「毎日1%の努力」をどう伝える?社員の心を動かす説明の工夫
「毎日1%の努力を積み重ねると、1年後には大きな差になる」
社員教育や社内研修などで、こうした話を伝えたことがある経営者や管理職の方も多いのではないでしょうか。
しかし、どれほど良い内容であっても、一方的に説明するだけでは、社員の心に残らないことがあります。
大切なのは、何を伝えるかだけではありません。相手の理解度や人数、その場の状況に合わせて、伝え方を工夫することです。
今回は、「1.01の365乗」という有名な話をクライアント先の社員に伝えた際の事例をもとに、質問の順番や資料の見せ方を変えながら、社員の参加意識を高める説明の工夫について考えます。
毎日1%の積み重ねが1年後に生む大きな差
先日、クライアントさんとの打ち合わせで、社員の皆さんに次のクイズを出しました。
「1の365乗はいくらになるでしょうか?」
1を365回掛けても、答えは1です。
1×1×1×1×……=1
これは簡単ですね。
では、次の問題です。
「1.01の365乗はいくらになるでしょうか?」
1.01×1.01×1.01×1.01×……=?
すぐに計算するのは難しいかもしれませんが、答えは約37.8です。
続いて、もう一つ質問しました。
「0.99の365乗はいくらになるでしょうか?」
0.99×0.99×0.99×0.99×……=?
こちらの答えは約0.03です。
つまり、毎日1%ずつ努力を積み重ねる場合と、毎日1%ずつサボる場合とでは、1年後に大きな差が生まれることになります。
もちろん、実際の仕事や人生が、この計算式どおりに進むわけではありません。
それでも、この数字は、毎日の小さな行動が長い目で見ると大きな違いを生むことを、分かりやすく表しています。
有名な話でも相手が知っているとは限らない
「1.01の365乗」の話は、既にご存じの方も多いかもしれません。
しかし、今回お話ししたクライアント先の社員の方々は、ご存じなかったようです。説明を終えると、「すごく良い話を聞けました」と、たいへん喜んでいただきました。
自分が知っている話だからといって、相手も知っているとは限りません。また、既に聞いたことがある話でも、誰から、どのような状況で、どのように聞くかによって、受け止め方は変わります。
大切なのは、有名な話を紹介することではありません。その話を通して、伝えたいメッセージを相手に届けることです。
参加人数に合わせて説明の進め方を変える
今回の説明に使う簡単な資料は、あらかじめパワーポイントで用意していました。それぞれの計算式と答えが分かるスライドを準備していたのです。
ただし、何を、どのような順番で説明するかについては、その場で決めました。その理由は、当日の参加人数です。
役員の方を除いて、5名の社員さんが参加されていました。そこで、次のような順番で、一人ずつ質問していきました。
「1×1は?」
「1×1×1は?」
「1の365乗は?」
「1.01の365乗は?」
「0.99の365乗は?」
ちょうど質問が5つあり、社員さんも5名でした。そこで、全員に一度ずつ回答していただくことにしたのです。
少なくとも最初の3問は、皆さんが正解できる問題です。その後、徐々に難しい質問へ移っていきます。
ただし、後半の質問に正解してもらうことが目的ではありません。最後に「これだけ大きな差が生まれる」という結論を伝えるための、いわばネタ振りです。
全員に一度ずつ回答してもらうことで、話を聞くだけではなく、その場に参加しているという意識も高まります。
一方的に説明するより質問した方が伝わる
経営者や上司が社員に何かを伝える際、つい最初から結論を説明してしまうことがあります。
「毎日少しずつでも改善することが大切です」
結論としては間違っていません。
しかし、結論だけを一方的に伝えても、相手には「またいつもの話か」と受け流されてしまう可能性があります。
そこで有効なのが、質問を使って相手を話の中に巻き込むことです。
最初に簡単な質問へ答えてもらえば、相手は自然と次の質問にも意識を向けます。そして、最後に予想外の数字を示せば、驚きや納得が生まれ、メッセージが記憶に残りやすくなります。
社員教育や社内研修では、正しい内容を説明するだけでは十分ではありません。社員が自分で考え、話の内容を自分事として受け止められるようにすることが大切です。
質問は、そのための有効な方法の一つです。
相手に分かる言葉へ置き換える
伝え方を工夫する際には、言葉の選び方も重要です。
例えば、いきなり、「1の365乗はいくらですか?」と聞いても、「365乗」という言葉に馴染みがない人には、質問の意味が伝わらないかもしれません。
そのような場合は、「1を365回掛けると、いくらになりますか?」と言い換えた方が、相手は理解しやすくなります。
話している本人にとっては当たり前の言葉でも、相手にとっては分かりにくいことがあります。
相手が理解できないのは、知識や能力が不足しているからとは限りません。伝える側が、相手の分かる言葉に置き換えていないことが原因の場合もあります。
専門用語を使うことよりも、相手が頭の中でイメージできる言葉を選ぶことが大切です。
視覚的な資料で理解を助ける
口頭で質問するだけでなく、目で見て分かるようにすることも、伝わりやすさを高めます。
例えば、ホワイトボードに計算式を書きながら質問すれば、耳だけでなく目からも情報が入ります。
今回は、打ち合わせ場所にホワイトボードがないことが、あらかじめ分かっていました。そこで、パワーポイントで簡単な資料を作り、パソコンの画面を見せながら説明しました。
資料は、必ずしも立派なものである必要はありません。重要なのは、説明する人が話しやすく、聞く人が理解しやすいことです。
言葉だけでは分かりにくい内容も、数字や計算式を画面に表示することで、理解しやすくなります。
伝える内容や状況に応じて、口頭、質問、ホワイトボード、パワーポイントなどを使い分けることが効果的です。
事前準備とその場の柔軟な対応を組み合わせる
分かりやすい説明をするためには、事前準備が欠かせません。一方で、用意した資料を最初から最後まで、そのまま説明すればよいとは限りません。
参加人数、相手の知識、反応、使える時間、会場の設備などによって、適切な伝え方は変わります。
今回は、5名の社員さんが参加していたからこそ、全員に一問ずつ質問する進め方を選びました。
参加者が20名であれば、同じ方法は使いにくかったかもしれません。反対に、参加者が1名であれば、相手の経験を聞きながら、さらに対話を深める方法も考えられます。
事前に決めた説明方法を守ることよりも、伝えたいメッセージが相手に届くことの方が重要です。
準備した資料を土台にしながら、その場の状況に合わせて、説明の順番や方法を変える。この柔軟さが、伝わる説明につながります。
メッセージは伝わってこそ価値がある
どのような伝え方が最も効果的なのかは、伝える相手や状況によって異なります。
だからこそ、経営者や管理職には、「何を話すか」だけではなく、「どうすれば相手に伝わるか」を考える姿勢が求められます。知っている話や、よく聞くストーリーであっても、質問の順番、言葉の選び方、資料の見せ方を工夫することで、相手の反応は変わります。
社員に行動してほしいのであれば、正しいことを言うだけでは十分ではありません。相手が理解し、自分事として受け止め、次の行動につなげられる形で届ける必要があります。
伝えたいメッセージの効果は、事前の準備と、その場での柔軟な対応によって大きく変わります。メッセージは、話しただけでは価値になりません。相手に伝わってこそ、初めて価値になります。
社員の心を動かし、行動につなげるためにも、伝え方の工夫を重ねていきましょう。
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