旅するのり子
ゴロゴロとスーツケースのキャスターが転がる。
その振動が手に伝わってくる。
足取りは軽いけど、エスカレーターに乗る時は慎重に。
スーツケースなんて、慣れたもんです、
と颯爽と歩きたいのだけど、やっぱりちょっと緊張する。
◆旅のはじまり
平日朝8時前、
通勤ラッシュに圧倒されながら、列車に乗る。
満員電車なんて久し振り。
人の多さに気後れするなんて、すっかり田舎暮らしが板についたものだ。
改札は、スマホを使って無事通過。
乗り継ぎの駅に到着。
よし、時間通りだ。
たくさんの人やアナウンスの声、色とりどりのスーツケース、甘い空気はパンの香り?
旅と日常が溶け合ったコンコースを歩く。
新幹線改札横、ドーナツショップの入口に立っているのは私の友人。
「おはよ!」
声をかけると、彼女は顔を上げ、いたずらっぽく笑った。
「実現したね。」
今日からの旅は、友人と一緒の3人旅。
もう一人は、東京方面からやって来る。
行き先は、岡山県倉敷、そして香川県直島へ。
さあ、旅のはじまりだ。
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◆のり子 乗り物にゆられて
私は、乗り物に乗るのが大好き。
いわば「のり子」だ。
この旅では、色々な乗り物に乗ることができ、大満足だった。
乗れなかったけど、見るだけで心踊る乗り物もたくさんあった。
乗り物が縁で出会った人や景色もあり、それはこの旅をいっそう豊かなものにしてくれた。
●福岡市地下鉄
旅の始まりに乗った「福岡市地下鉄七隈線」は、
リニアメトロ方式、リニアモーターで走る小さめ車両。
開業当時、幼かった子どもたちを連れ、車両基地の見学に行き、
マスコットキャラクター「ちかまる君」のぬいぐるみや、チョロQの地下鉄車両を手に入れたのも良い思い出だ。
●エスカレーター
私にとっては、エスカレーターも乗り物のひとつ。
動くものに乗るのが大好きなのだ。
地下鉄博多駅は、地下5階相当の深さにあるため、地上までには何段ものエスカレーターを乗り継ぐのだ。
この地下鉄からコンコースへのエスカレーターで、
階が上がるにつれ、テンションもぐんぐん上がる。
●新幹線
乗車券の購入は、友人が担当してくれた。
彼女が2人分をスマートEXで購入、交通ICカード番号と連携することで、それぞれのスマホで、チケットレスで改札を通ることができる。
便利な仕組みだな、と感心する。
バッグの中の乗車券を何度も確認しなくてもいい代わりに、スマホの居所とバッテリーの残量を確認することになるのだが。
乗車したのは、「山陽・九州新幹線さくら」

指定席は、2列+2列シートでゆったり。
快適さ、速さ、料金のバランスが取れた車両だ。
●JR山陽本線 普通列車
JR岡山駅から倉敷駅への移動は、普通列車。

お昼近くの普通列車は、けっこう混雑している。
制服姿の高校生が賑やかに乗車して来る。テスト期間なのかな。
車窓から見える空は、晴れでもなく雨でもない。
「ちょうど良いお天気だね。」
と、友人と言葉を交わす。
●倉敷川舟ながし
東京方面からやって来る友人が、楽しみにしていた倉敷川舟流し。
かつて物資を積んだ川舟の往来でにぎわった倉敷川。
私も、ゆったりと進む舟に乗って、町並みを眺めてみたいと思った。
先に到着する私たちが予約を取る計画だったが、残念ながら案内所に着いた時にはすでに終日満席。
この後、友人と合流、3人で川べりの柳を見ながらの散策。
菅笠を被り、舟に揺られる人を羨ましく眺める。
期待していた翌日は、雨で舟が運休。
残念な気持ちで雨に濡れた舟を眺めていると、乗り場に水鳥の姿があった。

まるで絵画のような景色。
「この鳥さんに免じて、これでよし、としておこう。」
そういうことになった。
●四国汽船 直島行きフェリー せと
岡山宇野港から、直島宮浦港への所要時間は20分、あっという間の船の旅だけど、船内には景色が見れるよう横向きのシートも設置され、瀬戸内の美しい島々をゆっくりと堪能することができた。

乗用車61台、500名の人が乗船できるらしい。
瀬戸内の海はとても穏やかだった。

●直島町営バス すなおくん号
フェリーターミナルから、美術館エリアへ向かう料金一律100円の小さなバス。
わ〜い!
草間彌生デザインの水玉模様の車体が可愛い。

このバスは、島内のコミュニティバスとしての役割も担っている。
普段着のおばあちゃんが乗ってきて、運転手さんと親しげに話していた。
この可愛いバスを降り、その先はエリア内を循環するベネッセのシャトルバスに乗り換え、私たちは目的地、地中美術館へ到着したのだった。

たくさんの乗り物に乗った旅、のり子は大はしゃぎだった。
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●旅の途中 出会った乗り物たち



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◆旅のおわりに
二泊三日の旅を終え、友人と別れ、ひとり地下鉄へ向かう。
深く降りていくエスカレーターに乗り、心の中にちょっと寂しい気持ちと、馴染みの景色を見て安堵する気持ちが、ふわふわと湧いてくる。
「一緒に旅行にいきたいね。」
私たちがそう話したのは、幼かった子どもたちが走り回るグラウンドの片隅。
クラブチームの引率で過ごした時間だった。
いつか自由な時間ができたなら・・・そんな思いで語り合ったのだと思う。
最近になって、その中の一人が、そのことを覚えていて思い出話として話してくれた。
「よし、行こう。」
そう決めたのが今から3か月ほど前。
20年越しの約束、
「実現したね。」
