憧れの『コカコーラ』
コカコーラを
飲んだことがありませんでした。
母の『骨が溶ける』という理由から、
私が口にすることはなく。
炭酸自体が悪い訳ではなく、
ファンタグレープやサイダーなどは、
たまに祖母が買ってくれましたが、
コカコーラだけは、
──なぜかダメでした。
けれど、
ダメと言われるほど、
飲みたくなるのがサガで。
その時、小学生だった私が、
コカコーラを手にできる唯一のチャンスは、駄菓子屋だけでした。
外の大きな冷蔵庫に並べてある、
瓶のコカコーラ。
冷蔵庫の横には穴があって、
そこに瓶の先を差し込んで、
瓶を下に傾けると栓が抜けることも知っていました。
──お小遣いは1日50円。
瓶に入ったコカコーラは1本60円。
1日我慢すれば、
コカコーラを買えるのに、
どうしてもそれができずに。
私は目の前の駄菓子に手を出しては、
コカコーラまで、たどり着くことはできませんでした。
ある日──
家で蕎麦屋をやっている同級生が、
ゲームウォッチを買ってもらったから、『うちで一緒にやろう』と誘ってくれました。
店はお休みで、
何人かの友達と一緒に、
店内でゲームウォッチを交代でやっていました。
すると同級生のお父さんが、
『ほれ、これ飲んで』
と、ビールの銘柄が印字された
小さなコップに入った、
黒くシュワシュワした
飲み物を出してくれました。
──それは、間違いなくコーラ
そう確信した私は、
ゲームウォッチよりも目が釘付けに。
『ありがとうございます!』
そう言うと同時に、
口を付ければ。
──え? なんか、薬くさい?
ただ、不味い訳ではなく。
コカコーラは、
そんな味だと思って飲み干して。
『おかわり、ください!』
と言えば、
同級生のお父さんもニコニコと。
『たくさん飲んでな』
と、コップに注いでくれました。
ただ、よく見ると、
そのラベルには赤地に白字で
Dr Pepperと…

憧れの『コカコーラ』 【完】
▼この話が収録されたシリーズのマガジンは、こちらからご覧になれます。
いいなと思ったら応援しよう!
いただいたチップは創作活動に使わせていただきます!
応援よろしくお願いします!