ニーイン改善がうまくいかない理由
ニーイン、本当に変わりましたか?
「ニーインって実は修正が簡単」という話、SNSや研修の場でよく見かけませんか?
膝関節の状態は股関節と足関節で決まるから、見るべきポイントを絞れば難しくない——という考え方です。距骨下関節の過回内、脛骨の回旋、母指の踏み込み方。専門用語が並ぶと「分かっている感」が出るし、理屈の上では確かにそれっぽく聞こえます。
でも私はこの話を聞くたびに、同じところで止まってしまうんです。
「修正できた」ってどういう状態のことを言っているんだろう、と。
その場の形と、動きのパターンは別の話
このアプローチが目指しているのは、「今起きているアライメントをその場で正しい形に整える」ことだと思います。距骨下関節の回内を抑えて、脛骨をまっすぐ立たせて、母指でしっかり踏み込む。そうすれば膝がついてくる、という発想ですね。
確かに、その場の見た目は変わります。
でも私が気になるのは、それで「動きのパターン」が変わったのか、ということなんです。
ニーインって、歩行や日常動作の積み重ねの中で現れているものですよね。その場でアライメントを整えたとしても、日常で繰り返している動きのクセが変わっていなければ、また同じ状態に戻ります。見た目を一時的に取り繕っているだけで、そのパターンが生まれた原因には触れていない。
私は「修正できた」と「改善した」を、まったく別のことだと思っています。
「まっすぐ」の基準はどこにあるのか
ここが前提の違いだと思っています。
水平基準で見ていくとき、私がまず確認したいのは「水平面に対して骨盤がどう位置しているか」です。その骨盤に対して大腿骨がどの方向を向いているか。そして、足関節で正しい底背屈とはどういう動きなのか。
これが分かっていない状態で「膝を外に向けて」という指導をしても、クライアントは何を基準に動けばいいのかが分からない。そもそも「まっすぐとはどういう状態か」を把握できていなければ、その場で形を整えても体は覚えられないと思います。
それに、腰が反らないようにするためには骨盤に対して大腿骨をやや内旋方向で使う必要があります。その状態でニーインしているなら、「膝を外へ向けろ」というアプローチは方向が逆になる場合があります。「腰を反らすな」と「膝を外に向けろ」が同時に成立しないケースもあるんです。言葉はそれっぽく聞こえても、前提がかみ合っていないことはあります。
動きのパターンはどうやって変わるのか
動きのパターンを変えていくために、私がまず必要だと思っているのはクライアント自身が「まっすぐとはどういう状態なのか」を分かること、です。
骨盤から見た大腿骨の向きはどこが正しいのか。足関節で正しい底背屈とはどういう動きなのか。これを頭で理解するだけでなく、腱に覚えさせるくらい繰り返すこと。速いスピードで反復するのではなく、ゆっくりとした動作の中で正しい位置に戻す練習を積み重ねることで、腱の粘性が高まって、少しずつ「正しい位置」が体に刻まれていきます。
これはエクササイズひとつで終わる話じゃないし、セッション内で完結もしない。クライアント自身の反復と時間が必要な話で、「実は簡単」ではないと私は思っています。
前提が違うと、リスクの見え方も変わる
「その場でアライメントを整える」ことで改善と判断するアプローチでは、セッション内では変わったように見えても、日常動作のパターンまで変化が追えていない場合があります。
クライアントは「治った」と感じているのに、実は使い方のパターンが変わっていない——この状態が続くと、長期的に何が起きるかは慎重に考えたほうがいいと思っています。
水平基準をもとに動きのパターンを作り直す視点では、「改善した」と言えるのは日常の中でニーインが出なくなったときです。意識しなくても歩行のパターンが変わっていたとき、が改善の基準になる。そこに至る過程が見えているかどうかで、介入の中身は大きく変わってきます。
原理原則に沿えば、方向性はシンプルです。ただ、動きのパターンを作り直すことはエクササイズひとつで終わる話ではない。そこを正直に伝えることが、長期的に信頼されるトレーナーの仕事だと私は思っています。これが今の私のスタンスです。
