誰かの元で学ぶ。その前に
「誰かの元で修行」の、誰かって誰ですか
トレーナーなのにパーソナルトレーニングを受けたことがない。それって、味を知らない職人が現場に立っているようなものなんじゃないか。専門的な勉強会や指導のセオリーでも、そんな話をよく耳にします。
だから最低でも1年、できれば3年ほど誰かのもとで修行しながら、自分自身もお客さん側を経験したほうがいい。誰から学ぶかは自分の直感で決めていい。技術や人柄に惹かれた人のところへ行けばいい、と。
お客さん側を経験すること自体は、私も賛成です。ただ、その「誰かのもとで」の誰かを、直感だけで選ぶことには違和感があります。
目指すゴールによって、学ぶべき相手が全く違います
多くの方が、トレーナーのアプローチは違っても目指すところは大体同じだと考えていると思います。でも私は、大きく分けて2つの方向性はまったく別物だと思っています。
ボディメイク・フィジーク・ボディビルのような「見た目を作る」方向性と、ダイエット・姿勢改善・機能改善・パフォーマンス向上のような「働きを整える」方向性。この2つは、根本的に違うと思っています。
その違いを生んでいるのが、身体を筋肉主導で見るか、水平基準で見るか、という前提の差です。この前提が変わると、同じ「トレーニング」という言葉を使っていても、中身はまったく別のものになります。
筋肉主導で学ぶと、できることとできないこと
筋肉主導の身体基準で学べば、ダイエットはできます。ただ、体を壊すリスクは高くなります。
そして、姿勢改善はできません。機能改善もできません。パフォーマンスに関しては、向上どころかむしろ低下します。
「できません」と言い切ると強く聞こえるかもしれませんが、これは「なんとなく改善したように見せることはできても、根本的な改善はできない」という意味です。見た目や一時的な変化は作れても、土台となる考え方が違うので、その先には進めないということです。
水平基準で学ぶと、できることとできないこと
逆に、水平基準で学べば、筋肉は大きくなりません。ボディメイクやボディビル、フィジークのような、機能とは関係のない見た目のための筋肉をつけることはできません。
余計な筋肉をつけてしまえば、動きが阻害されてパフォーマンスは落ちてしまいます。その競技や目的に沿った、必要最低限の筋肉があれば十分だからです。
つまり、ボディメイクを目指したいなら筋肉主導のトレーナーの元へ、機能改善やパフォーマンス向上、姿勢改善を目指したいなら水平基準で身体を見ているトレーナーの元へ。目指すゴールによって、選ぶべき相手は正反対になります。
一番怖いのは、この違いに気づいていないトレーナーです
ここまでの話をふまえると、一番注意してほしいのはここからです。
筋肉主導の身体基準で考えているのに、自分は姿勢改善や機能改善もできると思い込んでいるトレーナーは、体感として9割以上いると思っています。直感だけで学ぶ相手を選んでしまうと、こういうトレーナーのもとに行き着く確率のほうがずっと高いということです。
そこで学んだやり方をそのまま自分の指導に使うようになると、いずれお客様が怪我や故障をしてしまう可能性がありますし、それでも「これが普通なんだ」「ちゃんと結果は出ている」と思い込んだまま指導を続けることになります。教えてくれた人自身がそう思い込んでいるので、教わった側もそこに気づく機会がありません。
ボディビルやフィジーク、ボディメイクを目指している方であれば、筋肉主導のアプローチで問題ありません。でも、一般的なお客様の多くが望んでいるのは、日常生活のパフォーマンスを上げたい、姿勢を良くしたい、競技者であれば速く強くなりたい、というものだと思います。
「誰かの元で修行する」ことより先に、その「誰か」がどちらの前提で身体を見ているのか。まずそこを見極めることのほうが、私は大事だと思っています。
