単調な流れ作業の中でも、見逃さないこと
巡回健診は、定期健診のみの内科診察に時々特殊健診が加わるが、基本的には数十人の受診者を淡々とこなしていく。単調かつ退屈な流れ作業だ。間が空くとドヨーンとした空気が流れる。なんとなく、健診医と製造業の作業員さん達、立場は違えど共感してくれるのではないか、と思ったりもする。
そんなある日の一か所目。製造業。
受診者さんの作業着に多数の穴が開いている。聞くと、火花が飛び散ってきて火傷するらしい。危険と隣り合わせの過酷な現場で、特殊健診にも丁寧で慎重な対応が求められる。ベテラン作業員からは「そういう現場だからな」「こんなの慣れよ」とかわされるが、受診者の中には手に重度の熱傷を負った若い作業員もいた。聞くと、高熱の窯にどうしても左手が当たってしまいそれで熱傷してしまったらしい。皮膚科受診してちゃんと治療するよう伝える。慣れがどんどん積み重なっていくと、いずれ大きな事故や惨事に繋がりかねない。現場の安全管理の一環として、第三者の視点が入る健診という場が非常に意義のあるものと思った。
2か所目。自動車ディーラー。
淡々とルーチンをこなしていく中、家族性高コレステロール血症の男性がいた。弟さんが病気になって10歳の時に判明したそう。しかし、町医者で治療しても数値が全く変化なく、結局治療を断念してそのまま放置しているとのこと。標準体型で血圧血糖など他にリスク因子なく、LDLコレステロール値が高いのみ、それだけだったら余計ちゃんと治療したほうがいい、その町医者よりもちゃんと大きな病院で見てもらうように、治療薬はいくつもあるので最適なやつを選んでもらうように、と伝えた。本人は動脈硬化の不安を抱えながらかなり節制した生活習慣を送っているのだろう、それに対して適切に介入できた時に健診の重要性を感じる。単調かつ退屈な流れの中でも、拾うべきものはちゃんとあるのだ。
今日も無事終了。終わった途端に地元のおばちゃんに戻って、帰りはスーパーで買い物して帰宅する。犬を散歩させてから夕食の支度に取り掛かった。
