をやらせるか」
まず最初にこの重要な問いを立て、これを明確にするために契約審査業務の全工程を可視化し、思考プロセスを標準化することから始めました。具体的には:
契約審査業務を74の工程に分解
各工程の業務内容を詳細に定義
各工程の標準的な判断基準の確立
というものです。

⑵ 各工程の要件定義、AI利活用可能性の分析
次に、可視化された各工程について「どのような意味を持ち、何をすれば次の工程に進めることができるのか」という要件定義(業務内容・クリア水準)を行いました。この過程で:
メンバー間の業務認識の統一
属人的業務からの脱却
生成AI利活用の可能性の特定
を実現しました。この段階で、生成AI利活用に関わらず、法務組織における契約審査業務そのものについて、組織業務として相当程度のレベルに達したといえるでしょう。

⑶ 生成AI適用プロンプトの検討
最後に、生成AI利活用が効果的と判断された工程について、具体的なプロンプト(生成AIへの指示)を設計しました。ここでのポイントは:
各工程の要件に基づいた具体的な指示の作成
期待する出力の明確化
品質チェックの基準設定と検証

これにより、なぜこの工程でこのプロンプトを打つことが正しいのか?生成AIの成果物に対するチェックをどのような基準で行えばよいかが明確になりました。
GMOFG法務部では、これらの3つの段階を着実に進めることで、組織的な生成AI利活用に向けて確実な成果を上げることができました。
生成AI導入成功の秘訣:業務可視化と要件定義 - 具体的な成果と可視化の重要性
このように、生成AI導入を成功させるためには、単に技術的な側面を理解するだけでなく、業務プロセスの可視化と要件定義を徹底することが極めて重要です。 GMOFG法務部の事例では、この点が特に重視されており、研修を通じて徹底した業務可視化と要件定義が行われました。
その結果、以下の3つの具体的な成果が得られました。
アウトプットの品質向上
経験の浅い担当者による業務のやり直しや手戻りが減少し、工数あたり最低でも20%の業務改善がなされました。業務時間の短縮
組織全体の契約審査にかかる全時間が最低でも20%削減されました。長期的なビジョンと戦略
契約審査工程の可視化と生成AIの利活用を並行して行うことで、生成AI導入に伴うリスク(法的リスク、データプライバシーなど)に対するリテラシーが組織的に強化され、リスク回避を徹底しつつ業務効率化と品質向上を両立する体制が整えられました。
業務プロセス可視化の図(例)

全社的な生成AI導入に向けて:GMOFGの取り組みから学ぶ - 課題と解決策
GMOFG法務部では、いち早く生成AIの可能性に着目し、業務効率化と組織力向上を目的とした生成AI導入を実施しました。 その結果、
① 契約審査業務における業務時間の短縮
② 組織業務品質の向上
③ 組織全体のAIリテラシー向上とナレッジマネジメント基盤の構築
など、目覚ましい成果を上げています。 本事例は、生成AIが法務業務に革新的な変化をもたらす具体的でかつ、多くの企業にとって参考になる重要な事例です。

展望:コーポレート部門からの企業全体へ
今回はGMOFG法務部の取り組みについてご紹介いたしました。今後は法務部以外の領域への生成AI利活用の拡大も検討されています。その際、全社導入に向けて企業として取り組むべき課題は次のとおりです。
方針の明確化
: 企業社内の生成AI利用方針を明確にする。セキュリティ
: 厳格なアクセス制御とデータ保護。社内ルール策定
: コンプライアンス(法令遵守)を含む利用ガイドラインを策定。データガバナンス
: データ品質管理とプライバシー保護を徹底、データポリシー策定。人材のAI教育
: 継続的なトレーニングプログラム実施による専門知識の向上。モニタリング
: 定期的なモニタリングと効果測定に基づく運用ルールの改善。情報収集と導入検討
: 生成AIの急速な技術進歩への迅速な情報収集、業務導入検討。

まとめ:変革は可能である
「法務部門のAI・DX化は難しい」
冒頭の言葉に戻りますと、GMOFG法務部の事例は、この固定観念が必ずしも正しくないことを証明しています。確かに、慎重な準備と戦略的なアプローチは必要です。しかし、それらを適切に行えば、法務部門はじめコーポレート部門全体でも確実にAI化を実現できるのです。
生成AIは、今後も進化を続け、法務部を始めコーポレート部門全体の業務の効率化、高度化に貢献していくことが期待されます。GMOFG法務部の事例を参考に、コーポレート部門への生成AI導入を検討する際のヒントとして、
徹底的な業務可視化
段階的なアプローチ
組織全体での取り組み
が重要となります。この過程で、コーポレート部門の本来の業務であるリスクマネジメントについてもAI時代に適応し、より業務価値の高い業務へシフトすることができるのです。
*本記事は、GMOFG法務部の取り組みをベースに、生成AI導入による業務改革の可能性について考察したものです。生成AI導入にあたっては、各組織の特性や状況に応じた適切な検討が必要です。
